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■アベノミクス「花見酒の経済」の終焉


 週明けの東京株式市場は連日大幅下落を演じて、日経平均は一か月半ぶりの安値をつけ、株価を生命線にする安倍政権に冷や水を浴びせてゐる。

 株式市場は総選挙での与党圧勝は織り込み済みといふより、与党圧勝の予想が報じられたころから、株価が下落に転じ始めたのだから皮肉なことだ。

 「ハロウィーン緩和」といはれた10月31日の日銀による追加金融緩和で、株式市場は乱舞したが、結局、ハロウィーン緩和効果も一か月しかもたなかつたことになる。

 今、市場関係者が注視してゐるのは、日本の選挙結果のことなんかではなく、原油価格急落による世界的な景気減速への懸念だ。

 原油価格急落で、ロシアのルーブルや産油国の通貨は軒並み急落してゐる。輸出収入の96%を原油が占めるベネズエラはデフォルトが確実視されてゐる。アメリカのシェールガス革命を背景にした原油価格急落をめぐつて、アメリカとロシア、アメリカと産油国の新たな戦争が始まつたのだ。アメリカがシェールガスの増産を続け、サウジアラビアなど産油国が減産に動かなければ、原油価格の下落に歯止めはかからない。

 原油価格急落で世界経済が波乱含みの様相を呈してきたことで、欧米の株式市場も急速に冷え込んできた。

 原油価格の下落は日本経済にとつてプラス、なんてノンキな予測をたててきた日本のエコノミストたちも、やうやく事態の深刻さにおののきはじめた。バカノミクス、ぢやなかつた、アベノミクス総理は果たして気がついてゐるかどうか。

 元経済財政政策担当大臣の与謝野馨がラジオの番組で、「アベノミクスは経済政策とは言へない」「アベノミクスは近い将来破綻する」と発言した由。

 そして曰く、「竹中さんたちは花見酒の経済で、一晩パッと楽しくやればいいつていふ経済なの」と。

 バカノミクス、ぢやなかつた、アベノミクスについてこれほど適確な表現を聞いたことがない。
  
 世界経済を動乱に巻き込む「逆オイルショック」で、どうやら日本の「花見酒の経済」も終焉を迎へつつあるらしい。




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■日本人の愚民化進行を証明した自民党馬鹿勝ち



 総選挙での自民党の馬鹿勝ちは、日本人の愚民化が一段と進行したことの証明にすぎない。

 小泉純一郎の郵政選挙で小泉自民党に馬鹿勝ちをもたらしたことがその後の日本に衰運をもたらしたことなど夢にも知らない愚民たちは、再び、アベノミクスにコロッと騙されて、安倍自民党に馬鹿勝ちをプレゼントした。

 今回の選挙は、郵政選挙において愚民たちが罹患した狂熱病とはほど遠いものだつたが、ワンフレーズ作戦がまんまと成功したといふ点では共通してゐる。

 大博打といふ点でも郵政選挙と似てゐる。小泉首相は参議院での郵政法案否決を受けて、衆院を解散するといふ大博打をうつた。これに対して、安倍首相は衆院の任期が2年もあるのに、財務省が主導する安倍包囲網―安倍首相に消費税増税を決めさせた上で安倍政権を安楽死させ麻生か谷垣を次期首相に立てるといふシナリオ―に怯えて、「このままでは財務省に殺される」と、大博打の解散にうつて出た。

 第一次政権の失敗に懲りた安倍首相が、第二次政権で取り入れたのが小泉のワンテーマ・ワンフレーズ手法だ。

 小泉首相が選挙の争点を郵政民営化に賛成か反対かだけに単純化して大勝利を収めたのにならつて、安倍首相は解散選挙のテーマをアベノミクス一本で押し通すことに決めた。

 「郵政民営化賛成か反対かを国民に問ふ」
 「アベノミクスへの判断を国民に問ふ」。

 単純極まりないフレーズをB層向けにひたすら繰り返す小泉流ポピュリズムの手法をそのままマネたのが安倍首相だ。

 金融緩和も財政出動も株価つり上げ策にしかすぎないのに、それをアベノミクスと名付けて、アベノミクスで日本が生まれかはるかのごとき幻想を振りまき、その作戦は成功した。小泉も安倍も新自由主義などといふ高等(高級ではない)経済思想とは無縁の衆生で、無学な政治家にすぎない。小泉純一郎は基本的に政策に関心がなく、政局にしか興味がない男だつた。

 金融緩和も財政出動も株価つり上げ策にしかすぎないのに、それをアベノミクスと名付けて、アベノミクスで日本が生まれかはるかのごとき幻想を振りまき、その作戦はほぼ成功した。

 安倍政権にとつての命綱は株価である。株価が下落すれば安倍政権は終はる。安倍首相にとつて政権維持と株価つり上げは同義語だ。

 小泉が郵政問題のためなら手段を選ばなかつたやうに、安倍首相も株価つり上げのためなら手段を選ばない。

 日銀に大幅金融緩和を強要して、金融緩和効果で株が上がつてゐるうちに解散を断行し、消費税増税を前提に金融緩和に踏み切つた日銀幹部は煮へ湯をのまされた。日銀をだますことくらゐ今の安倍首相にとつては朝飯前で、政権維持と株価維持のためなら利用できるものはなんでも利用する。これが安倍政権の正体だ。
 
 安倍自民党に馬鹿勝ちをもたらした犯人は、第一に、株価さへあげてくれればほかのほかのことなんかどうでもいいぢやないの、といふ日本の愚民層である。

 第二に、安倍首相に改憲を掲げる保守政治家といふイメージを抱き続けてゐる愚民保守層だ。

 第三に、中国と韓国である。習近平と朴槿恵が安倍首相をウルトラ軍国主義者よばはりしてくれるおかげで、愚民保守たちの間に中国韓国に屈しない安倍首相といふイメージをますます強固にした。

 第四に、日本に残存するサヨクジャーナリズム。これも、安倍首相は憲法を改正して日本を戦争のできる国にしようと目論んでゐる保守反動、と旧態以前のレッテルを張り続けることによつて、愚民保守層の対安倍イメージアップに貢献してゐる。左翼連中が批判するほどだから、やつぱり安倍首相は保守なんだと思ひ込んでしまふのが愚民保守層のいつもの思考パターンだからだ。愚民保守層の判断基準は自分の頭の中ではなく、中国や韓国、それから日本のサヨクジャーナリズムの鏡に映つた安倍像にある。

 かくして、株価を上げてくれる総理といふ愚民層向けのイメージと、反日中韓と闘ふ安倍首相といふ両用のイメージが形成され、これが複合効果を発揮して、安倍自民党の馬鹿勝ち現象が生まれてしまつた。

 安倍首相にとつては、愚民保守層に対しては、自分を保守と思はせておくのが得策だから、集団的自衛権程度の飴玉をしやぶらせておく。中韓が反日姿勢を強めれば強めるほど、愚民保守たちは無法無礼な中韓と闘ふ総理といふイメージを勝手に形成してくれる。今、中韓の対日強硬姿勢を一番歓迎してゐるのはおそらく安倍首相だらう。中韓に対して何もしないことが、逆に自分のポイントを上げてくれるのだから有難い話だ。

 与党の圧勝で安倍政権が長期政権になれば憲法改正に一歩近づくと喜んゐる愚民保守たちの顔が見えるやうだ。株屋的思考に浸食された安倍首相の頭からは、憲法改正といふ文字はとつくのむかしに消えてゐる。
 



 

■安倍パフォーマンスは専業主婦殲滅作戦のカムフラージュ
 影で糸を引く南部パソナの野望
 

 安倍首相が狂つたやうに「女性が輝く社会を」と国の内外でカネや太鼓をたたきまはつてゐる姿は、いかにも異様である。

 一国の宰相が、忙しいスケジュールを裂いて、女性の管理職を30%にしますと訴へるためだけに、わざわざ女性編集者たちを集めた会合を開くだらうか?

 「ジェンダーフリー断固反対」と叫んでゐた人が、急に愛想笑ひをふりまいてフェミニストたちに接近し、彼女たちの口マネをはじめたものだから、フェミニストたちこそ気味悪いがつてゐる。そして「何か裏があるんぢやないの?」と猜疑心に満ちた目で安倍パフォーマンスを眺めてゐる。
 
 フェミニストたちの直観は正しい。確かに裏があるのである。

 最近の安倍首相のフェミニストもどきのパフォーマンスは、あることを隠すためのカムフラージュといへる。専業主婦殲滅作戦を隠すためのカムフラージュ。

 専業主婦を家庭から追ひ出して労働市場に駆り出すためには、配偶者控除を廃止するのが一番効果的だ。しかし、配偶者控除の廃止だけ言ひだしたのでは、専業主婦家庭が増税になるのは明らかだから、抵抗が強い。そこで「女性の輝く社会を」といふ甘つたるい糖衣にくるんで、ドサクサまぎれに国民にのませてしまへといふのが安倍パフォーマンス作戦―専業主婦殲滅作戦のシナリオだ。

 安倍首相は一人で勝手にフェミニスト踊りのパフォーマンスを始めたわけではない。裏で糸を引いてゐる演出家が存在する。安倍パフォーマンスの黒幕として名前が取りざたされてゐるのが、覚醒剤で逮捕されたASKA事件で一躍悪名を馳せたあの方―パソナグループ代表の南部靖之だ。
 
 配偶者控除が廃止して、日本中の専業主婦が大量に労働市場に流れ込むと、はかりしれない利益を享受できる業界がある。人材派遣業界だ。

 主婦が労働市場に大量流入すると、人材派遣業界の中でも飛躍的な業績向上が見込まれるのがパソナグループといはれる。

 パソナグループは主婦に特化した派遣の分野では業界のトップで、お客(派遣労働者)としてすでに多くの主婦を抱へてゐるが、そもそもパソナは、《育児を終えてもう一度働きたいと願う主婦に働く場を提供したいという思いから人材派遣業をスタート》(同グループHPより)した会社なのだ。 
 
 安倍―南部ラインのこのへんのカラクリを教へてくれるのが例の「国家再興戦略改訂版」である。

 南部靖之は小泉政権で構造改革を進めた竹中平蔵をパソナグループ取締役会長として取り込み、安倍首相はその竹中平蔵を産業競争力会議のメンバーに送り込んだ。

 今、産業競争力会議を事実上動かしてゐるのは、パソナグループ会長でもある竹中平蔵で、竹中平蔵の圧倒的な影響下に作成された文書が「国家再興戦略改訂版」といふことになる。

 (この項続く)


■フェミニズム路線に突き進む自民党公約


 昨年来の安倍首相の内外フェミニストたちへの接近ぶりはほとんど異常といつていい。

 ダボス会議では「日本は女性に輝く機会を与へなくてはならない」と叫び、ヒラリー・クリントンと会つては、働く女性の増加の経済効果について意見の一致をみたと喜び、女性の駐日大使ばかり集めた会合では「安倍内閣はこんなに女性の社会進出に取り組んでゐる」と胸を張り、女性編集者ばかり集めた会合まで開いて、「みなさんのやうに働く女性を増やすことが安倍内閣の指名」と猫なで声でアピールした。ちなみに、これまで歴代首相の中で、女性の駐日大使ばかり集めた会合を開催した首相なんて一人もゐやしない。

 安倍首相のフェミズム勢力への異常接近ぶりは、今回の衆院選の自民党公約にも非常に忠実に反映されてゐる。自民党公約の中で、女性に関する
政策は巨大なスペースを占め、おびただしい女性政策が詰め込まれてゐる。次に載せたのがそれだ。

  *******

【Ⅱ.地方創生・女性活躍推進】

<すべての女性が輝く社会の実現を>

●女性が、各々の希望に応じ、家庭や地域、職場においても、個性と能力を十分に発揮できる「すべての女性が輝く社会」の実現を目指します。「社会のあらゆる分野で、2020年までに指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度とする」という目標の確実な実現に全力を挙げます。
●政治の場への女性の更なる参加を促進します。
●働く女性、働きたいとの希望を持っている女性の職業生活における活躍を促進させる「女性活躍推進法」を成立させます。
●働き方に中立的な税制・社会保障制度等について、総合的に検討します。
●女性が希望する就業形態を確保するための手段として、テレワークを普及促進させる取組みを加速します。
●女性研究者・技術者が出産・子育て・介護等と仕事の両立ができるような働きやすい環境づくりを進めるとともに、研究機関等における女性研究者等の採用・登用等の活躍を促進します。
●「女性のチャレンジ応援プラン」を策定し、家事・子育て等の経験を活かした再就職の支援等を行うとともに、「働く女性の処遇改善プラン」を策定し、非正規社員の処遇改善や正社員化を支援します。
●「女性の健康の包括的支援に関する法律」の成立を目指します。
●地域の実情に応じた、結婚・妊娠・出産・育児の「切れ目のない支援」を推進するため、自治体による取組みを応援します。
●結婚や子育てを後押しするための新たな経済的支援制度を創設します。
●特定不妊治療に要する費用の助成、周産期医療情報ネットワークの整備・充実、産科医・小児科医の負担軽減策の充実等出産環境の整備を図ります。
●安心して子育てに取り組めるよう、自治体によるワンストップの子育て支援拠点(日本版ネウボラ)の導入を支援します。
●子育て家庭、働く母親の負担軽減のため、ベビーシッター費用や家事費用の支援策の導入を図ります。
●子育て負担の軽減を図るため、財源確保とあわせて、子供3人以上の多子世帯に対する子育て負担軽減策を検討します。
●「待機児童解消加速プラン」を展開し、保育需要のピークを迎える平成29年度末までに約40万人分の保育の受け皿を確保し、待機児童解消を目指します。
●全ての子育て家庭を支援する「子ども・子育て支援新制度」は、必要な予算を確保した上で、来年4月から着実かつ円滑に実施します。
●1兆円超程度の財源を確保し、「子ども・子育て支援新制度」に基づく子育て支援の量的拡充(待機児童解消に向けた受け皿の拡充等)及び質の改善(職員配置や職員給与の改善等)を図ります。
●就学後の子供の預け先が見つからず、離職を余儀なくされる「小1の壁」打破のための「放課後子ども総合プラン」(平成31年度末までに約30万人分の受け皿拡大等)を着実に実施します。
●高齢者世代が若い世代の子育て支援を行うための環境整備に向け、イクジイ・イクバア支援を行うとともに、三世代同居世帯への支援策を講じます。
●仕事と家庭の両立支援に積極的に取り組む企業に対し、育児休業者の代替要員確保のための助成等のインセンティブを与え、企業風土の改革を目指します。
●女性アスリートを育成・支援するプロジェクトを推進します。女性アスリートの海外派遣や資格取得、妊娠・出産・育児をサポートします。
●女性の視点、生活者の視点からの防災・復興の取組みを推進します。
●国際協力に係る企業やNGOの活動において、女性の活躍に注目し、官民連携を強化します。
●国際機関等で活躍する女性職員への支援を一層強化し、その地位向上に努め、帰国後の職場環境の整備を進めます。

 *********

 何も知らない人にこれを見せたら、「なにコレ? どこのフェミニズム団体のパンフレット?」と言はれてしまふだらう。

 2年前の衆院選の時の自民党公約と読み比べてみると、今回の公約の異常ぶりが鮮明になる。前回衆院選公約では女性に関する項目は特段設けられてゐなかつた。女性に関する政策は《社会保障》の中で、「少子化・若者対策」のタイトルで次のやうに記述されてゐた。

 *************

〈少子化・若者対策〉
●「若者支援」「結婚」「出産」「子育て(教育)」を通じて家族を幅広く支え、子育てを幸せと実感できる「家族支援政策」を積極的に進めます。
●少子化問題克服のための、抜本的な意識改革や、仕事と家庭の両立支援など環境整備を促進します。
●待機児童解消のため、処遇改善などによる保育士の確保をはじめ、即効性のある対策と講じます。また、現行保育制度を基本に、量・質両面の充実を図るとともに、ゼロ歳児に親が寄り添って育てることのできる環境の整備を進めます。
●年少扶養控除を復活させます。

 *************

 簡潔といふか、あつさりといふか、とりあへず女性政策も公約の中に入れておきましたといふ感じで、当時の安倍さんの女性政策に対する関心の度合はこの程度のものだつたのだ。いや、この短い記述の中にも、「家族を幅広く支え」とか、「ゼロ歳児に親が寄り添って育てることのできる」などといふ表現に、ジェンダーフリー教育に反対してゐた頃に安倍さんが表明してゐた家族観さへうかがはれる。

「家族を大事にしませう」なんて言つてた人が、一体いつからヒラリー・クリントンになつてしまつたのか? 福島瑞穂化してしまつたのか?
 
 福島瑞穂はいまだに夫婦別姓導入などにシャカリキになつてゐるから、「安倍さんを福島瑞穂化なんてヒドい」と怒る人がゐるかもしれない。いや、ヒドくないのである。

 なぜなら、安倍首相がこれからやらうとしてゐる「女性政策」なるものは、夫婦別姓制度の導入と同じくらゐ危険極まりないことなのだから。安倍首相がこれからやらうとしてゐること―それを専業主婦殲滅構想と呼ぶ。


(この項続く)


■グローバル教育の推進で邪魔になつた「日本の歴史と伝統の尊重」


 引き続き自民党の衆院選公約の教育問題について話をしたい。

 自民党の公約は6月に公表された「日本再興戦略改訂版」の焼き直しだと指摘したけれど、私のみるところ、自民党公約の3分の2は日本再興戦略改訂版の路線と軌を一にする。

 日本再興戦略改訂版では、「グローバル化に対応する人材力の強化」として、教育政策を重要課題と位置づけ、4ページにわたつて言及してゐる。

 教育政策の中で、英語教育等に関するくだりを紹介しよう。まず、昨年策定された「日本再興戦略」の掲げた施策に関して、達成度評価の記述。

《(グローバル化等に対応する人材を育成)

・大学の国際競争力の強化のため、世界と競う大学への重点支援を行う「スーパーグローバル大学創成支援」事業を創設した。また、初等中等教育段階からの英語教育の強化のため、小学校英語の早期化等を行う拠点への支援や教員の英語指導力向上のための取組を開始した。さらに、グローバル化に対応した素養・能力を育成するため、一部日本語による国際バカロレアの教育プログラム(日本語DP)の開発に着手するとともに、その対象科目の拡大を図った。一部大学においては国際バカロレアを活用した入試の導入や拡充について発表されるなど、その活用が進められつつある。加えて、国際的に活躍できるグローバル・リーダーの育成を図ることを目的とした「スーパーグローバルハイスクール」を創設し、本年1月には、現行の教育課程の基準によらない特色ある教育課程の編成を可能とするための特例措置を講じた。》

 次に、今後推進すべき施策に関する記述。

《 グローバル化等に対応する人材力の育成強化

小学校における英語教育実施学年の早期化等に向けた学習指導要領の改訂を2016年度に行うことを目指し、指導体制の強化、外部人材の活用促進など、初等中等教育段階における英語教育の在り方について検討を行い、本年秋を目途に取りまとめる。学校現場等における外国人活用の抜本強化を図り、実践的な英語教育を実現させる。あわせて、在外教育施設における質の高い教育の実現及び海外から帰国した子供の受入れ環境の整備を進める。また、今年度から開始する「スーパーグローバル大学創成支援」等において、人事・教務システムの徹底した国際化等により国際競争力を強化する大学を支援し、取組状況を公表する。あわせて、日本の大学と外国の大学とのジョイント・ディグリーを実現するため、これらの大学が共同で教育プログラムを構築するための所要の制度改正を本年中に行う。加えて、日本人留学生の倍増に向け、ギャップイヤー等を活用し、希望する学生が国内外で多様な長期体験活動を経験できる環境整備を推進する。》

 これを読んでみれば、今回の自民党公約が掲げた英語教育等に関する次の記述は、「日本再興戦略改訂版」のエッセンスそのものだ。

《小学校英語教育の早期化》
《小中高を通じた英語教育の強化、「スーパーグローバルハイスクール」や「スーパーグローバル大学」の整備、国際バカロレア認定校の大幅増を進めます。》

 今衆院選と2年前の衆院選の自民党公約の教育政策を読み比べてみると、とても興味深いことに気がつく。それは2年前の自民党公約には、小学生英語の早期化どころか、そもそも英語教育への言及がまつたく存在しなかつたといふ事実だ。

 英語教育等への言及がなく、教育政策の骨格をなしていたのは、従来からの自民党の党是ともいふべき次のやうな主張だつた。

《教育基本法が改正され、新しい学習指導要領が定められましたが、いまだに自虐史観や偏向した記述の教科書が多くあります。子供たちが日本の伝統文化に誇りを持てる内容の教科書で学べるよう、教科書検定基準を抜本的に改善し、あわせて近隣諸国条項も見直します。》

 再び問ひたい。自民党の教育公約から「日本の歴史と伝統の尊重」が消えてしまつたのはなぜか?

 その答へは、「日本再興戦略改訂版」を読んだ人ならいやでも分かる。ここには、「日本の歴史と伝統の尊重」など入る余地はまつたくないといふことが。

 「日本再興戦略」の底に流れるのは、日本に残る経済・法律・社会制度・慣行をたたきつぶさうといふ、アメリカが日本に毎年突き付けてきた「年次改革要望書」の執念のごときものだ。

 今でも日本は十分グローバル化してゐて、グローバル化現象と「日本の歴史と伝統を尊重」する態度とは本来矛盾しない。現に自民党も結党以来その路線でやつてきた。
 
 ところが、「日本再興戦略改訂版」を作成した産業競争力会議のメンバーたちは、「日本の歴史と伝統を尊重」する精神など微塵も持ち合はせてゐない。その無国籍者たちの手になる「日本再興戦略改訂版」をそのまま拝借して作成されたのが自民党の選挙公約だから、公約から「日本の歴史と伝統を尊重」が消えたのは至極当然の成り行きといふことになる。

 おそらく安倍首相にとつて、小泉流構造改革のはるか先をゆく「内なるグローバル化」路線を貫徹するためには、「日本の歴史と伝統の尊重」など不要になつた、といふより邪魔になつた、と言つた方が近いかもしれない。






■「日本の歴史と伝統の尊重」を重視する教育から「グローバル教育」へ

 
 自民党の公約から「日本の歴史と伝統の尊重」が消えてしまつたといふ事実は、今後の安倍自民党の方向性を知る上でも結構重要なポイントだと思ふので、もう少し検証してみたい。
 
 自民党の教育公約から「日本の歴史と伝統の尊重」を外した理由としては、次の二つが考へられる。

 ①安倍首相の考へ方が変はつた。
 ②安倍首相の考へ方は変はつてゐないが、保守色を薄めるといふ選挙戦術上の理由。

 ②のケースは、選挙における無党派層取り込み対策だ。「日本の歴史と伝統の尊重」などを持ち出せば、軍備を増強して戦争をできる国にする首相といふタカ派的イメージを増幅させてしまふ。無党派層を取り込むためには、「日本の歴史と伝統の尊重」はマズイと判断したといふことになる。

 ①の場合は、安倍首相が自虐史観派に転向したわけではもちろんないけれど、政治家として「日本の歴史と伝統の尊重」を国民に訴へることに熱意を失つた、教育政策全般に対する関心が低下した、「日本の歴史と伝統の尊重」などといふことはどうでもよくなつた、など色々な理由が考へられる。

 自民党支持層の中には、景気対策もいいけれど、自民党政府には教育をしつかりやつてもらひたいと考へる人々も少なくない。「日本の歴史と伝統の尊重」を公約に盛り込めば、「安倍さんは日本の子供たちのことを考へてくれてゐるんだわ」と保守層を引き付けておく上で一定の効果があることはもちろん安倍首相も承知してゐるはずだ。

 かうした自民党支持層の期待を裏切つてまで、選挙公約から「日本の歴史と伝統の尊重」を敢えて外したというのは、安倍首相の中でよほど大きな変化が起きたとしか思はれない。

 管見によれば、安倍首相の中で起きた大きな変化とは、「愛国心」教育を待望する愚民保守層がアッと驚くやうな変化である。

 安倍首相が目指す教育は「日本の歴史と伝統の尊重」を重視する教育ではもはやない。今、安倍首相が目指してゐるのは「グローバル教育」だ。国境を越えた地球市民意識を涵養するための「グローバル教育」。

 (この項続く)
■安倍自民党、教育政策の最優先課題は小学校低学年までの英語必修化


 2年前の衆議院選挙の時には自民党の公約に掲げられてゐた「日本の歴史と伝統の尊重」といふ文言が、今衆議院選挙の自民党の公約から消えてしまつたのはなぜか?

 今回の自民党公約の最大の特徴といへば、教育政策の大幅格下げといふことになる。

 2年前の自民党公約では、教育政策は「経済再生」の次ぐ2番目のテーマとして「教育再生」の大項目が立てられてゐたのに、今回の公約では「経済再生・財政再建」「地方創生・女性活躍推進」のあとの「暮らしの安全・安心、教育再生」といふ項目中の一コマに格下げされ、<出産・子育てを応援する社会を>だの<教暮らしの安全を>だの<地球環境への貢献を>だのと同列で、<教育再生の実行とスポーツの振興を〉といふ小項目が立てられてゐるにすぎない。

 教育政策の大幅格下げもさることながら、問題なのはその内容だ。

 下に掲げたのが<教育再生の実行とスポーツの振興を>の全文である


<教育再生の実行とスポーツの振興を>

●教育投資の充実を図り、家庭の経済状況や発達の状況等にかかわらず、子供等が質の高い教育を受けることができる社会の実現を目指します。
●希望する全ての子供に幼児教育の機会を保障するため、財源を確保しつつ、幼児教育の無償化に取り組みます。

●学習指導要領の改訂に着手し、小学校英語教育の早期化、高校の日本史必修化、特別の教科「道徳」、新科目「公共」の設置、日本の領土に関する記述を充実させるとともに、新しい教科書検定基準に基づく教科書検定を進めます。

●教員と多様な専門性を持つ地域のスタッフが一体となって学校改革を進める「チーム学校」づくりを進めるため、教育現場の体制の充実を図り、開かれた学校を核として地域力を強化します。
教育行政の責任体制の明確化等を行い、いじめ問題に的確に対応できる体制を整えるとともに、道徳を「特別の教科」として位置づけ、道徳教育を充実します。

●小中高を通じた英語教育の強化、「スーパーグローバルハイスクール」や「スーパーグローバル大学」の整備、国際バカロレア認定校の大幅増を進めます。

●自治体との連携強化等による土曜日の教育活動の充実・推進を図り、小中高あわせて1万2千校での実施を目指します。
一体型の放課後児童クラブと放課後子供教室を1万ヶ所整備する等、「放課後子ども総合プラン」を着実に推進します。

●幼児教育の無償化、高校生等奨学給付金、経済的に修学困難な専門学校生への支援、大学等奨学金事業の充実等、子供の貧困対策を、財源を確保しつつ推進します。

●学校においてタブレットPCや電子黒板、無線LAN等のICT環境の整備を進めるとともに、情報モラル教育や離島・過疎地での遠隔教育を推進します。
●小中一貫教育や高校の早期卒業の制度化、フリースクール等多様な教育機会の確保と支援方策の充実、夜間中学の設置促進等、教育制度の柔軟化を図ります。

●地方創生と人口減少化対策に資するため、国立大学運営費交付金や私学助成等により、三大都市圏への大学生の一極集中を是正し、地域の発展に係る積極的な取組みを支援します。

●国立大学運営費交付金や施設整備費補助金、私学助成等を安定的に確保し、改革を進める大学及び高等専門学校を重点的に支援します。

●「専門実践教育訓練」の指定対象の拡大を図るとともに、産業界のニーズを踏まえた実践的な教育プログラムを提供する大学・専修学校等を支援します。

●大学奨学金事業における「有利子から無利子へ」の流れを加速し、返還月額が卒業後の所得に連動する「所得連動返還型奨学金制度」の導入を図ります。

●高等学校基礎学力テスト(仮称)や大学入学希望者学力評価テスト(仮称)等、高等学校教育、大学教育等を接続する大学入学者選抜を抜本的・一体的に改革します。

●大学等における保育環境の整備、研究と出産・育児・介護等との両立や研究力の向上に向けた女性研究者の支援を図ります。

●障害のある子供たちのため、教職員の専門性向上、通級による指導の充実、拡大教科書等の普及・充実、学校施設のバリアフリー化等の必要な教育条件を整備します。

●官民の協働による留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」により、日本人留学生の海外留学や外国人留学生の受け入れを2020年までに倍増します。

●競技力の向上を進めるとともに、スポーツ庁の創設等により、スポーツを通じた健康増進や地域活性化を推進し「スポーツ立国」を実現します。》

 冒頭にでてくる次の文章が自民党教育政策の総論にあたるものらしい。

《教育投資の充実を図り、家庭の経済状況や発達の状況等にかかわらず、子供等が質の高い教育を受けることができる社会の実現を目指します。》

 内容空疎の見本みたいな文章で、こんなあたりさはりのない教育公約なら、民主党の公約でも共産党の公約でも通用しさうである。
 
 2年前の衆院選で、《日本の将来を担う子供たちは、国の一番の宝です。自民党は、世界トップレベルの学力、規範意識、そして歴史や文化を尊重する態度を育むために「教育再生」を実行します》と高らかに宣言した自民党公約との落差は尋常ではない。

 自民党は教育政策を根本的に変更したのだらうか?

 さう思つて、公約を仔細に読むと、旧来からの自民党らしさを残した文言がチョロつと出てくる。《高校の日本史必修化、特別の教科「道徳」、新科目「公共」の設置、日本の領土に関する記述を充実させるとともに、新しい教科書検定基準に基づく教科書検定を進めます》といふのがそれだ(3項目)。

 愚民保守ならこの部分だけ読んで、「やつぱり自民党は保守精神を忘れてゐなかつたんだ」と喜ぶかもしれない。
 
 冗談ぢやない。だからお前たちはアホなのだ。
 
 よく読んでみよ。このくだりの前に出てくる文言を。

 《小学校英語教育の早期化》とあるではないか。

 そして英語教育については、次のやうにブレイクダウンして説明されるのだ。

《小中高を通じた英語教育の強化、「スーパーグローバルハイスクール」や「スーパーグローバル大学」の整備、国際バカロレア認定校の大幅増を進めます。》

 この自民党教育公約の正しい読み方、それは、安倍自民党は小学校低学年までの英語必修化を教育政策の最優先課題とすると読むのだ。

 (この項続く)


■自民党衆院選公約から消えてしまつた「日本の歴史と伝統の尊重」


 今の安倍自民党内閣の正体を知るには、今回の衆議院選挙と2年前の衆議院選挙における自民党の公約を読み比べてみるのが手つ取り早い。そのあまりの違ひに驚くばかりである。

 今回衆院選の自民党公約で強調されるのは次のやうなフレーズだ。

《日本の「稼ぐ力」を取り戻す》
《外国人人材が日本で活躍しやすい環境の整備》
《女性が輝く社会の実現》
《ローカル・アベノミクスの推進》

 ほとんど「日本再興戦略改訂版」の焼き直しみたいなものだ。

「日本再興戦略」なんていつても、有権者の99%は読んだこともなければその存在さへ知らないだらうが、アベノミクス第三の矢である「成長戦略」を検討してゐる政府の産業競争力会議がとりまとめた文書のことだ。

 昨年6月に「日本再興戦略」が作成され、ことし6月に「日本再興戦略改訂版2014」が発表されたが、この改訂版の内容たるやすさまじいものだ。

 グローバル化に対応するために、日本のあらゆる産業・社会体制を見直してゆくといふのが「成長戦略」の骨格で、要するに、「郵政省をぶつ壊せ」と叫んだあの小泉流構造改革を日本の全産業・全社会体制規模で引き起こすといふ遠大な構想なのだ。

 ヒト・カネ・モノが国境を越えて飛び交へるやうにする。そのためには外国人労働者もどんどん日本で働けるように規制を撤廃しなければならない。かうしたグローバル化のために国内の規制を取つ払つゆくことを産業競争力会議では「内なるグローバル化」と称してゐる。

 アベノミクス第三の矢「成長戦略」を単なる経済政策と思つてゐる選挙民はおめでたすぎる。

 では次に、2年前の衆議院選挙における自民党の公約を読んでみよう。平成24年12月の衆議院選挙は、同年9月の自民党総裁選挙で勝つた安倍氏が野党自民党の党首として臨んだ選挙である。

 この時の自民党公約を読んでみると、次のやうな文言が存在したことに気がつく。

《「教育を取り戻す」
・「人づくりは国づくり」。日本の将来を担う子供たちは、国の一番の宝です。自民党は、世界トップレベルの学力、規範意識、そして歴史や文化を尊重する態度を育むために「教育再生」を実行します。
・子供たちが日本の伝統文化に誇りを持てる内容の教科書で学べるよう、教科書検定基準を抜本的に改善し、あわせて近隣諸国条項も見直します。》

 ここに出てくる日本の歴史や文化の尊重といふ文言は、明らかにそれまでの自民党の主張にも、また安倍氏のそれまでの主張にも沿つたものだつた。

 これは公約の「教育再生」といふ項目の冒頭に掲げられた文章で、「教育再生」の項は「経済再生」の次に位置づけられ、当時の安倍自民党にとつて教育は重要なテーマだつたことが分かる。

  それでは、今回の衆院選の自民党公約で、教育に関するくだりを読んでみよう。

 アレ、をかしいな。ない。見当たらない。なにが見当たらないつて? 「日本の歴史や文化の尊重」といふ文言がないのだ。自民党の公約から、「日本の歴史や文化の尊重」が消えてしまつた! 

 これは一体なにを物語るのか?

 (この項続く)
●坊ちゃん保守総理のなれの果て


 安倍首相は「保守政治家」を自称してゐる。著書の『美しい国へ』(実はこの本、ゴーストライターがゐるらしいんだけれど)にも、自分のことを《「保守主義」、さらにいえば「開かれた保守主義」がわたしの立場である》と説明がある。

 自分の政治的意見、政治的立場を「保守」と考へる多くの国民も、安倍首相のことを保守政治家と考へてゐるはずだ。安倍首相は憲法改正を唱へているし、集団的自衛権の見直しにも着手したんだし、反日の中国や韓国に対しても少なくとも民主党政権よりは毅然とした態度をとつているし・・・・・。今、安倍内閣の支持率がジリジリと下がつてゐるけれど、安倍首相を「保守政治家」と信じて疑はない自称保守層が、安倍政権のかなりコアな支持層を形成してゐるのは間違ひないだらう。

 これに対して、「安倍首相つて、ホントに保守政治家なの?」といふ疑問を抱く人々も少なからず存在する。例へば「新潮45」8月号は、《安倍晋三は「偽装保守」である》といふ記事を載せてゐる。三橋貴明、適菜収ら3氏の鼎談で、安倍晋三は憲法改正とかいつてゐるけど、やつてることは、外国人労働者の流入促進だとか、「女性が輝く日本」とかいつて主婦を低賃金で働かせる政策の推進だとか、こんなことばかり主張する総理大臣の一体どこが「保守政治家」なのだ? 安倍総理は保守ではない、ただの親米、親米の「偽装保守」ではないかと斬つて捨ててゐる。

 御当人が自分のことを保守だと考へてゐるから、本当に保守だとは限らない。反日中韓のことしか興味がなく、中国や韓国への罵声をネットに書き込むことしか能のない所謂ネット右翼は、自分たちは保守と思つてゐるのかもしれないが、あんなのは保守でもなんでもない。安倍首相が自分を保守と考へてゐるなら、それは、ネット右翼が自分たちを保守と勘違ひしてゐるのと同じレベルの錯覚にすぎない。

 『美しい国へ』を読み直してみると、安倍さんの政治観といふのは、素朴な、中学生並の理解で、なるほど保守思想家や保守政治家の本など読んで影響を受けたなんて話は一切出てこないのもうなづける(書名がたつた一個所だけ出てくるが、それは『ジャパン・アズ・ナンバーワン』)。

 第二次安倍政権発足以来の安倍首相の言行をみてゐると、坊ちゃん保守がわずかにとどめてゐた保守のメッキさへ剥げてしまつたといふ気がする。政権維持のために株価を釣り上げることに血道を上げてゐるうちに、頭の中がだんだん株屋的になつてきて、保守のメッキがはげたことさへ気がつかない。といふより、そんなことはもう構つちやゐられないといつた風情。

 その坊ちゃん保守の成れの果てが、この選挙後に発足させるのが安倍新内閣といふわけで、戦後史上最悪の売国内閣にならなければ幸ひである。

 




 
プロフィール

tensei211

Author:tensei211
ちば・てんせい。ジャーナリスト、政治評論家。フェミニズム論、天皇論を中心に執筆活動を展開してゐる。

北海道芦別市生まれ。千葉県在住。

フェミニズム論をまとめた著作として、『男と女の戦争―反フェミニズム入門』(展転社)など。フェミニズム関係の共著に『男女平等バカ』(宝島社)、『夫婦別姓大論破』(羊泉社)などがある。

執筆には、正仮名遣ひ(歴史的仮名遣ひ)を用ゐる。

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