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◆「一票の格差」違憲無効訴訟ゴッコ(八)

 最高裁で36件の個別意見を書いた「違憲判決」常習犯



 さて、升永英俊の参謀、元最高裁判事泉德治の話に戻らう。

 ここでは、「違憲判決」常習犯の「罪状」を点検してみたい。
 
 泉德治は最高裁判事時代(平成14年―21年)、関与した判決の中で、36件の《個別意見》を書いてゐる。《個別意見》の内容については、御当人が次のやうに得々と説明してくれてゐる。

《私は、最高裁判事時代に36件の個別意見を書きました。多数意見と結論を異にした「反対意見」が25件、結論は多数意見と同じであるが結論に至る理由を異にした「意見」が4件、多数意見に加わりながら自分の意見を付け加えた「補足意見」が7件であります》

 「違憲判決」常習犯のマニアックぶりがうかがはれやうといふものだ。

 「一票の格差」違憲訴訟の最高裁判決で、泉德治が「違憲」の反対意見を述べたことは3度に及ぶ。

 ・平成16年1月(大法廷判決)
 ・平成18年10月(大法廷判決)
 ・平成19年6月(大法廷判決)

 次いで、彼が2度にわたつて「違憲」の反対意見を述べた判決がある。民法の「婚外子」相続規定違憲訴訟がそれだ。
  
 ・平成15年3月(小法廷判決)
 ・平成16年10月(小法廷判決)(※)

 「違憲判決」常習犯の狙つた獲物は、「一票の格差」違憲訴訟と「婚外子」違憲訴訟だつたことが知れる。

 先に私は、9月の「婚外子」違憲訴訟の最高裁判決と11月の「一票の格差」違憲訴訟の最高裁判決は密接に結びついてゐると指摘した。最高裁判事泉德治においては、「婚外子」「一票の格差」は、モノになりさうなテーマとして早くから意識されてゐた。泉德治の悲願は、この「一票の格差」違憲訴訟と「婚外子」違憲訴訟において、自分たちの少数意見を多数意見にひつくり返すことだつた。

「婚外子」違憲訴訟は、9月の最高裁判決で、裁判官14人の全員一致で違憲の判決が出され、ものの見事にひつくり返つた。11月の「一票の格差」違憲訴訟の最高裁判決は、「違憲状態」判決にとどまつたが、これが「違憲・無効」判決にひつくり返るのは時間の問題だと、この「違憲判決」常習犯は考へてゐるに違ひない。


(※)この判決において、泉徳治判事とともに「違憲」の反対意見を書いたのが才口千晴判事である。才口千晴判事は平成20年に退官、平成23年にTMI法律事務所に天下り、泉德治の同志となつた。


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◆「一票の格差」違憲無効訴訟ゴッコ(七)

 片野裁判長と升永グループの親密な関係
 天下り判事の部下だつた片野裁判長
 札付き裁判長はなぜ政治ショーの開幕に登場するのか?
 広島高裁岡山支部の参院選「違憲・無効」判決



 広島高裁岡山支部から参院選の「違憲・無効」判決が出て、テレビのアナウンサーは「またまた違憲無効判決が出されました」なんて叫んでゐた。違憲・無効判決が出るのは当たり前である。判決を出した裁判長が、衆院選無効訴訟で「違憲・無効」判決を出した裁判長と同じ人物なのだから。

 全国の高裁・支部に起こされた参院選無効訴訟で、高裁判決のトップバッターが広島高裁岡山支部。参院選無効訴訟判決といふ政治ショー第二幕の開幕にあたり、広島高裁岡山支部が登場したのはなぜか? この謎を解くためには、広島高裁岡山支部の片野悟好裁判長の素顔、及び、裁判の原告である升永英俊グループと片野裁判長との密接な関係を知る必要がある。

 片野悟好裁判長は、かつて青法協はなやかし頃、全国の裁判所にもぐりこんでゐた左翼判事を思ひ起こさせる人物である。この人を有名にしたのは、新潟地裁時代に裁判長として担当した中国人強制連行裁判。国家無答責に関して、「人間性を無視した公権力の行使で損害が生じた場合まで、日本国憲法や国家賠償法の施行前だというだけで、責任を追及できないという解釈・運用は著しく正義・公平に反する」として、国と企業の双方に損害賠償を命じ、左翼勢力を狂喜させた。

 さて、片野裁判長の経歴を眺めてみると、平成16年から18年まで東京高裁判事のポストにあつたことに注目したい。

 TMI総合法律事務所には、相良朋紀、今井功、村上光鵄、吉戒修一といふ4人の天下り判事が在籍してゐる。この4人の共通項は、片野裁判長が東京高裁の判事をつとめてゐた頃、東京高裁長官、東京高裁判事部総括、東京高裁部総括などのポストにあつたことである。つまりこの天下り4人組のお歴々は、片野裁判長の東京高裁判事時代の上司だつたことが明らかになる。

 TMI総合法律事務所は違憲訴訟運動の総本部である。総本部に陣取る重鎮4人の元部下である広島高裁岡山支部の裁判長が、総本部の最も喜ぶところの「違憲無効」判決を出した・・・といふ構図がみえてくると思ふ。

 ちなみに天下り4人組の最終ポストは次の通りである。

 今井功  東京高裁長官を経て最高裁判事
 吉戒修一 東京高裁長官 
 相良朋紀 広島高裁長官
 村上光鵄 東京高裁部総括判事(長官代行)

 前にこのブログで、違憲訴訟の基本は高裁レベルの闘ひと書いたが、高裁での闘ひを勝ち抜くために、升永グループが最初にとつた戦略は全国の高裁に人脈を築きあげることだつた。そして、升永グループが対高裁戦略の拠点として東京高裁をどれほど重視してゐるか知れよう。

 全国の高裁長官・支部長の大半は、東京高裁の判事か総括判事を経由してゐる。従つて、歴代の東京高裁長官や総括クラスをすべて抑へれば、全国の高裁との間に人脈を形成することができる。升永グループにとつて、天下り判事の利用価値は、全国の高裁に人脈をはりめぐらせることにあつた。実に用意周到な対高裁戦略ではないか。

 違憲訴訟といふ政治ショーを演出する升永英俊といふ人物は、本当に頭がいいといふか、狡知にたけたといふか、その抜け目のなさにはほとほと感心せざるをえない。

 衆院選違憲訴訟に続いて参院選違憲訴訟といふ政治ショーの第二幕が切つて落とされ、これから他の高裁判決が相次いで出される。この政治ショーも、高裁裁判長と升永グループの関係といふ観点から見物すれば興味がつきないはずだ。

 
◆「一票の格差」違憲無効訴訟ゴッコ(六)

 升永英俊の参謀、泉德治は「違憲判決」の常習犯
 TMI総合法律事務所に天下りした元最高裁判所判事



 TMI総合法律事務所に天下りした裁判官の中で、一番問題のある人物は、泉德治・元最高裁判所判事と思はれる。

 なにしろ、このお方、最高裁事務総長までつとめた身でありながら、最高裁判事時代に最も得意としてゐたのは違憲判決(補足意見・反対意見)を書くことだつたのだから。泉德治氏はいはば最高裁における「違憲判決」の常習犯、失礼、「違憲判決」の大家として法曹業界においてはつとに有名なお方だつたのである。

 この「違憲判決」マニア、いや「違憲判決」の大家が、TMI総合法律事務所に天下りして、升永英俊弁護士の参謀となつた。そして、違憲訴訟運動の陣頭に立つてゐる。元最高裁判所判事泉德治をTMI総合法律事務所に引き入れたのはおそらく升永英俊のはずだ。

 泉德治は司法官僚のエリート中のエリートである。その立派な経歴には驚くばかりである。

 昭和36年  京都大学法学部卒業、司法修習生
 昭和38年  東京地方・家庭裁判所判事補
 昭和45年 ハーバード・ロー・スクール修了(LL.M.)
 昭和48年  金沢地方・家庭裁判所判事
 昭和50年 最高裁判所事務総局人事局任用課長
 昭和54年 東京地方裁判所判事
 昭和57年  東京地方裁判所判事部総括
 昭和58年 最高裁判所調査官
 昭和61年  最高裁判所事務総局秘書課長兼広報課長
 昭和63年 最高裁判所事務総局民事局長兼行政局長
 平成2年  最高裁判所事務総局人事局長
 平成6年  最高裁判所事務次長
 平成7年  浦和地方裁判所(現さいたま地方裁判所)所長
 平成8年  最高裁判所事務総長
 平成12年 東京高等裁判所長官
 平成14年 最高裁判所判事
 平成21年  最高裁判所判事定年退官
 平成21年 弁護士登録(東京弁護士会)、TMI総合法律事務所顧問

 最高裁事務総局の要職を歴任し、司法官僚の最高位である最高裁判所事務総長に就任、そのあと、東京高等裁判所長官、最高裁判所判事といふ絵に描いたやうなエリートコースを歩んだ。

 最高裁事務総長が強大な権限を持つてゐることはあまり知られてゐない。

 日本の裁判所の人事は、最高裁が高裁の人事を動かし、高裁は管内の地裁人事を動かす。最高裁は場合によつては地裁の人事にも容喙する。最高裁のトップは最高裁長官だが、長官も最高裁判事も多数の案件を抱へてゐるから、人事にまで手が回らない。そこで最高裁事務総長が人事を仕切ることになる。つまり、日本の裁判所機構全体を実質的に統括するのが最高裁事務総長といふポストなのだ。

 その司法官僚組織の頂点にまでのぼりつめた人物が、最高裁判事になつた途端、違憲判決(補足意見・反対意見)を乱発し始めた。泉德治・最高裁判事は「違憲判決」常習犯、いや、「違憲判決」の大家として名を馳せることになつた。


     (この項続く)
◆「一票の格差」違憲無効訴訟ゴッコ(五)

 ―衆院選の高裁判決は14戦14勝―
 ―戦果をあげてきた升永の天下り人脈活用戦略―



 TMI総合法律事務所の天下り受け入れは、升永英俊弁護士が移籍した平成20年以降、急拡大した。TMI総合法律事務所の天下りリストをもう一度ながめてみよう。

《顧問弁護士》

 ★泉德治  元最高裁判所判事・東京高等裁判所長官
  頃安健司  元大阪高等検察庁検事長
  三谷紘  元公正取引委員会委員・横浜地方検察庁検事正
 ★相良朋紀  元広島高等裁判所長官
 ★今井功 元最高裁判所判事・東京高等裁判所長官
 ★樋渡利秋 元検事総長
 ★才口千晴 元最高裁判所判事
 ★吉戒修一 元東京高等裁判所長官
 ★北井久美子 元厚生労働省雇用均等・児童家庭局長・

《顧問》
 
 ★松山隆英 元公正取引委員会事務総長
 ★川北力 元国税庁長官

 このメンバーのうち、★印をつけた人物が、升永英俊が移籍した平成20年以降にTMI総合法律事務所が受け入れた天下りである。天下りした人物の元職が最高裁判事と高等裁判所長官に集中してゐることがお分かりいただけよう。この事実は、升永英俊が展開する違憲訴訟戦略と無縁ではない。

 公選法には国政選挙の効力に関する訴訟の一審は高等裁判所といふ規定がある。全国の8高等裁判所と6高裁支部のすべてに違憲訴訟を起こす。これが升永グループの基本戦略である。14高裁・支部が全部、違憲判決を出すやうになれば、最高裁も動かざるを得なくなるといふ戦法。「一票の格差」違憲訴訟の基本は、高裁レベルの闘ひなのだ。高裁の中でも東京高裁は規模、影響力とも別格である。TMI総合法律事務所が元東京高等裁判所長官を3人も獲得した意味がうなづけると思ふ。

  升永グループが展開する「一人一票実現国民会議」は、これまでの運動の成果を次のやうに誇つてゐる。

《2009年、越山弁護士のグループとは別に、全国の弁護士有志が、2009年の衆議院選挙に関する一人一票(衆院)裁判を全国7高裁1高裁支部に提起し、6勝2敗(4つの違憲違法判決、2つ違憲状態判決)で勝利しました。

 年が明けて2010年の参議院選挙に関する一人一票(参院)裁判では、同弁護士有志が、全国8高裁6高裁支部で15件の裁判を提起し(東京高裁は2件)、15戦15勝(3つの違憲違法判決と12の違憲状態判決)しました。 》

 そして、昨年の衆院選の違憲訴訟における高裁レベルの判決は、2件の「違憲無効」、12件の「違憲違法」、2件の「違憲状態」判決だつたから、升永グループの起こした14件に限つていへば、14戦14勝といふことになる。

 升永が計画した天下り人脈活用戦略は、彼の思惑通り、着々と戦果をあげてきたことは間違ひない。






◆「一票の格差」違憲無効訴訟ゴッコ(その四)


 最高裁判事3人が天下るTMI総合法律事務所
 政治ショーを演出する戦略本部



 日本の巨大法律事務所が官僚の天下り先の温床となつてゐる、といふ事実を知る人は少ない。巨大法律事務所はどこも、裁判官・検察官OB、国税庁OB、財務省OB、公正取引委員会OBなどを多数抱へることが常態化してゐる。

 巨大法律事務所にとつて、法曹界をはじめとした大物OBを抱へるメリットははかりしれない。全国の裁判所は最高裁を頂点にしたピラミッド組織だから、裁判官・検察官などの大物OBの経歴や人脈は、数々の訴訟の様々な場面で強力な威力を発揮するのだ。

 天下り受け入れ戦略を大々的に展開してきたのが、升永英俊が移籍したTMI総合法律事務所である。

 TMI総合法律事務所に所属する官僚OBの顔ぶれをみてみると、ざつとこんな具合だ。

 ●泉德治  元最高裁判所判事・東京高等裁判所長官
 ●頃安健司  元大阪高等検察庁検事長
 ●三谷紘  元公正取引委員会委員・横浜地方検察庁検事正
 ●相良朋紀  元広島高等裁判所長官
 ●今井功 元最高裁判所判事・東京高等裁判所長官
 ●樋渡利秋 元検事総長
 ●才口千晴 元最高裁判所判事
 ●吉戒修一 元東京高等裁判所長官
 ●北井久美子 元厚生労働省雇用均等・児童家庭局長
 ●松山隆英 元公正取引委員会事務総長
 ●川北力 元国税庁長官

 最高裁判事のOBだけでなんと3人!
 
 検事総長、最高裁判所判事、国税庁長官・・・・各界トップの天下りをこれほど揃へてゐる法律事務所はほかにない。

 TMI総合法律事務所は、最高裁「一票の格差」違憲判決といふ政治ショーを演出する事実上の戦略本部的存在だ。この戦略本部は天下り人脈によつて支へられてゐる。

 (この項続く)
◆「一票の格差」違憲無効訴訟ゴッコ(その三)

 ―弁護士升永英俊はなぜ巨大法律事務所に移籍したか―


 弁護士の升永英俊が平成21年に、《日本の一票の格差の是正を目的》として発足させた運動組織が「一人一票実現国民会議」である。その発起人は次の通りである。

  荒井寿光 - 元内閣官房・知的財産戦略推進事務局長
  池田裕彦 - 弁護士
★ 泉徳治 - 元最高裁判所事・弁護士
★ 伊藤真 - 伊藤塾塾長・弁護士・事務局長
  岩倉正和 - 一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授・弁護士
  太田洋 - 弁護士
  大宅映子 - 評論家
  奥谷禮子 - 株式会社ザ・アール社長
  角川歴彦 - 株式会社角川グループホールディングス会長
  川本裕子 - 早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授
 北修爾 - 阪和興業株式会社社長
★久保利英明 - 弁護士・共同代表
★ 黒田健二 - 弁護士
  頃安健司 - 元大阪高検検事長・弁護士
  三枝成彰 - 作曲家
  櫻井よしこ - ジャーナリスト
  佐々木かをり - 株式会社イー・ウーマン社長
  すぎやまこういち - 作曲家
  武藤佳恭 - 慶應義塾大学環境情報学部教授
 田中克郎 - 弁護士
 田中良和 - グリー株式会社社長
  田辺克彦 - 弁護士
  出口治明 - ライフネット生命保険株式会社社長
  戸松秀典 - 学習院大学法科大学院教授
  中村修二 - カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授
  中山信弘 - 東京大学名誉教授・弁護士
  長嶋一茂 - 野球評論家
  野村修也 - 中央大学法科大学院教授・弁護士
  廣中平祐 - 数学者
  堀田力 - 元検事・弁護士・財団法人さわやか福祉財団理事長
  堀紘一 - 株式会社ドリームインキュベータ代表取締役会長・評論家
  堀義人 - グロービス経営大学院大学学長
★ 升永英俊 - 弁護士・共同代表
  三木谷浩史 - 楽天株式会社会長兼社長
  宮内義彦 - オリックス株式会社グループCEO
  村上光鵄 - 元東京高裁裁判長・元京都大学法科大学院教授・弁護士
  村上隆 - 現代美術家
  森稔 - 森ビル株式会社社長
  屋山太郎 - ジャーナリスト
  吉田邦夫 - 東京大学名誉教授
  鷲尾悦也 - 財団法人全国勤労者福祉・共済振興協会理事長、元連合会長
 渡辺章博 - GCAホールディングス株式会社代表取締役社長
 
 このうち主力メンバーは★印をつけた5人であるが、升永英俊と泉徳治の二人が所属するのがTMI総合法律事務所http://www.tmi.gr.jp/である。

 TMI総合法律事務所は268人の弁護士を擁し、スタッフの総勢は約600人、四大法律事務所に次ぐ、日本で5番目のマンモス法律事務所だ。六本木ヒルズにオフィスを構へ、発起人に名を連ねる田中克郎弁護士が代表をつとめてゐる。

 平成20年、升永英俊は自分が創立した東京永和法律事務所と東京永和特許事務所をたたんで、弁護士・弁理士らを引き連れてTMI総合法律事務所に移籍した。

 後継者がゐないといふことが事務所解散の理由とされた。しかし、私のみるところ、東京永和法律事務所解散の本当の理由は、升永英俊自身がTMI総合法律事務所に移籍することにあつたと思はれる。升永が目をつけたのは、TMI総合法律事務所が抱へる法曹界からの天下り人脈だつた。

 (この項続く)
◆「一票の格差」違憲無効訴訟ゴッコ(その二)

 「一票の格差」違憲訴訟を金権訴訟化させた弁護士升永英俊


 昨今の「一票の格差」違憲訴訟の中核となつてゐるのは、左翼団体でもなく左派弁護士でもなく、人権派弁護士ですらない。企業相手の訴訟で巨万の富を蓄へた超富豪弁護士であり、違憲訴訟運動を支援してゐるのはIT企業長者であり、金融成金であり、経済同友会などの経済団体である。要するに、日本で有数のカネのある連中だ。

 「一票の格差」違憲訴訟はふたつの弁護士グループによつて起こされてゐる。ひとつは升永英俊弁護士のグループであり、もうひとつは山口邦明弁護士のグループ。昨年の衆院選で全国の高裁・高裁支部に起こされた訴訟は全部で16件。このうち、山口邦明弁護士のグループが起こしたのは2件にすぎない。あとの14件は升永英俊弁護士のグループによるものだ。

 山口邦明弁護士は昭和37年に初めて「一票の格差」違憲訴訟を起こした越山康弁護士の弟子筋にあたる人物で、いはば「一票の格差」違憲訴訟屋みたいな存在だ。しかし、現在の「一票の格差」違憲訴訟においては脇役みたいなものだ。現在の「一票の格差」違憲訴訟の主役はわずか四年前に、違憲訴訟に参入した永英俊弁護士グループに移つてゐる。

 「一票の格差」違憲訴訟は、升永英俊弁護士が平成二十一年に参入して、様相が一変した。

 升永英俊が始めた憲訴訟運動の新しい手法をとはかうだ。数十億単位のカネを用意し、新聞に全面広告を出し、法曹界の天下り人脈を駆使して、反「違憲」派の裁判官に圧力をかけ、違憲判決をもぎとるといふ戦法だ。法曹界の天下り人脈もカネで獲得したものだから、運動の原理は結局、すべてカネに帰着する。升永の参入によつて、「一票の格差」違憲訴訟運動はまたたく間に金権訴訟の様相を帯び始めた。

 「一票の格差」違憲訴訟を金権訴訟化させた元凶である升永英俊弁護士がどれほどの金持ちかといふ一例をあげると、この男は平成13年度の全国高額納税者ランキングに顔を出してゐる。

 平成13年度の全国高額納税者ランキングの堂々66位。所得税額はなんと3億4374万円。この年、歌手の宇多田ヒカルは第76位(3億1889万円)で、のちに長男への贈与の追徴課税取り消し訴訟を弁護する武富士会長の武井保雄は84位(3億639億円)だから、一介の弁護士が、全盛期の宇多田ヒカルや、サラ金業界トップのオーナーより稼いでゐたことに驚く。この男は弁護士稼業30年の間に一体どれほどの財産を築きあげたのか? 
.
 巨万の富を抱へた弁護士升永英俊が四年前に突如、違憲訴訟運動を始めたのはなぜか。その仔細を調べてみると、とても面白い事実がみえてくるのである。

 (この項続く) 


◆「一票の格差」違憲無効訴訟ゴッコ(その一)

 ―政治ショーを利用した最高裁「婚外子」違憲判決―

 「一票の格差」をめぐる最高裁判決といふのは、仕掛け人である弁護士グループと、最高裁による出来レースであり、一種の政治ショーと化してゐる。

 升永英俊を中心とする弁護士らが展開する「一人一票実現国民会議」には巨額の資金が投入され、国政選挙の違憲判決を勝ち取ることによつて、国政を左右をすることを狙つてゐる。

 升永らにとつて、最高裁判決に「違憲」といふ言葉が出てくれば、目的は達せられる。「違憲状態」など言葉の遊びにすぎない。最高裁が衆院選の違憲・無効判決など出せるわけもないから、「違憲状態」判決は弁護士グループにとつて実質勝利といつてよい。

 一方の最高裁にとつては、「一票の格差」無効訴訟は、最高裁として「違憲」判決を出せる数少ないチャンスなのである。最高裁はこれを利用して、他の違憲訴訟においても「違憲」判決を出す機会をたへずうかがつてきた。

 最高裁が九月に出した「婚外子」をめぐる民法第九百条の違憲判決と、今回の最高裁が出した衆院選「違憲状態」判決は、実は深く結びついてゐる。

 最高裁が「婚外子」違憲判決を出したのが九月四日。衆院選「違憲状態」判決を出したのが十一月二十日。最高裁が「婚外子」違憲判決を衆院選「違憲状態」判決の一カ月半前に設定したのはなぜか? 「婚外子」違憲判決が出された後、民法「改正」をめぐり自民党内が紛糾したとき、まもなく衆院選違憲判決が出るぞと脅しておけば、自民党の民法「改正」反対派に圧力をかけることができると計算したのである。

 衆院選違憲判決といふ政治ショーを最大限に利用しようとしたのが最高裁で、その作戦は見事に成功した。自民党の「ボクちゃん」たちは、もちろんそんな最高裁の陰謀など知る由もない。民法大改悪法案は二十一日に事実上の全会一致で衆院を通過した。


 (この項続く)
◆天皇と皇后は《対等》ではない―御陵御葬儀改変に思ふ(その三)

 ―天皇の《火葬》を恒久化することは許されない―


 宮内庁は十一月十四日、
 ・「今後のご陵及びご喪儀の在り方についての天皇、皇后両陛下のお気持ち」
 ・「今後の御陵およびご葬儀のあり方」
 といふ二つの文書を発表した。前者は、天皇と皇后の「お気持ち」が詳述された長大な文書である。従つて、後者の「今後の御陵およびご葬儀のあり方」は前者の「お気持ち」に記された天皇と皇后の御意思の体現とみて差し支へないと思ふ。

 ところが、この文書の冒頭に、驚くべき文言を我々は発見する。

 今回の検討は、天皇と皇后の葬儀について、
 《将来にわたって基準となり得るもの》
 とある。

  基準? この「今後の御陵およびご葬儀のあり方」の中心テーマは、説明するまでもなく、《火葬》の採用である。ならば、天皇の《火葬》を将来にわたつての《基準》とする、といふ意味にしか理解できない。
 
 なるほど、《火葬》を採用した場合の「基準」と読めなくもない。しかし、文書の中に火葬方法が詳述されてゐるわけでもなく、さうした意味でないことは本文を読めば明らかになる。

 《火葬導入の考え方》といふ項目が出てくる。
 
《 ○火葬導入の考え方
 (1)皇室において土葬、火葬のどちらも行われてきた歴史があること
 (2)わが国の葬送方法のほとんどが、既に火葬となっていること
 (3)葬送方法について、天皇のご意思を尊重する伝統があること
 (4)火葬の導入によっても、ご身位にふさわしい葬儀が可能であること 
    ―などから、火葬がふさわしいと考えるに至った。》

 《火葬導入の考え方》として、火葬に変更する理由を一方的に並び立てるのみで、天皇の葬送において土葬が主として採用されてきた由来や理由にはまつたく触れるところがない。

 つまり、《火葬導入の考え方》そのものが、将来の《基準》とされると受け取るほかはないのだ。
 
 しかし、《火葬》を将来の《基準》とすることなど、はたして許されることなのだらうか?

 《火葬導入の考え方》の(3)として、《葬送方法について、天皇のご意思を尊重する伝統があること》があげられてゐる。天皇はこの伝統をふまへて、三百五十年間続いてきた土葬を火葬に転換することを決意されたのであらう。

 それなら当然、後代の天皇も土葬か火葬かをお決めになる自由がなければならない。後代の天皇の御意思も尊重されなければならない。しかし、このやうな形で、《火葬》が天皇葬送の《基準》にされれば、後代の天皇は土葬か火葬かを選択する自由が奪はれてしまふ。これは、後代の天皇の御意思に対する侵害以外の何物でもない。

 葬送方法においては、誰も後代の天皇の御意思を拘束することはできない、たとへ今上天皇といへども。



 ********************************


 「今後の御陵およびご葬儀のあり方」の「要旨」は次の通り。

 【1】はじめに

 葬儀の検討は、火葬が望ましいとされる天皇、皇后両陛下のお考えを踏まえて行われた。火葬は皇室の伝統にかなうものであるが、他方で、江戸時代前期からの例である土葬を改めるという面もある。本検討は象徴およびそのご配偶という特別のお立場にある方の葬儀について将来にわたって基準となり得るものであり、慎重な検討が求められた。

 【2】検討に当たっての基本的な考え方

 〇天皇陛下、皇后陛下のそれぞれのご身位にふさわしい陵、葬儀とする。

 〇皇室の伝統と、昭和天皇の「大喪儀(たいそうぎ)」などの先例を基本としつつ、社会や国民意識の変化を踏まえる。

 〇国民生活に影響が及ぶことを極力少なくする。

 【3】検討内容

 〈一〉今後の陵のあり方について

 (1)陵建造の考え方

 〇静安と尊厳が、陵の独立性を維持することにより確保できる。

 〇武蔵陵墓地の将来の利用可能性を高めるよう、適切な規模にする。

 〇風格と高雅な趣を備えた陵とする。

 〇将来、天皇陵および皇后陵で行われる祭祀が、それぞれの陵で厳行できるような形状とする。

 【1】はじめに

 葬儀の検討は、火葬が望ましいとされる天皇、皇后両陛下のお考えを踏まえて行われた。火葬は皇室の伝統にかなうものであるが、他方で、江戸時代前期からの例である土葬を改めるという面もある。本検討は象徴およびそのご配偶という特別のお立場にある方の葬儀について将来にわたって基準となり得るものであり、慎重な検討が求められた。

 【2】検討に当たっての基本的な考え方

 〇天皇陛下、皇后陛下のそれぞれのご身位にふさわしい陵、葬儀とする。

 〇皇室の伝統と、昭和天皇の「大喪儀(たいそうぎ)」などの先例を基本としつつ、社会や国民意識の変化を踏まえる。

 〇国民生活に影響が及ぶことを極力少なくする。

 【3】検討内容

 〈一〉今後の陵のあり方について

 (1)陵建造の考え方

 〇静安と尊厳が、陵の独立性を維持することにより確保できる。

 〇武蔵陵墓地の将来の利用可能性を高めるよう、適切な規模にする。

 〇風格と高雅な趣を備えた陵とする。

 〇将来、天皇陵および皇后陵で行われる祭祀が、それぞれの陵で厳行できるような形状とする。

 〇合葬ではなく、天皇陵と皇后陵が一体的な陵となるよう建造する。

 (2)新たな陵の具体的な内容

 ○建造場所

 大正天皇陵の西側に建造する。

 ○規模

 天皇陵および皇后陵の面積を約3500平方メートルとし、昭和天皇陵と香淳皇后陵の合計面積(4300平方メートル)の8割程度の規模とする。

 ○形状

 両陵は上円下方(じょうえんかほう)の落ち着いたたたずまいとする。

 ○兆域(ちょういき)(特に管理を厳重にすべき敷地部分)

 両陵の兆域は墳丘の配置に合わせ、定める。

 ○両陵の配置

 (1)一つの敷地に作る。

 (2)同一敷地内に寄り添うように配置する。

 (3)陵域全体を一体的に整備する。

 〈二〉今後の葬儀のあり方について

 (1)火葬の導入

 ○火葬導入の考え方

(1)皇室において土葬、火葬のどちらも行われてきた歴史があること

 (2)わが国の葬送方法のほとんどが、既に火葬となっていること

 (3)葬送方法について、天皇のご意思を尊重する伝統があること

 (4)火葬の導入によっても、ご身位にふさわしい葬儀が可能であること

 -などから、火葬がふさわしいと考えるに至った。

 ○火葬施設の確保

 専用の火葬施設は、その都度、武蔵陵墓地内に設置する。

 (2)葬儀全体の組み立て

 ○火葬導入に伴う儀式のあり方

 (1)火葬導入に伴う儀式として、火葬の前に小規模な葬送儀礼が行われる。

 (2)火葬導入に伴い追加、変更となる儀式は皇室祭儀のなさり方に沿う。

 ○「葬場殿の儀」

 葬場については今後

 (1)格式の高い場所であること

 (2)国民生活への影響の少ないものとすること

 (3)暑さ寒さや、集中豪雨や竜巻などにも対応できる安全な場所であること

 (4)樹木の伐採を伴わないなど、環境への配慮が可能な場所であること

 -などの観点を踏まえ、検討を進める。

 ○皇后、皇太后、太皇太后の葬儀

 皇后、皇太后、太皇太后の葬儀については、これまでと同様、「大喪儀」とし、「天皇大喪儀」に準じて執り行われる。

 【4】おわりに

 将来の国民に、この取りまとめに沿った陵および葬儀の姿を通して、平成という時代が、そしてその時代を国民と共に歩まれていらっしゃる両陛下のお心、お姿が正しく伝わっていくことを願っている。



◆天皇と皇后は《対等》ではない―御陵御葬儀改変に思ふ(その二)

  ―《合葬》は天皇制度を崩壊させる―


  天皇と皇后の《合葬》は、天皇制度を崩壊させかねない危険極まりないものである。この余りにも明白なことをどうして誰もきちんと指摘しようとしないのだらう? 私は不思議でしようがない。

 《合葬》は、天皇制度にとつてなぜ危険なのかといふと、難しいことではない。《合葬》によつて、天皇と皇后は《対等》になつてしまふからである。

 具体的な事例をあげて説明しよう。

 御陵において執り行われる祭礼に、例祭と式年祭がある。

 例祭と式年祭の対象は、いふまでもなく先帝はじめ歴代天皇である。

 しかし天皇と皇后が《合葬》された御陵といふことになるとどのやうなことが起きるか。参列者は天皇の御霊に拝礼すると、皇后の御霊にも同時に拝礼することになつてしまふのだ。天皇と皇后の御霊を分離することはできないからである。

 歴代皇后には天皇のやうな例祭と式年祭はないけれど、先后については、例祭と式年祭が御陵においても執り行はれる。天皇と皇后が《合葬》された御陵になるとどうなるか。参列者は皇后の御霊に拝礼する。同時に天皇の御霊にも拝礼する。しかし、祭礼の主体はあくまで皇后であるから、天皇は、俗な言葉でいへば「脇役」として拝礼を受けるといふ、見様によつては「不敬」以外の何物でもない事態が生じてしまふのだ。

 天皇皇后の《合葬》御陵で一番恐ろしいのは、御陵が必然的に世俗墓化するといふことだ。

 ○○家の墓といふ世俗墓は、先祖代々が眠る合葬墓である。○○家の墓においては、遠い祖先も近年物故した家族も、○○家のひとりとして等しく祀られてゐる。御仏の上下関係はまつたくない。すべて《対等》である。

 天皇と皇后の《合葬》御陵も、《合葬》である限り、世俗墓のそのやうな性質を帯びるのは避けられない。すなわち天皇の御霊と皇后の御霊の《対等》化である。

 天皇、皇后、皇太后の墓所を御陵といふが、大正十五年に制定された皇室陵墓令において、御陵の兆域面積は、

 ・天皇陵―2500平方メートル
 ・皇后陵及び皇太后陵―1800平方メートル

 と定められた。  

 御陵の兆域面積の差異は、単なる御陵の規模の差異ではない。天皇と皇后・皇太后の立場上の違ひを、御陵の大きさの差異で表現してゐるにすぎない。天皇といふ地位の特殊性は、陵墓にあつては、外形上の大きさによつて表現するしかないともいへる。天皇陵と皇后陵が一体となつた《合葬》御陵では、天皇といふ地位の特殊性を示すことができないのは明白だ。

 我が国の歴史上、天皇と皇后が《対等》であつたことはないし、《対等》であつてはならない。現行皇室典範でも、皇后は身位(皇族の身分)において筆頭の身位を有する《皇族》と規定されてゐる。皇后は《皇族》なのだ。皇后であつても他の皇族であつても、天皇が《皇族》と《対等》の扱ひを受けることになつたら、天皇といふ制度は崩壊する。

 陵墓の面から天皇と皇后が《対等》になつてしまつたら、現身の天皇の在り方にも影響を与へずにはおかないだらう。現身の天皇の皇后との《対等》化は時間の問題である。

 天皇と皇后の《合葬》御陵の危険性とは、さういふことだ。

◆小泉純一郎、もつとやれやれ《原発ゼロ》発言
 小泉政権の罪状を暴く好機が到来した

 民法大改悪だとか天皇の葬送火葬化だとか、不快な動きが次々に起きる中で、私にとつて最近楽しいニュースがひとつだけある。それは小泉純一郎の《原発ゼロ》発言だ。私はひそかに、小泉純一郎よ、もつとやれやれ《原発ゼロ》発言、と思つてゐる。

 お前は反原発派かつて? んなわけがない。

 原発がなくなれば日本にバラ色の将来が訪れるがごとき幻想をふりまくこのデマゴーグが、共産党や社民党、鳩山由紀夫だのといふ反日勢力と手を組んで、《原発ゼロ》運動を派手派手しく展開してくれればどうなるか? この男の頭の中がカラッポであることに誰しも気がつかざるをえないのである。

 小泉純一郎が選挙で自民党を歴史的圧勝に導いて以来、小泉を天才政治家と信じ切つてきたアホな保守派の連中も、《天才政治家》の正体を知つて今度こそ目をさますかもしれない。

 我が国の首相が自虐談話を発し続けるのも、北朝鮮拉致問題が解決しないのも、政府のフェミニズム政策が悪化し続けるのも、すべて小泉長期政権に由来することを忘れてはならない。

 今、民法大改悪問題や天皇葬送問題で忙しくて、小泉政権の罪状を詳述してゐる余裕はないが、 小泉首相が村山談話顔負けの自虐談話を乱発した次第については、以前このブログに書いた記事があるのでお読みいただきたい。
  http://tensei211.blog.fc2.com/blog-category-10.html

 日本政府のフェミニズム化に小泉政権が果たした役割ははかりしれない。男女共同参画社会基本法が成立したのが、平成十一年。小泉内閣が成立したのが平成十三年。日本政府のフェミニズム路線は事実上、小泉政権五年間の間に確立され定着した。

 小泉純一郎の頭の中がカラッポであることをよく示すエピソードをひとつだけ披露しよう。

 首相に就任早々、小泉は坂東真理子・男女共同参画局長と一緒にランチを食べながら、坂東にかう聞いた。

 《女性のためになる政策をやりたいが、ひとつだけあげるとすれば何か?》

 坂東真理子は答へた。

 《保育所をたくさんつくることです》

 そこから、悪名高き《待機児童ゼロ作戦》がスタートした。男女共同参画局によつてデッチあげられた「待機児童三十万人」といふ嘘が日本中にまき散らされた。

 《待機児童ゼロ》《原発ゼロ》― これらの、分かりやすすぎる単純化されたスローガンは、検討の末の結論でもなんでもなく、デマゴーグの単純極まりない頭脳構造の所産なのだ。

 小泉政権のフェミニズム政策を忠実に継承した安倍政権は今、「男女共同参画」路線に邁進してゐる。

 
◆天皇と皇后は《対等》ではない―御陵御葬儀改変に思ふ(その一)

 昨年四月、宮内庁が天皇・皇后の埋葬方法を「天皇、皇后両陛下のご意向を踏まえ、火葬に変更する方向で検討する」「合葬についても視野に入れて検討する」と明らかにした時、私はある名状しがたい感情にとらはれた。それは、天皇といふ制度にある重大な改変がなされようとしてゐるといふ危機感、女系天皇問題に対した時と同質の危機感にもとづくものであつた。

 この時の私の危機感は、宮内庁による公表のされ方にも深く関係してゐた。発表したのが、女系天皇の旗振り役である羽毛田信吾・宮内庁長官。この佞臣が定例会見の席上で、唐突にペラペラしゃべり始めたのである、このやうな重大な問題を。しかも公表の時期が、羽毛田が長官を退任する直前といふタイミングで、女系天皇問題の帰趨も予断を許さない時だつたから、私の危機感は一層倍加した。 

 私は、御陵御葬儀の唐突な発表の裏に、羽毛田を筆頭とする宮内庁佞臣勢力による姦計があると読んでゐた。そして、そのことをこのブログにも書いた。しかし、この問題に関するその後の推移をみて、さらに、今回宮内庁から発表された「天皇皇后両陛下のお気持ち」「今後の御陵およびご葬儀のあり方」といふ文書を読むに及んで、この時の私の読みは誤つてゐたことを知らされた。火葬と合葬は天皇御自身が強く望まれたものだつたことはもはや疑ふ余地がない。

 私は、火葬への改変よりも、合葬への改変の方がはるかに大きな問題と考へてゐた(天皇皇后の合葬は天皇を天皇でなくする―)。今回の改変では、火葬は採用されたが、合葬は見送られた。しかし私は、多くの保守派知識人たちのやうに、合葬が見送られ、最悪の事態は回避された、などと安堵する気持ちにはとてもなれない。

 以下、その理由を説明したい。

    (この項続く)

  ******************************


「今後のご陵及びご喪儀の在り方についての天皇、皇后両陛下のお気持ち」の全文は次の通り。


 昨年秋、皇后陛下のお誕生日に際し、宮内記者会から皇后陛下に、今後の御陵および御喪儀の在り方についてのお気持ちをお聞かせいただきたいという質問があり、その折、皇后さまには、このようなことを陛下に先立ちご自分がお答えになることへのご懸念がおありのようで、どうしたものか長官、侍従長にお問い合わせがあった。このご懸念はもっともなことであり、宮内庁としても、いずれ天皇、皇后両陛下のお気持ちをご一緒にお示しいただくことが望ましいと判断し、また、その時期もお誕生日というご慶祝の機会ではなく、あらためて別の機会にしていただくよう両陛下にお願い申し上げてきたところである。

 一方、両陛下からは、今後の御陵および御喪儀の在り方について、かねてよりご意向をお示しいただいてきたところであるが、この質問の出された昨年来、さらに折に触れて、ご意向をお伺いする機会を頂き、今回、宮内庁として両陛下のご了解を得てお気持ちをおまとめしたので、これをもって、質問に対する回答とするものである。

 【検討に至る経緯について】

 天皇、皇后両陛下には、ご即位以来、国と社会の要請や人々の期待にお応えになり、象徴として、あるいはそのご配偶として心を込めてお務めをお果たしになっていらしたが、いつとはなしに、将来のお代替わりのことについて思いを抱かれるようになり、また武蔵陵墓地の御陵をご参拝の機会にも、今後の御陵の在り方について思いを致され、かなり早くから、お二方の間で御陵および御喪儀のことについてお話し合いになるとともに、このようなことはご自身方のお気持ちだけで決められることではないからと、折に触れ長官や参与の意見にも耳を傾けていらっしゃった。

 御陵および御喪儀の検討の内容については、基本的には皇室の方々ご自身でお決めいただくことで、またことがらの性格上、必ずしも公表を要しないところであるが、上記の宮内記者会からの要望を受け、また、検討の結果を正しく国民に伝えることも必要であると考え、このことを両陛下にご説明の上、大まかなところを公表させていただくこととしたものである。

 【今後の御陵および御喪儀の在り方全般について】

 天皇陛下には、皇室の歴史の中に、御陵の営建や葬儀に関し、人々に過重な負担を課することを望まないとの考え方が古くよりあったことに、かねてより思いを致しておられ、これからの御陵や御葬送全体についても、極力国民生活への影響の少ないものとすることが望ましいのではないか、とのお気持ちをお持ちであった。

 同時に陛下には、これまで長きにわたり従来の皇室のしきたりはできるだけこれを変えず、その中で今という時代の要請も入れて行動することを心掛けていらっしゃり、御陵および御喪儀の在り方についても、そのお気持ちに変わりはない。

 【御陵について】

 天皇陛下には、昭和天皇陵と香淳皇后陵が大正天皇陵と貞明皇后陵の場合と異なり、隣接して平行に設置される形になっていないことをご覧になり、御陵用地に余裕がなくなってきているのではないかとのご感想をお述べになってこられたことは、昨年4月の発表の際にお伝えしたところであるが、陛下には、このように武蔵陵墓地内に御陵用地を確保するには限度があることをおもんばかられ、今後品位を損なうことなく御陵を従来のものよりやや縮小することができれば、とのお気持ちをお持ちになったところである。

 また、御陵をやや縮小することにより、武蔵陵墓地内に、昭和天皇陵、香淳皇后陵をお囲みする形で、ご自分方お二方を含めこれからも何代かにわたり御陵が営建され、皆さまが離れ離れにならずにお鎮まりになることが可能になるのではないかとのお気持ちもおありであった。さらに、天皇陛下には、御陵の歴史の中で、かつて合葬の例もあったことから、合葬という在り方も視野に入れてはどうか、とのお考えをお持ちであったが、この合葬とすることについては、皇后さまから、ご自身昭和の時代にお育ちになり、「上御一人かみごいちにん」との思いの中で、長らく先帝陛下、今上陛下にお仕えになってきた経緯からも、それはあまりに畏れ多く感じられるとされ、また、ご自分が陛下にお先立ちになった場合、陛下のご在世中に御陵がつくられることになり、それはあってはならないと思われること、さらに、遠い将来、天皇陵の前で祭事が行われることになる際に、その御陵の前では天皇お一方のための祭事が行われることが望ましく、陛下のお気持ちに深く感謝なさりつつも、合葬はご遠慮あそばさねばとのお気持ちをお示しであった。

 ただ、御陵の大きさや配置に配慮することで、ご自分方をはじめとし、せめて昭和天皇を直接間接にお身近に感じ上げている世代の方々が、昭和天皇、香淳皇后のお近くにお鎮まりになることができれば、とのお気持ちは皇后さまも陛下と共通してお持ちであり、その上で、用地の縮小という観点、また、合葬をとの陛下の深いおぼしめしにお応えになるお気持ちからも、皇后陵を従来ほど大きくせず、天皇陵のおそばに置いていただくことは許されることであろうか、とのお尋ねがあった。

 【ご火葬について】

 御喪儀の在り方に関する事柄のうち、ご葬法については、天皇、皇后両陛下から御陵の簡素化という観点も含め、火葬によって行うことが望ましいというお気持ちを、かねてより頂いていた。

 これは、御陵用地の制約の下で、火葬の場合は御陵の規模や形式をより弾力的に検討できるということ、今の社会では既に火葬が一般化していること、歴史的にも天皇、皇后の葬送が土葬、火葬のどちらも行われてきたこと、からのお気持ちである。

 ご火葬施設について、両陛下のご身位に鑑み、既存の施設によらず、多摩の御陵域内に専用の施設を設置申し上げたい旨、両陛下に申し上げたところ、その場合には節度をもって、必要な規模のものにとどめてほしい、とのお気持ちをお示しであった。

 【葬場殿の儀の場所について】

 国葬の場合は、その関係者の意見もあろうが、崩御後、皇室として執り行う葬場殿の儀の場所については、国民が広く利用している場所を長期間占用したり、葬場の設営に際して多くの樹木の伐採をしたりすることがないかなど、国民生活や環境への影響といった点に留意する必要がある、とのお考えをお持ちである。

 さらに両陛下には、近年特に顕著になっている気象条件の急激な変化を非常に心配しておられ、御喪儀に参列される内外の方々に万一の事があってはならず、暑さや寒さに加え、集中豪雨や竜巻などの可能性も十分考慮し、出席者の安全確保ができる場所を、皇太子殿下や秋篠宮殿下など殿下方のご意見も伺いつつ選定してほしいとのお気持ちをお示しいただいたところである。
















◆ウーマンリブ闘士たちの《窓口闘争》といふ名のゲリラ戦
 《差別の被害者》に仕立てあげられた哀れな子供たち



 《関東で出生届の闘争開始》

 日本の法律婚制度撲滅運動において中核的な役割をはたしてきた団体に「婚差会」といふのがある。正式名称を「婚外子差別と闘う会」といふ。

 ウーマンリブの残党たちによつて昭和五十二年に結成されたのが「婚差会」だ。(当初の名称は「グループせきらん」、その後「婚外子差別と闘う会」に改称)

 その「婚差会」の手になる『非婚の親と婚外子』(青木書店)といふ著書に年表がついてゐる。

 年表の最初に登場するのが、冒頭に引いた《関東で出生届の闘争開始》といふ文言だ。

 《1975(昭和50)
  関東で出生届の窓口闘争開始。渋谷区役所に父母の続柄欄の嫡出子・非嫡出子の差別記載を拒否した出生届を提出》

 この記述は、ウーマンリブの残党たちが、それまでのヘルメットと角材で武装したゲバルト戦から、《窓口闘争》といふ名のあらたなゲリラ戦に戦術転換を図つたことをよく示してゐる。

 ウーマンリブ残党たちの戦法はかうだ。男と同棲する。子供をつくる。嫡出子・非嫡出子の別を記載しない出生届を役所の窓口に提出する。出生届の受理が拒否される。裁判を起こす。そして、《なんの罪もない子供が差別された》と叫びたてるといふパターン。

 出生届の窓口闘争は、子供がいなければ始まらない。だから彼女たちは頼まれもしないのに子供をつくる。

 子供を巻き込んで、マッチポンプの火を煽りたてる攪乱戦法。窓口闘争に利用される子供たちこそ哀れといへよう。

「婚差会」の闘士たちは今、民法九百条「改正」閣議決定の報に、勝利の雄たけびをあげてゐる。自民党の「ボクちゃん」たちの無知を嗤ひながら。




◆目標は「婚外子」規定撤廃と夫婦別姓導入
 法務省とフェミニズム勢力の四十年来の共闘


 自民党の「ボクちゃん」たち(これ、上野千鶴子オバハンの口マネね)は夢にも知らないと思ふけれど、非嫡出子(婚外子)の相続分を嫡出子の半分とする民法九百条の規定を削除することは、法務省の四十年来の悲願だつたのだよ。

 法制審議会に民法部会身分法小委員といふのがあつて、これが「相続に関する民法改正要綱試案」を発表し、このなかに非嫡出子と嫡出子の相続分同等化が盛り込まれた。昭和五十四年のことだ。

 法制審議会は法務省の隠れ蓑みたいな組織で、この時の要綱試案なるものを書いたのも法務省の役人である。

 ウーマンリブに毒された法務省の役人たちが満を持して発表した民法改正要綱試案だつたけれど、非嫡出子の相続規定改変は、自民党の反対によつてあへなく葬り去られてしまつた。翌年発表された民法改正要綱の答申から、非嫡出子相続規定撤廃は外されたのだ。

 思へば、この頃の自民党はまともだつた。
 
 一方、このころから、ウーマンリブの残党たちが「婚外子」規定撤廃闘争と夫婦別姓闘争を全国で繰り広げ始める。

 「婚外子」規定撤廃と夫婦別姓導入といふ目標において、法務省の役人とウーマンリブの残党たちは完全に一致してゐたといつてよい。

  ただ違ふのは、法務省の役人たち(裁判官を含む)は思ふやうに「民法改正」ができないので、立場上しぶしぶ現行法にしたがはざるをえなかつたのに対し、ウーマンリブの残党たちは公然と現行法を無視してきたといふことだけである。

 法務省の役人たちとフェミニズム勢力は民法「改悪」に向けてこの四十年間共闘してきた。そして両者の四十年に及ぶ共闘が漸く実つたのが今回の平成の民法大改悪である―この構図がみえない人には、この問題は理解できないと思ふ。


 夫婦別姓の策源地が法務省であるとは、『夫婦別姓大論破』(洋泉社)の拙稿でもさんざん指摘してきたことなのに、事態は一向に改善されず、法務省はいまでも夫婦別姓と「婚外子」規定廃止運動の策源地であり続けてゐる。

 こんな話、いくらしても自民党の「ボクちゃん」たちには馬の耳に念仏かな?


 

 

 
◆社民党=福島ミズホ化した自民党内閣
 平成の民法大改悪法案を閣議決定 

 安倍内閣が12日午前の閣議で、《結婚していない男女間の子(婚外子)の遺産相続分を法律上の夫婦の子(嫡出子)の半分とする規定を削除する民法改正案を決定した。》といふニュースが流れた。

 平成25年11月12日といふこの日は、結党以来まがりなりにも保守政党としての看板を掲げてきた自民党政府が、家族制度政策において完全に社民党化=福島ミズホ化した日として記憶されることになるだらう。

 平成の民法大改悪法案を粛々と閣議決定する自民党閣僚たちをみてゐると、数時間後の自分の運命さへ知らずに屠殺場にひかれてゆく羊の群れを連想してしまふ。

 私は、自民党が社民党化した記念碑代はりに、平成の民法大改悪法案に関する本を今執筆してゐるのだが、無知蒙昧な子羊閣僚のために、この本のエッセンスを簡単に紹介してあげようか。

 民法から、非嫡出子の相続を嫡出子の半分とする規定九百条の4号の規定が消えると、我が国の法律の中から嫡出子と非嫡出子との「待遇」を分かつ条文が一切消滅してしまふことになる。

 現在戸籍上では、戸籍法四十九条の規定にもとづき、嫡出子と非嫡出子を区別して表記してゐるが、戸籍法四十九条の規定の根拠は、非嫡出子の相続分を嫡出子の半分とする民法九百条4号の規定にもとづいてゐる。

 従つて、民法九百条4号の規定が消えてしまふと、戸籍もおいて嫡出子と非嫡出子とを区別する根拠が事実上失はれてしまふのだ。

 法律婚を敵視するウーマンリブの残党たちは、住民票から嫡出子と非嫡出子の区別(長男・長女と子)を消滅させる闘争を半世紀にわたつて展開してきたが、これが成功して、住民票の嫡出子と非嫡出子の表記はいづれも「子」に統一され、住民票から嫡出子と非嫡出子の区別は消滅した。

 今、フェミニズム勢力が展開してゐる闘争は、今度は戸籍から、嫡出子と非嫡出子の区別を追放してしまへといふ運動で、役所の窓口でこの要求がはねられると訴訟に持ち込むといふ手口で、全国で裁判闘争を繰り広げてゐる。

 かれらが目指す戸籍制度の解体とは、

 ①戸籍から嫡出子と非嫡出子との区別を追放する。 
 ②夫婦別姓を導入し、戸籍の筆頭者を廃止する。
 ③よつて、家族単位で編成する現在の戸籍を有名無実化し、個人単位の登録制度化を進める。

 といふものだ。

 姑息といふか陰険といふか、実は最高裁は、大法廷が九月四日に「婚外子」相続規定に違憲判決を出した後、最高裁小法廷は戸籍法四十九条の規定について合憲とする判決を出してゐる。

 最高裁小法廷で戸籍法四十九条合憲の判決を出した裁判官たちは、最高裁大法廷において「婚外子」相続規定に違憲判決に賛成したのと同じ裁判官たちである。なぜ、かれらは戸籍法四十九条にも「違憲」の判決を出さなかつたのだらうか。

 答へは簡単である、

 民法から「婚外子」相続規定が消滅してしまへば、やがて戸籍法も「改正」されると読んでゐるからである。戸籍法が「改正」されれば、戸籍から嫡出子・非嫡出子の区別も消滅する。

 最高裁が戸籍法で違憲判決を出さなかつたのは、もうひとつ理由がある。戸籍法で違憲判決を出したりしたら、戸籍解体闘争を繰り広げてきたウーマンリブ残党たちの正体がバレてしまふからである。

 つまり、最高裁小法廷が出した戸籍法四十九条の合憲判決といふのは、裁判闘争を繰り広げてきたフェミニズム勢力と法務省・最高裁との出来レース以外の何物でもない。このカラクリ、お分かりかな。平成の民法大改悪法案を閣議決定したロボット大臣たちよ。



◆まんまと成功した「夫婦別姓」と「婚外子」の分離作戦
 法務省・最高裁の罠にはめられた自民党


 民主党と社民党、みんなの党の野党三党はことし四月、民法改正案を参議院に共同提出してゐる。 

 その法案とは次のやうなものだ。

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■民法の一部を改正する法律案

民法(明治二十九年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。

第九百条第四号ただし書中「、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし」を削る。

附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して一月を経過した日から施行する。
(経過措置)
2 この法律の施行前に開始した相続に関しては、なお、この法律による改正前の民法の規定を適用する。

理 由
嫡出でない子の権利の保護の観点から、嫡出でない子の相続分を嫡出である子の相続分と同一とする必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

 *************

 ご覧のやうに、民法第九百条第四号但し書きの非嫡出子の相続規定を削除するといふもので、「婚外子」相続規定のみに限定した法案となつてゐる。

 さて、民主党は平成十年以来、十七回にわたつて、社民党や共産党とともに民法改正案を国会に共同提出してきたが、これら野党が平成二十一年に提出した民法改正案を読んでみよう。

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■民法の一部を改正する法律案

民法(明治二十九年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。

第七百三十一条を次のように改める。
(婚姻適齢)
第七百三十一条 十八歳に達しない者は、婚姻をすることができない。

第七百三十三条第一項中「六箇月」を「起算して百日」に改め、同条第二項中「前から懐胎していた場合には」を「日以後に出産したときは」に改める。
第七百四十六条中「六箇月」を「起算して百日」に改める。
第七百四十九条中「ただし書」を「(子の出生前に父母が離婚をしたときに係る部分
に限る。)」に改める。

第七百五十条中「夫又は妻の氏」を「夫若しくは妻の氏を称し、又は各自の婚姻前の氏」に改める。

第七百九十条第一項を次のように改める。
嫡出である子は、父母の氏(子の出生前に父母が離婚をしたときは、離婚の際における父母の氏)又はその出生の際における父母の協議で定められた父若しくは母の氏(父母の一方が死亡したとき、又はその意思を表示することができないときは、他の一方が定めた父又は母の氏)を称する。

第七百九十条中第二項を第三項とし、第一項の次に次の一項を加える。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないとき(父母の一方が死亡した場合又はその意思を表示することができない場合において、他の一方がその意思を表示することができるときを除く。)は、家庭裁判所が、父又は母の氏を子が称する氏として定める。

第七百九十一条第一項に次のただし書を加える。
ただし、子の父母が氏を異にする夫婦であって子が未成年者であるときは、父母の婚姻中は、特別の事情があるときでなければ、これをすることができない。

第七百九十一条第二項中「父母と」を「父母の双方と」に、「許可を得ないで」を「規定にかかわらず」に改め、「父母の氏」の下に「又はその父若しくは母の氏」を加え、同条第四項中「前三項」を「前各項」に改め、同項を同条第五項とし、同条第三項中「前二項」を「前三項」に改め、同項を同条第四項とし、同条第二項の次に次の一項を加える。
3 子の出生後に婚姻をした父母が氏を異にする夫婦である場合には、子は、父母の婚姻中に限り、第一項の規定にかかわらず、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる。ただし、父母の婚姻後に子がその氏を改めたときは、この限りでない。

第八百十条を次のように改める。
(養子の氏)
第八百十条 養子は、養親の氏(氏を異にする夫婦が共に養子をする場合において、養子が未成年者であるときは、養親の協議で定められた養親のいずれかの氏、養子が成年者であるときは、当事者の協議で定めた養親のいずれかの氏)を称する。
2 氏を異にする夫婦の一方が配偶者の嫡出である子を養子とする場合において、養子は、前項の規定にかかわらず、養子が未成年者であるときは、養親とその配偶者の協議で定められた養親又はその配偶者の氏(配偶者がその意思を表示することができないときは、養親が定めた養親又はその配偶者の氏)、養子が成年者であるときは、当
事者の協議で定めた養親又はその配偶者の氏(配偶者がその意思を表示することができないときは、養親と養子の協議で定めた養親又はその配偶者の氏)を称する。
3 養子が婚姻によって氏を改めた者であるときは、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は、前二項の規定を適用しない。

第九百条第四号ただし書中「、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし」を削る。

附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

(経過措置の原則)
第二条 改正後の民法(以下「新法」という。)の規定は、附則第五条の規定による場合を除き、この法律の施行前に生じた事項にも適用する。ただし、改正前の民法の規定により生じた効力を妨げない。

(婚姻適齢に関する経過措置)
第三条 この法律の施行の際十六歳に達している女は、新法第七百三十一条の規定にかかわらず、婚姻をすることができる。

(夫婦の氏に関する経過措置)
第四条 この法律の施行前に婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、婚姻中に限り、配偶者との合意に基づき、この法律の施行の日から二年以内に、別に法律で定めるところにより届け出ることによって、婚姻前の氏に復することができる。
2 前項の規定により父又は母が婚姻前の氏に復した場合には、子は、父母の婚姻中に限り、父母が同項の届出をした日から三月以内に、別に法律で定めるところにより届け出ることによって、婚姻前の氏に復した父又は母の氏を称することができる。この場合においては、新法第七百九十一条第四項及び第五項の規定を準用する。

(相続の効力に関する経過措置)
第五条 この法律の施行前に開始した相続に関しては、なお、改正前の民法の規定を適用する。

理 由

最近における国民の価値観の多様化及び女性の地位の向上、これらを反映した世論の動向等にかんがみ、婚姻制度に関しては、個人の尊重と男女の対等な関係の構築等の観点から選択的夫婦別氏制の導入並びに婚姻最低年齢及び再婚禁止期間の見直し等を行い、相続制度に関しては、嫡出でない子の権利の保護の観点から嫡出でない子の相続分を嫡出である子の相続分と同一とする等の必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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 こんな長大な民法改悪法案を民主党、社民党、共産党などの野党は、性懲りもなく年中行事のごとく国会に提出してきたのである。

 野党の民法改悪法案の中心は、女性の婚姻年齢の引き上げ、夫婦別姓の導入、非嫡出子の相続規定削除の三点だが、最大のターゲットが夫婦別姓の導入にあることはいふまでもない。

 ところが民主党と社民党、みんなの党の野党三党が今年四月に提出した法案には、婚姻年齢の変更もなければ、夫婦別姓のべの字もない。「婚外子」条項以外はみんな消えてしまつたのである。

 社民党の福島ミズホは夫婦別姓の法制化をあきらめたのか? 夫婦別姓狂の福島ミズホが夫婦別姓の法制化をあきらめるわけがない。民主党や社民党、共産党のフェミ議員たちが夫婦別姓の法制化をあきらめたのか? 冗談でだろ。

 民主党も社民党も法務省・最高裁連合の民法改悪大作戦に呼応して動いてゐるのだ。民法改悪大作戦とはなにか? 保守派のおバカさんたちの誰も気づいてゐないけれど、それは「夫婦別姓」と「婚外子」の分離作戦だ。

 「夫婦別姓」と「婚外子」を抱き合へせで法制化するといふのが、数十年来の法務省とフェミニズム勢力の基本方針だつた。しかし、自民党には、野田聖子のやうな福島ミズホ級の夫婦別姓病者もゐるけれど、夫婦別姓にはいまだに根強い反対勢力が存在する。

 そこで法務省とフェミ勢力が考へついたのが「夫婦別姓」と「婚外子」の分離作戦といふわけだ。「夫婦別姓」と「婚外子」をセットで法制化しようとするから、いつまでも法案が通らない。まづ「婚外子」で切りくずし、そのあとで「夫婦別姓」をやればいい。かくて「婚外子」→「夫婦別姓」といふ二段作戦への転換が図られた。「婚外子」法制化にあたつては、法案を正面から国会に持ち出すのではなく、まづ最高裁に違憲判決を出させ、外堀を埋めた上で、自民党に法制化をのませようといふ最高裁先兵作戦が採用された。

 法務省も最高裁も日弁連も民主党も社民党も共産党も自民党フェミ一派もみんな水面下でつるんでゐるのだから、自民党の「婚外子」反対派などはじめから勝ち目はなかつたといへる。恐ろしいことに、これら挙国一致フェミニズム連合によつて繰り広げられつつある平成の民法大改悪劇はまだ始まつたばかりなのである。

◆挙国一致で家族破壊法案が国会を通過する末世
 与野党対決法案は人畜無害の特定秘密保護法案のみ
 馬鹿総理を増長させた保守言論人たち


 今開かれてゐる臨時国会における与野党対決法案はなにかといへば、特定秘密保護法案ださうだ。こんな法律、あつてもなくても国家の大勢になんの影響もない。

 「特定秘密」といふおどろおどろしい名称とは裏腹に、特定秘密保護法案は役人が頭の中でこねくり回しただけの、施行されても国家の安全にも国民の安寧にも何の影響もない一片の人畜無害の法律である。
 
 他方、家族制度の根幹をゆるがせる民法の大改悪法案は、対決法案どころか、与野党賛成で国会を通過しようとしてゐる。挙国一致で家族破壊法案が国会を通過しようとしてゐるのに、外遊に浮かれるバカ総理は危機感どころかこの問題に一片の関心もない。

 大学で民法なんて勉強したこともない馬鹿総理は、おそらく嫡出子と非嫡出子の違ひさへ理解してゐないに違ひない。民法どころか憲法の条文さへ満足に読んだことのない総理大臣が「憲法改正」だと? 「憲法改悪」の間違ひではないか。

 家族破壊法案を上の空で通した総理大臣が「憲法改正」を叫んでも、それをまともに相手にするほど日本国民は愚かではない。権力志向の間抜けな保守言論人たちがこの馬鹿総理を日本の歴史に残る「大宰相」などと持ち上げるから、かういふことになるのだ。馬鹿殿を増長させたこの連中の罪は重い。

 これからこのブログで、馬鹿殿成立史とのその末路を克明に記録してやるから、馬鹿殿とその御用商人どもは首を洗つて待つてろ。


◆法務省と最高裁の策動にひつかかつた自民党
 平成の民法大改悪法案を了承した自民党法務部会
 露呈した安倍首相の無能と無定見


 自民党法務部会が民法改悪案を了承。法務省と最高裁の策動にものの見事にはめられた自民党。なにより、この問題の重要性をまつたく認識してゐないらしい安倍首相の無能と無定見さにはあきれるばかりである。

 非嫡出子(婚外子)の遺産相続を嫡出子と同等にする民法改悪案に反対する自民党議員たちは、会合で言ひたいだけいはせられて、いはゆるガス抜きをさせられた挙句、執行部に押し切られてしまつた。「家族制度を維持する具体策を1年をめどにまとめる」なんて、茶番にすぎない。

 ある意味で、民法改悪を目論む法務省・最高裁連合にとつて、今の自民党執行部は実に都合の顔ぶれがそろつてゐるといへる。アベノミクスとやらで自分の政権延命にしか関心のない自民党総裁、家族問題や家族法制など本気で考へたこともない幹事長、今回の民法改悪法案に賛成の立場をとる総務会長と政調会長。

 夫婦別姓に反対する立場から、我々は平成8年に『夫婦別姓大論破』(洋泉社)といふ本を出したが、高市早苗はこの本の中にも登場し、夫婦別姓反対論を展開してゐる。その人物がなぜ、非嫡出子相続規定の改悪に賛成するのか?  高市早苗の「変節」は、法務省・最高裁連合による長年の対自民党工作が成功をおさめたことを象徴してゐる。このへんのからくりは稿を改めて説明しよう。
 
プロフィール

tensei211

Author:tensei211
ちば・てんせい。ジャーナリスト、政治評論家。フェミニズム論、天皇論を中心に執筆活動を展開してゐる。

北海道芦別市生まれ。千葉県在住。

フェミニズム論をまとめた著作として、『男と女の戦争―反フェミニズム入門』(展転社)など。フェミニズム関係の共著に『男女平等バカ』(宝島社)、『夫婦別姓大論破』(羊泉社)などがある。

執筆には、正仮名遣ひ(歴史的仮名遣ひ)を用ゐる。

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