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Category : 安倍政権
■安倍政権の「負の遺産」






  ▼「戦後終はらせた」といふ安倍前首相の詭弁




 産経新聞が安倍前首相のインタビュー記事を十月十三日と十五日(詳報)の二度にわたつて掲載した。

 インタビュー記事の中で、歴史認識問題に関する発言を点検してみる。まづ、「戦後七十年首相談話」について。

 「第一次政権で『戦後レジームからの脱却』を掲げたが、少し戦略性に欠けていたと思う」
 「第二次政権時の七十年談話では歴史の時間軸を100年とった」
 「70年談話と前後して豪州議会と米国上下院合同会議での演説、その後のオバマ大統領の広島訪問、私の真珠湾訪問へと続いた。ここで戦後を終わらせることができた」
 「これをもって終止符を打たなければいけなという気持ちは強かった」

 で、次に「日韓合意」についての発言。

 「慰安婦問題の日韓合意は国際社会が証人となり、『最終的かつ不可逆な解決』を確認した。政府として『河野談話』の検証も行った。多くの人たちが歴史の真実により近づくことによって歴史問題に終止符を打つことができた」

 首相を辞めた今なほ、「戦後七十年首相談話」と「日韓合意」によつて戦後を終わらせることができました、と宣つてゐるのだ。

 私は先月出版した『安倍政権の「負の遺産」』(Kindle)の中で、「戦後七十年首相談話」と「日韓合意」のカラクリについて検証しておいた。

 その概略を述べると、安倍首相は「戦後七十年談話」の作成にあたつて、「村山談話」及び「小泉談話」を踏襲しようとはじから考へてゐた。それをカモフラージュするために有識者懇談会を立ち上げた。懇談会のリーダーとして、ゴリゴリの侵略史観の持ち主である北岡伸一といふ人物を起用した。北岡は安倍首相と呼応して、侵略史観に反対する委員の意見を封殺し、侵略史観に満ちた報告書を作成した。

 侵略史観に反対した委員とは、中西輝政・京都大学名誉教授のことである。

 中西氏はのちに、有識者懇談会の内情を「文藝春秋」の対談で暴露してゐる。拙著の中でも引用したが、ここで改めて中西氏の発言を紹介しよう。

《 最も言いたいのは、あの談話は「東京裁判史観」そのものだということです。それにより、私がそれまで持っていた「保守政治家・安倍晋三」という見方が粉々に砕け散りました。あの懇談会に私が入れられたのは、「保守派の中西も賛成した」という右派への言い訳のためであり、座長代理の北岡伸一氏(JICA理事長)をはじめ、外務省の息のかかったメンバーばかりが集められ、私は意見を発表する機会さえほとんど与えられませんでした。》

《 報告書では日本の行いを一方的に「侵略」と定義するというので、何度も辞表を用意して抵抗しましたが、後世に記録として残すために、〈複数の委員より、「侵略」と言う言葉を使用することに異議がある旨表明があった〉ことと、その理由を説明する〝注釈〟をつけることで安倍談話への対抗軸を残すことを選びました。》

 中西氏は、非「侵略史観」の持ち主である自分が懇談会のメンバーに加へられたのは、「保守派の中西も賛成した」といふ右派への言ひ訳のためだつた、と気づいた。「安倍晋三」を「保守政治家」と信じてきた自分は間違つてゐた、安倍首相に謀られたのだ、と気づいた時には遅かつた。中西氏は発言の機会さへロクに与へられず、「侵略派」が多数を占める懇談会で孤独な闘ひを強いられたのだ。

 安倍首相にまんまとハメられた中西氏の言葉ほど、「戦後七十年談話」の正鵠をついてゐるものはない。

 安倍談話の正体は「東京裁判史観」そのものであると中西氏はいふ。

《 戦勝国アメリカが、自らを正当化するために敗戦国日本を断罪しようとした「十五年戦争論」に基づく歴史認識です。》

 中西氏は、「戦後七十年談話」を「百点満点」などと持ち上げた者たちを「紐付き保守」と断罪した。かれらは今に及んでも、「安倍首相は戦後を終はらせた」と叫んでゐる。「紐付き保守」たちの体質は変はらない。安倍政権の「負の遺産」は重い。

 「紐付き保守」たちを安倍首相がどれほど珍重してゐたかを示すエピソードがある。「戦後七十年談話」を「百点満点」と持ち上げた「紐付き保守」が数年前に死んだ。安倍首相は総理の公用車を使つてこの男の自宅を弔問した。永年にわたる「紐付き保守」活動への返礼が「総理大臣としての弔問」だつたといふわけである。















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■安倍政権の残した「負の遺産」







   ▼中国人民抗日戦争勝利式典と「戦後70年安倍首相談話」
     習近平に自虐談話をプレゼントした安倍首相



 北京郊外の盧溝橋にある中国人民抗日戦争記念館で3日、中国人民抗日戦争勝利・世界反ファシズム戦争勝利75周年の式典が開催された。

 習近平国家主席らが献花する式典の模様はCCTVで生中継されたが15分ほどで終了し、この後、人民大会堂で中国共産党中央委員会、国務院、中央軍事委員会によるシンポジウム(座談会)が開催され、習近平が演説した。

●75年前の今日、中国国民は14年間の不屈の血まみれの戦ひの後、極悪の日本軍国主義の侵略者を打ち負かし、中国人民の抗日戦争で大勝利を収めた。

●「九・一八事変」は中国人民抗日戦争の起点であり、世界反ファシズム戦争の序幕となつた。「七・七事変(盧溝橋事変)」以降、中国は全民族の抗戦段階に入り、世界反ファシズム戦争の東方主戦場を切り開いた。中国人民抗日戦争の偉大な勝利により、中国が世界における大国の地位を確立し、中国人民はが世界中の平和を愛する人々からの尊敬を受け、崇高な民族的栄誉を獲得することになつた。

●日本軍国主義の侵略歴史を正しく認識し、深く反省することは、中日関係の確立と発展に関はる重要な政治的基礎である。
 
●「民主主義」「自由」「人権」を装つて他国の内政に干渉することを断固として反対する。中国共産党の歴史を歪曲し、中国の特色ある社会主義の道を改変し、中国の方向性を変へやうとする勢力に、中国人民は応じない。

 「内政干渉反対」のくだりについて、中国外務省の華春瑩報道局長は4日の記者会見で、「悪意を持つて中国共産党を攻撃し、党と人民を引き離そうとする米国の過激な反中勢力への明確な回答だ」と御叮嚀にも解説した。

 今の中共政府にとつて、歴史イデオロギーで一番大事なのは、対日戦争を戦ひ、勝利したのは中国共産党であるといふ神話である。

 「抗日戦争勝利60周年」の2005年9月3日、当時の胡錦濤総書記は談話で、「中国国民党と中国共産党が領導した抗日軍隊は、それぞれ正面戦場と敵後戦場の作戦任務を担ひ、共同で日本の侵略者の戦略態勢に対する反撃を形成した」と述べたが、習近平体制になつてから、対日戦争において国民党の役割に触れることはタブーになつた。

 毛沢東の時代には「抗日戦争勝利記念日」を祝ふこともなかつた。

 そもそもなぜ9月3日が、中国共産党の「抗日戦争勝利日」なのか?

 昭和20年9月2日、ミズリー号上で日本と連合軍の降伏文書が調印された。その翌3日、国民党の蒋介石は重慶で祝賀を催した。これが起源である。中国共産党は1990年代になつてから9月3日を「抗日戦争勝利記念日」と定めた。中国共産党は日本の降伏文書調印式とはなんの関係もないのに、いつのまにか「対日戦勝国」の顔をするやうになる。そして、習近平が党総書記、国家主席、軍事委員会主席に就任後の2014年、「抗日戦争勝利・反ファシズム戦争勝利記念日」は国家の最重要記念日に格上げされたのだ。

 2015年9月3日に開催された抗日戦争勝利・世界反ファシズム戦争勝利70周年の式典では、ロシアのプーチン大統領、韓国の朴槿恵大統領をはじめ各国代表が招待され、国慶節以外では実施されたことのない軍事パレードが挙行された。2時間半に及ぶ派手な軍事パレードは習近平が人民解放軍を掌握したことを内外に誇示する意味もあつた。

 実は抗日戦争勝利70周年の式典では、中共政府は日本側に安倍首相の出席を強力に働きかけてゐた。当事国である日本の総理大臣を中国皇帝にかしづかせ、それを世界中にアピールする。習近平はそんな情景を心に描いてゐた。

 官邸内媚中派の今井尚哉首席秘書官らは「支持率が上昇する」と安倍首相は出席すべきだと主張した。これに対し外務省は、「対日戦争の勝利を祝ふ式典に日本の総理が出席するのはマズイ。日本には何のメリットもない」と強硬に反対した。習近平の顔を立てるための代替案として、式典の二日後に安倍首相が訪中する案が浮上し、中国側に伝へたが、習近平は「式典当日でなければ意味がない」とこれを拒否。結局、安倍首相の訪中は見送られたが、抗日戦争勝利式典に日本の総理を出席させようといふ習近平の露骨なたくらみに対し、反発するどころか姑息に切り抜けやうとしたところに安倍首相の対中姿勢がみてとれる。

 しかし、安倍首相は抗日戦争勝利式典に出席するかはりに、式典に花をそへるプレゼントを習近平に用意してゐた。それが式典半月前の8月14日に安倍首相が発表した「戦後70年首相談話」である。

《 戦火を交えた国々でも、将来ある若者たちの命が、数知れず失われました。中国、東南アジア、太平洋の島々など、戦場となった地域では、戦闘のみならず、食糧難などにより、多くの無辜の民が苦しみ、犠牲となりました。戦場の陰には、深く名誉と尊厳を傷つけられた女性たちがいたことも、忘れてはなりません。》

《 満洲事変、そして国際連盟からの脱退。日本は、次第に、国際社会が壮絶な犠牲の上に築こうとした「新しい国際秩序」への「挑戦者」となっていった。進むべき針路を誤り、戦争への道を進んで行きました。》

《 何の罪もない人々に、計り知れない損害と苦痛を、我が国が与えた事実。歴史とは実に取り返しのつかない、苛烈なものです。一人ひとりに、それぞれの人生があり、夢があり、愛する家族があった。この当然の事実をかみしめる時、今なお、言葉を失い、ただただ、断腸の念を禁じ得ません。》

《 私たちは、二十世紀において、戦時下、多くの女性たちの尊厳や名誉が深く傷つけられた過去を、この胸に刻み続けます。だからこそ、我が国は、そうした女性たちの心に、常に寄り添う国でありたい。二十一世紀こそ、女性の人権が傷つけられることのない世紀とするため、世界をリードしてまいります。》

《 我が国は、先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきました。その思いを実際の行動で示すため、インドネシア、フィリピンはじめ東南アジアの国々、台湾、韓国、中国など、隣人であるアジアの人々が歩んできた苦難の歴史を胸に刻み、戦後一貫して、その平和と繁栄のために力を尽くしてきました。》

《 戦争の苦痛を嘗め尽くした中国人の皆さんや、日本軍によって耐え難い苦痛を受けた元捕虜の皆さんが、それほど寛容であるためには、どれほどの心の葛藤があり、いかほどの努力が必要であったか。》

 東京裁判史観に彩られた「戦後70年首相談話」には、中国に対する懺悔の言葉に満ちてゐる。「戦後70年安倍首相談話」には中共はイチャモンをつけなかつた。イチャモンをつけるどころではない。「戦後70年首相談話」を読んで習近平は快哉を叫んだであらう。日本の首相が戦後70年にあたつて、中国に対し全面屈服してくれたのだから。習近平の戦狼外交の祭壇に、率先して生贄の子羊を捧げてくれた朝貢国日本の総理大臣。

 安倍首相の「戦後70年談話」は、「中国人民抗日戦争勝利・世界反ファシズム戦争勝利70周年」式典と軍事パレードをいやが上にも盛り上がらせる役割を果たしたのである。

 8月15日に日本の総理大臣に靖国神社に参拝でもされたら、せつかくの抗日戦争勝利記念式典も台無しになるところだが、そんな心配は無用だつた。安倍首相は第二次政権発足一周年の平成25年(2013)12月26日に靖国神社を参拝したものの、中国から恫喝を喰らつて怯え切つてしまひ、二度と靖国神社に参拝することはなかつた。

 「戦後70年首相談話」では、「名誉と尊厳を傷つけられた女性たち」といふ文言が二度までも強調されてゐるが、これが「従軍慰安婦」を指すことは改めて説明するまでもあるまい。

 式典には韓国の朴槿恵大統領も出席し、習近平は槿恵朴との蜜月ぶりを誇示した。習近平と朴槿恵は「反日」共闘を着々と推し進め、そのピークが朴槿恵の抗日戦争勝利記念式典参列だつた(北朝鮮の金正恩も式典に招待されてゐたが無視した)。

 「戦後70年首相談話」の発表から4カ月後の平成27年12月、従軍慰安婦問題で日本が全面謝罪する「日韓合意」声明が出された。「日韓合意」の種は「戦後70年首相談話」に蒔かれてゐたのである。

 「戦後70年首相談話」も「日韓合意」も、「全面謝罪」をとりつくろふために、「未来志向」といふオブラートをかぶせてあることでは共通してゐる。

 戦後日本の謝罪外交の集大成ともいふべき「戦後70年首相談話」と「日韓合意」が日本にどのやうな害毒をもたらしたか。それはその後の日中関係と日韓関係が証明してゐる。中国は尖閣侵攻に向けて突き進み、韓国は「日韓合意」をすぐさま反故にして「反日」国家に舞ひ戻つたのである。

 






■安倍晋三といふ日本のお荷物

 安倍流支持率回復の奥の手






 地中から発見された爆発物をもう一度地中に埋め戻す作業をやつてゐたところ、管理がズサンだつたため爆発物が突然炸裂してしまつた――森友学園問題における財務省の決裁文書の改竄発覚とはまあそんなやうなものだ。

 爆発物の威力は思ひのほかすさまじく、内閣まで吹き飛ばされかねない勢ひで、五月の連休明けの安倍内閣総辞職も語られるやうになつてきた。

 財務省の決裁文書の改竄は朝日新聞によるフェイクニュースだと思はず口走つた連中も、財務省が決裁文書の改竄を認めたことで、天下に恥をさらした。

 安倍首相VS朝日新聞といふ構図をことのほか好んだ安倍首相も、朝日新聞との対立を際立たせることによつて自分の立場を盤石にするといふ従来の芸当はさすがに今回だけはできかねた。朝日新聞の陰には大阪地検がゐることはがはつきりしてゐるが、もはやリーク犯さがしをしてゐる余裕はない。

 安倍首相にとつて森友学園事件はすでに終はつた問題だつた。森友学園の籠池といふ頭のをかしな男が俺や妻の名前を勝手に使つて近畿財務局の役人たちを騙して、アイツは女房ともども逮捕されたのだ。俺のお友達のジャーナリストや評論家たちも揃つて、「森友学園事件はすべて朝日新聞のフェイクニュースだつた」と書いてくれた。森友爆弾は地中に埋め戻したはずだつたのに。それがどうして今ごろ? 籠池と女房は拘留されてゐるからと安心してゐた俺が馬鹿だつたのが? 朝日のクズ記者どもをちよつと挑発しすぎたかな?

 第二次安倍政権が発足してこの五年間といふもの、安倍首相には何度か危機に陥つたものの、そのたびに実にうまく危機を切り抜け、不死鳥のやうによみがへつてきた。

 たとへば、安保関連法案などで支持率低下にあへいでゐた平成二十七年夏には、「戦後七十年首相談話」の中に、「侵略」「植民地支配」「反省」「おわび」といふ村山談話の自虐ワード四点セットを見事に盛り込んでみせ、支持率を急回復させることに成功した。安倍首相を崇敬する保守派の人々はこの戦後七十年首相談話を、歴史に残る素晴らしい談話だと絶賛した。

 安倍首相が支持率回復のために利用してきたのが歴史問題である。慰安婦問題における日韓合意では、「心からおわびと反省の気持」を表明し、韓国の財団に十億円を拠出した。安倍ポチの保守派の人々はこの時も、安倍首相は日韓関係に画期的な「最終的不可逆な解決」をもたらしたと誉めそやした。

 安倍首相がいくら売国的言辞を弄しても一切文句を言はないポチ保守派の人々は、男に裏切られてばかりゐるのに、ダメ男の愛人を信じ続ける純情無知な女に似てゐる。

 安倍内閣支持率の急降下ぶりは何事かの前兆をうががはせる。佐川前理財局長の証人喚問後は確実に20パーセント台まで落ち込むだらう。支持率低下に歯止めをかけるために安倍首相が考へてゐることは何か。米朝首脳会談が予定される朝鮮半島情勢など日本には外交問題が山積してゐるのに、たかが森友事件程度の問題で日本の内閣を弱体化させることは許されない、といふ声が既に聞こえてくる。苦境打破にために安倍首相がすがりつけるのは外交・歴史問題しかない。それで今、米朝関係になんとか首を突つ込まうと躍起になつてゐるのである。



*******************

安倍首相が内閣支持率に歯止めをかけるために、「戦後七十年首相談話」をどのやうに利用したかを詳しく知りたい方は、当ブログのこちらの記事を参照されたい。

http://tensei211.blog.fc2.com/blog-category-38.html









■出来損なひの「愛国教育者」と出来損なひの「保守」総理
 籠池氏も安倍首相も「教育勅語」の精神とは無縁である





 「森友学園」の国有地売却問題が騒がれ始めた頃、テレビに映し出される籠池泰典氏をを見てゐて、私は実に不思議な感を覚えた。

 マスコミは国有地大幅値下げの疑惑とともに、幼稚園における教育勅語の暗唱など森友学園の「愛国教育」を盛んに攻撃してゐる。

 しかし私には籠池泰典といふ人物と教育勅語がどうしても結びつかない。

 これは、教育勅語の精神ともつとも対極に位置する人物ではないのか?

 籠池泰典といふ人物の顔つきや語り口はまるで「悪徳」不動産屋を思はせる。

 地方議員の選挙事務所なんかに行くと、よくこんなタイプの男がゐて、候補者よりもデカい顔をして事務所を取り仕切つてゐたりする。

 3月23日の国会証人喚問でも、籠池氏の口から吉田松陰とか松下村塾といふ名前が飛び出したが、私はこの人物が吉田松陰の著述を読んだことがあるとは到底信じられない。

 それなら、籠池氏は「保守」の思想も信念もないのに、「保守回帰」の流れに便乗して愛国教育ビジネスに参入した単なる商売人なのかというといふと必ずしもさうでないらしい。

 過去に拉致問題などに関はつゐたことは事実のやうだし、稲田朋美防衛相との関係が険悪化したのも、「やり方が生ぬるい」と稲田氏に大量のファクスを送りつけたのが原因といはれる。
 
 国会の証人喚問で籠池氏は、安倍首相の「ファン」であり、保守政治家として敬愛してきたと語つた。

 籠池泰典と安倍晋三といふ人物に共通するのは、二人とも「保守」を自認してゐるといふことである。

 しかし「保守」を自認してゐるからといつて、その人物が「保守」とは限らない。

 かつて三島由紀夫は、国を守るとは自分を守ることだといつた。

 国の名誉を守ることと自分の名誉を守ることは同じだといふ意味である。

 国有地取得疑惑で発言を二転三転させて恥ぢない人間や、過去の発言を180度転換して謝罪談話を連発して恥ぢない総理大臣が「保守」であるわけがない。

 この二人に共通することがもうひとつある、それは、悪い女房を持つたといふことだ。

 片や教育事業の「戦友」であり、片や総理大臣の「家庭内野党」といふ存在であるが、双方とも亭主の足を引つ張るといふ点ではよく似てゐる。

 森友学園の幼稚園で園児の保護者との間でトラブルを起こしてきたのはもつぱら「戦友」女房の方だ。総理大臣の「家庭内野党」女房については説明するまでもない。

 森友学園騒動の本質は国有地取引をめぐる不正疑惑である。騒動を引き起こしたのがたまたま、出来損なひの「愛国教育者」と出来損なひの「保守」総理、その出来損なひの女房たちだつたといふにすぎない。教育勅語は何の関係もない。

 


■安倍謝罪外交の集大成としての真珠湾訪問(続)



 アメリカ議会で謝罪した前科持ちの安倍首相
 戦争の哀れな敗者を演じてくれるのを期待するトランプ
 



  安倍首相の真珠湾訪問はオバマ大統領の広島訪問とのバーターだといふ見方がある。

 馬鹿馬鹿しい、一体どこがバーターなのだ。

 形式上はバーターのやうに見えるが、オバマ大統領の広島訪問と安倍首相の真珠湾訪問との「取引」は実質的にはバーターなどではありえない。

 オバマ大統領の広島訪問は文字通りただの訪問だつたが、安倍首相の真珠湾訪問は「謝罪」だからだ。

 オバマ大統領の広島における長々とした演説は噴飯物だ。

《71年前の明るく晴れ渡つた朝、空から死神が舞ひ降り、世界は一変しました。閃光と炎の壁がこの街を破壊し、人類が自らを破滅に導く手段を手にしたことがはつきりと示されたのです。》

 広島があたかも天災に遭遇したかのやうな、日本を舐め切つたこの言ひ草!

 広島に惨禍をもたらした直接の当事者のことには一言も触れずに、広島の原爆惨禍を人類の悲劇と称し、このやうな悲劇を二度と繰り返さないようにしようと述べ立て、あとはひたすら平和教の説教を垂れたのだ。

 「核兵器なき世界を追求しなければならない」といひながら 「この『死の道具』が狂信的な者たちに渡らないやうにしなければならない」と核保有国の核独占体制維持を抜け目なく宣言するといふレトリック。

オバマの演説は原爆とアメリカとの関係を徹底的に遮断するところから成り立つてゐる。

 オバマが欲したのは、現職米大統領初の広島訪問といふ「レガシー」を残すことだけで、広島を利用して平和愛好国アメリカを世界にアピールするといふオバマの目的は十二分に達成された。

 安倍首相も真珠湾を訪問して日米「和解」を演出し、平和の貴さを世界にアピールするのではないかといふ人もゐるかもしれないが、お門違ひも甚しい。

 オバマ大統領は広島訪問の前も後も、原爆投下の責任問題など言及したことはない。

 他方、安倍首相はどうか?

 この人、アメリカに対して日米戦争について謝罪した「前科」があることを忘れてはならない。

 安倍首相は平成27年4月にアメリカの上下両院合同会議において、稚拙な英語で次のやうに演説した。

《先刻私は、第二次大戦メモリアルを訪れました。(中略)金色の星は、自由を守つた代償として、誇りのシンボルに違ひありません。(中略)歴史とは実に取り返しのつかない、苛烈なものです。私は深い悔悟を胸に、しばしその場に立つて、黙祷を捧げました。》

 外務省訳の「深い悔悟」は英語の原文では、
 deep repentance
 となつてゐる。

  repentanceは、「後悔」「悔い改める」といふ意味だから、日本のやつた戦争を「悔い改める」と言明したわけだ。、

 安倍首相は日米戦争についてこのやうに謝罪した上で、大東亜戦争についても言及した。

《戦後の日本は、先の大戦に対する痛切な反省を胸に、歩みを刻みました。自らの行ひが、アジア諸国民に苦しみを与へた事実から目をそむけてはならない。これらの点についての思ひは、歴代総理と全く変はるものではありません。》

 「痛切な反省」

 「アジア諸国民に苦しみを与へた事実」

 絵に描いたやうな日本侵略史観を、並み居るアメリカの上下両院議員たちにご披露してくれたわけである。

 安倍首相は帰国後、上下両院合同会議で18回のスタンディングオペレーションを受けました、なんてくだらないことを自慢してゐたけれど、アメリカの議員たちがスタンディングオペレーションをするのは当たり前だ。日本の総理大臣がアメリカ国民に謝罪してくれたのだから。

 オバマ大統領と安倍首相の共同記者会見では、安倍首相そつちのけで、記者の質問はボルチモアで起きた黒人暴動に関してオバマ大統領に集中した。

 アメリカの記者たちも、日本から来た総理大臣が「歴史修正主義者」どころか、アメリカに従順な忠犬ポチ公にすぎないことをよく理解してゐたのだ。

 さて、日米戦争についてアメリカ国民に謝罪した前科のある日本の総理大臣が、戦争の発端となつた真珠湾を訪問すると、どういふことになるか?

 真珠湾攻撃に repentance の気持ちを表明するために真珠湾を訪問したと受けとられるのは目に見えてゐる。

 アメリカ国民は当然さう考へる、世界各国もさう考へる。

 次期大統領のトランプもツイッターで、安倍首相の真珠湾訪問を歓迎すると表明した。アメリカが戦争の勝利者であることを世界に誇示できるからだ。

 トランプは正直である。

 きつと、この日本のお坊ちやん総理がハワイで戦争の哀れな敗者を演じてくれるのを期待してゐることだらう。

 オバマとトランプの考へ方は共通するところが少ない。

 しかし安倍首相の真珠湾訪問は、オバマも歓迎し、トランプも歓迎する。

 日本の総理大臣がアメリカにペコペコするのを見るのが好きなのは、民主党の大統領も共和党の大統領も変はらないのである。


    (この項続く)





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Author:tensei211
ちば・てんせい。ジャーナリスト・評論家。皇室問題やフェミニズム問題に取り組む。三島由紀夫研究家。國語問題研究家。


フェミニズム論の著作として、『男と女の戦争―反フェミニズム入門』(展転社)など。フェミニズム関係の共著に『男女平等バカ』(宝島社)、『夫婦別姓大論破』(羊泉社)などがある。

皇室関連の著作としては『天皇を喰ひ物にした侍従長』『天皇と宮内庁の「背信」』など。

執筆には正仮名遣ひ(歴史的仮名遣ひ)を使用、当ブログも正仮名遣ひを用ゐる。

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