Category : 改憲ゴッコ
■憲法改正ゴッゴの行方 

 「再び侵略的国家とはならない」といふ「中山三原則」を掲げた
  憲法調査会は何をしたか?




衆参両院には現在、憲法審査会が設置されてゐて、憲法改正問題についてはこの憲法審査会がもつぱら審議することになつてゐる。

 この憲法審査会の前身ともいふべき存在が、平成12年から平成17年まで衆参両院に設置されてゐた憲法調査会だ。

 衆議院憲法調査会の会長をつとめたのは、憲法調査会設置の旗振り役だつた自民党の中山太郎で、衆議院憲法調査会は平成17年に報告書をまとめて議長に提出した。

 この衆議院憲法調査会には、会長の中山太郎が提唱した「中山三原則」というのがあつて、 
 「人権の尊重」
 「主権在民」「
 「再び侵略的国家とはならない」
 といふのがそれだ。

 憲法の教科書に載つてゐる日本国憲法の三原則とは、
 「基本的人権」
 「主権在民」
 「平和主義」  
 だけれど、この中の「平和主義」を「再び侵略的国家とはならない」と言ひ換へたところに、中山会長及び憲法調査会の性格がよくあらはれてゐる。

 「中山三原則」がこんな調子だから、憲法調査会の報告書の内容も推して知るべし。憲法の各条文についてこんな意見が出た、こんな意見が多く出たといふ記述の羅列ばかり。5年の歳月を費やし、海外に調査団を派遣し、地方公聴会を9回も開催しながら、完成したのは毒にも薬にもならない分厚い報告書だつたのだ。

 たとへば、憲法9条に関しては、報告書は「9条に対する評価」として次のやうに説明する。

《安全保障については、9条がこれまで我が国の平和や繁栄に果たしてきた役割を評価する意見が多く述べられた。また、少なくとも同条1項の戦争放棄の理念を堅持し、平和主義を今後も堅持すべきであるとする意見が多く述べられた。》

 こんな意見が多くありましたといふ記述方式は、皇室の問題にもそのまま適用された。
「皇位継承」についての報告書の記述。

《皇位継承については、主として皇室典範の問題として議論が行われた。その主な議論は、女性による皇位継承の是非に関するものである。この点については、女性による皇位継承を認めることに慎重な意見もあったが、これを認めるべきであるとする意見が多く述べられた。》

 女性天皇を認めるべきといふ意見が多く述べられた、といふ記述は一見客観的に見えるかもしれない。

 ところが仰天しさせられるのは、女性天皇問題に関する報告書の立場は客観的どころではないことだ。

 衆議院憲法調査会の筆頭幹事である自民党の船田元は、報告書冒頭の所感で、「女性の天皇を認める方向性をいち早く打ち出したのは、当調査会であると自負しています」と自画自賛してゐるのである。

 衆議院憲法調査会を主導したのは、中山会長―船田筆頭幹事ラインで、二人とも女性天皇容認派だつた。憲法調査会で女性天皇容認の意見が多数を占めたことに中山と船田は欣喜し、これを憲法審査会の功績として誇つたといふのが事の次第だ。

 第9条問題では、何の方向性も示さうとせず、皇位継承問題で女性天皇容認の意見が多数を占めたと喜ぶ。これが我が国の国会に初めて設置された憲法調査会のお粗末な実情で、お気楽気分で作成された報告者が国民に見向きもされなかつたのも無理はない。
 
 (この項続く)





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■改憲ゴッゴの行方


  国会の憲法改正論議の茶番




 9月26日に召集された臨時国会で、憲法改正問題で早速、与野党のやりとりがあつた。

 民進党の野田幹事長は自民党の憲法改正草案について「本気で議論する気があるなら、まずは自民党総裁として草案を撤回していただきたい」と撤回を要求、これに対して安倍首相は「自民党草案を撤回しなければ議論できないといふ主張は理解に苦しむ」と答弁した。

 このやりとりだけ切り取つてみると、野田幹事長の自民党草案撤回要求なるものがイチャモンのためのイチャモンにすぎないのは明白だから、代表質問でこんなものを持ち出した野田が異常で、これを拒否した安倍首相は至極まともだといふ印象を受ける。

 それなら、これから国会の憲法審査会で憲法改正論議に臨まうといふ自民党の姿勢がまともかといふと、さうではないから困るのだ。

 自民党の森英介・党憲法改正推進本部長は下村博文幹事長代行から衆院憲法審査会長の就任要請を受けるに際して、「自民党草案は封印してほしい」とクギを刺されたのだといふ。

 自民党内で自民党草案の棚上げ論が優勢になり、自民党草案を封印するといふ暗黙の党内の合意がいつのまにやらできたものらしい。つまり、今後の憲法改正論議に自民党は白紙で臨むといふことだ。

 奇怪極まりないことではないか。

 政権与党が、憲法改正に着手したいといひながら、我が党は憲法のここをこのやうに変へたいといふ考へを国民に提示することもせずに、白紙の状態で憲法改正論議を始めませうといつてゐるのだ。

 国会の憲法審査会が憲法の問題を白紙の状態で議論するとどのやうなことになるか? 

 先例がある。それは平成12年に設置された衆参両院の憲法調査会である。

 (この項続く)
■第9条の「加憲」はやりませんといひ始めた公明党



 公明党の山口代表が7月21日の記者会見でしやべつたことは実に画期的だ。

 憲法第9条に関して、「現行憲法の解釈の限界を示し、平和安全法制(安全保障法制)をつくつた。それを自己否定する議論をするつもりはない」と述べたのだ。
 
 つまり第9条は改正の必要はないといふ見解である。
 
 公明党は、憲法第9条は変へずに自衛隊の存在を明記する「加憲」なる珍案を唱へ、二年前の衆院選の公約でも9条加憲を「慎重に検討する」と説明してゐたが、ここへきて9条の「加憲」などやる気はまつたくありませんといひ始めたのだ。山口の発言が画期的とはさういふ意味だ。
 
 自民党にくつついて政権にぶら下がつてゐたい公明党が、苦肉の策としてひねり出したのが第9条の「加憲」だつたが、とうとう「加憲」といふ欺瞞の命運も尽きたといふわけだ。
 
 今後、改憲論議が進めば進むほど、公明党の反「改憲」体質が暴露されるはずだ。この政党が社民党や共産党と同レベルの「護憲」政党であることが誰の目にも明らかになるだらう。
 
 公明党の反「改憲」体質が暴露されれば、自公連立政権の「闇」も暴露されずにはおかないだらう。さて、なにが飛び出してくるか。私はそれを楽しみにしてゐる。 









 
■「お試し改憲」で早くもゴネ始めた公明党
  公明党にイチャモンをつけた「改憲ゴッコ」勢力



 「お試し改憲」問題で、公明党がはやくもゴネ始めた。
 
 公明党の斉藤鉄夫憲法調査会長代理はテレビ番組で、「お試し改憲」について、「野党第一党も加はらないと発議できないといふのが(国会の憲法審査会における)コンセンサスだ」「民進党がダメと言ふものは、ダメだ」などと発言した。

 この発言に噛みついたのが、おおさか維新の会の松井一郎代表(大阪府知事)だ。

 「公明党が有権者に言つてきたことと違ふ。民進党が賛成するわけないじやないか」

 「公明党が加憲と言つてゐたのも、適当にうそやつたかといふ話になりますよ」
 
 「民進党に責任をかぶせて、選挙での約束をしらんふりは、これは無責任だと思ひますね」
 
 この松井発言に対して、公明党の斎藤は再反論した。

 「加憲の立場は変はらず、わが党は憲法改正の議論を否定してゐない」

 「公明党が、民進党の賛成を発議の条件としてゐるわけではない」

 「憲法調査会の合意には(民進党の前身の)民主党も入つてゐた。野党第一党も含めて発議をするのは維新も含めた憲法審査会のコンセンサスだ。非難するのであれば『3分の2を取らせない』というスローガンを掲げた民進を非難すべきだ」
 
 憲法改正なんかやる気はサラサラない公明党が、改憲サボタージュの道具に持ち出したのが民進党だ。
 
 野党第一党である民進党がダメと言ふものはダメ。
 
 「改憲勢力」が議会の3分の2を占めても、野党第一党である民進党がダメと言ふものはダメ。

 もちろんこれは民進党に改憲に賛成してほしいといふ願望の表明などではない。民進党が改憲に賛成するわけがないとタカをくくつてゐるだけの話で、「改憲勢力」が議会の3分の2を占めても、改憲など永遠にできつこないんだよ、と嘯いてゐるにすぎない。
 
 公明党は今、どうすれば反「改憲」政党の正体がバレずにすむかといふことばかり考へてゐる。民進党が改憲に乗つてこないのが悪いといへば、 

 これに噛みついたおおさか維新の会の言ひ分はもつともだといひたいところだが、この政党が参院選で持ち出してきた憲法改正案といつたら、

 ・幼児教育から大学まで教育無償化
 ・道州制実現のための統治機構改革
 ・憲法裁判所の設置
 
 の3点だ。
 
 なんだこれは? 憲法9条問題など影も形もない。憲法9条問題に触れずに、なんとか改憲テーマらしきものを並べてみましたといふ臭ひが芬々する。 

 こんなどうでもいいやうなテーマを改憲に掲げる政党を「改憲勢力」といへるのか。

 公明党が「改憲」勢力を装つた反「改憲」勢力なら、おおさか維新の会はさしずめ「改憲ゴッコ」勢力といふところか。

 「お試し改憲」でゴネ始めた公明党。その公明党にイチャモンをつける「改憲ゴッコ」勢力。

 まさしく、「改憲ゴッコ」の世界といへようか。

■反「改憲」政党の馬脚を現し始めた公明党



 
 参院選終盤になつても、マスコミ各社による世論調査では相変はらず「改憲勢力3の2の勢い」といふ情勢である。選挙結果は事実そのやうになるであらう。

 新聞が「改憲勢力3分2の勢い」と書き立てるたびに、一番ビクビクしてゐるのは公明党の山口代表ではないかと思はれる。
 
 山口代表は7月4日の街頭演説でこんなことを口走つた。
 
 「社民党と共産党以外は憲法改正を否定してゐない。もうすでに憲法改正を否定しない政党は3分の2を超えてゐる」
 
 「民進党や共産党が、3分の2を取らせないと盛んに言つてゐるが、何のことを言つてゐるのかよくわからない」
 
 「公明と自民で基本的に憲法改正に対する考へ方が違つてゐるところがある」
 
 「どう改憲するかは合意ができるやうな状況ではなく、与党だからといつて、すぐに憲法改正を進める議論にはいかない」
 
 民進党なども憲法改正を否定してゐないのだから、憲法改正を否定しない政党は既に国会で3分の2を超えてゐる。従つて、選挙結果がどうならうと、憲法改正問題においては勢力図に変化はない―といひたいらしい。
 
 社民党と共産党以外は改憲勢力だつて。私はこんな珍説を初めて耳にした。

 公明党代表が参院選投開票日が迫ったこの時期に、こんな演説をやらかした意図は明白だ。選挙結果の如何にかかはらず、公明党は憲法改正の動きなどに乗る氣はさらさらございませんといふ態度表明だ。
 
 「改憲勢力3分の2」が現実味を帯びるにつれ、このオポチュニズム政党、いよいよ反「改憲」政党の馬脚を現し始めたといへやうか。

 選挙後、自民党から「選挙も勝つたことだし、それでは与党としていよいよ改憲に向けた検討を始めませうか」と言はれたら、公明党はどんな理屈をこねてケツをまくるつもりなのか? 面白いね。日本史上に残る無様かつ醜悪な 「改憲ゴッコ」がいよいよ始まるのだ。








プロフィール

tensei211

Author:tensei211
ちば・てんせい。ジャーナリスト、政治評論家。フェミニズム論、天皇論を中心に執筆活動を展開してゐる。

北海道芦別市生まれ。千葉県在住。

フェミニズム論をまとめた著作として、『男と女の戦争―反フェミニズム入門』(展転社)など。フェミニズム関係の共著に『男女平等バカ』(宝島社)、『夫婦別姓大論破』(羊泉社)などがある。

執筆には、正仮名遣ひ(歴史的仮名遣ひ)を用ゐる。

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