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●「戦後70年談話」などやめてしまへ(3)

 愚民保守向けの知能テスト



 私が愚民保守向けの知能テストと呼んでゐるものがある。それは次のやうなテストだ。

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 次に上げるふたつの文章は、我が国が戦つた昭和の戦争について、日本の首相が表明した所感です。(A)と(B)についてそれぞれ首相名を応へて下さい。 

(A)我が国は、かつて植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。こうした歴史の事実を謙虚に受け止め、改めて痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明するとともに、先の大戦における内外のすべての犠牲者に謹んで哀悼の意を表します。 

(B)わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に過ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。また、この歴史がもたらした内外すべての犠牲者に深い哀悼の念を捧げます。


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「ほとんど同じじやないか」
「両方とも村山富市だろ」

 愚民保守たちから返つてくる答へはこんなものだらう。

 正解は、
(A)が小泉純一郎
(B)が村山富市
 である。

(A)は小泉首相が平成17年8月15日に出した戦後60年の首相談話。
(B)が村山首相が平成7年8月15日に出した戦後50年の首相談話。いはゆる村山談話。

 改めて小泉談話を読み返してみると、日本断罪史観丸出しの村山談話を恥ずかしげもなくなぞつたものだと感心するほどである。

 タカ派首相といはれた小泉純一郎が村山談話を引き写したやうな小泉談話を出したのはなぜか? その理由と背景を分析することほど、現安倍政権下の政治状況を分析する上に有益なことはない。

 
 




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●「戦後70年談話」などやめてしまへ(2)
 
 日本政府の「植民地支配と侵略」見解を定着させた
 3大極悪総理は村山富市、小泉純一郎、安倍晋三である

 
 昭和の戦争は「植民地支配と侵略」だつたと言明した3人の総理大臣を、私は3大極悪総理と呼んでゐる。3大極悪総理とは村山富市、小泉純一郎、安倍晋三の3人である。

 日本侵略史観に塗りつぶされた戦後50年の「村山談話」(平成7年)を出した村山富市が万死に値する極悪総理であることはいふをまたない。

 しかし、村山富市が「村山談話」を出しただけなら、日本政府による「植民地支配と侵略」見解はこれほどまでに「定着」することはなかつたらう。「村山談話」は自社連立政権で社会党の村山首相が官邸スタッフと極秘裏につくりあげた文書で、自民党の大半の議員はその内容さへ知らされてゐなかつた。よつて、村山談話は無効―と押し通せばよかつた。

 ところが、村山内閣以降の自民党首相たちはそのやうなことを言はなかつた。昭和の戦争について問ひただされると、彼らは「先の大戦に関する政府の見解は村山談話の通りであります」と小さくつぶやくのが例になつた。本音はさう思つてゐなくても、村山談話と違つたことを言ひ出せば事が紛糾するのが目に見えてゐるので、面倒だから「村山談話の通り」と答へておくといふ事なかれ主義が支配した。

 自民党の首相が「先の大戦に関する見解は村山談話の通りであります」と小さくつぶやいてゐるうちはまだよかつたが、そのうちに、日本はアジアを植民地支配し侵略したとデカい声で叫び始める自民党首相が現はれた。小泉純一郎である。

 

 


 


 
●「戦後70年談話」などやめてしまへ (1)
 有識者会議に「総理談話」を議論させる愚劣



 安倍総理がこの夏に出す戦後70年談話を検討する有識者会議を政府が発足させるのだといふ。

 不思議な話である。総理大臣談話といふものは、文字通り、総理大臣の名前で出す談話である。総理大臣談話は憲法や法律に根拠をおくものではないから、国会の承認を得る必要もなく、閣議決定の必要もない。

 戦後50年の村山首相談話と戦後60年の小泉首相談話は閣議決定されてゐるけれども、村山談話の場合は自社連立政権全体の合意といふ権威づけのために閣議決定の形式をとつたのであり、内容・形式とも村山談話を踏襲して閣議決定されたのが小泉談話だつた。

 要するに、総理大臣談話は閣議決定さへも不要なのだから、総理大臣が自分の頭で考へて、その見解を国民に表明すればよい。それだけの話である。

 それを安倍首相は、自分の名前で出す談話について、有識者会議なるものを立ち上げて、談話の内容について議論させる方法を選択した。

 有識者会議で談話の中身を「大いに議論してもらひたい」と安倍首相は言つてゐるから、今月末に発足する有識者会議では、戦後70年総理談話に「植民地支配と侵略」などの文言を入れるかどうかをめぐつて喧々諤々の議論が展開されることだらう。想像するだけでも、愚劣な光景である。

(この項続く)
●安倍首相「名ばかり外交」の代償(3) 

 危機管理能力ゼロの安倍官邸
 イスラム国人質殺害事件で何の役にもたたなかつた「日本版NSC」


 フランスでシャルリー・エブド襲撃テロ事件が起きた1月7日、総理官邸の筋向いの内閣府別館にある国家安全保障局には外務省、防衛省、警察庁などの担当者が集まり、情報の収集と分析にあたつた。

 政府の外交・安全保障政策の司令塔といふ触れ込みで一昨年発足した国家安全保障会議(日本版NSC)。国家安全保障局は国家安全保障会議の事務局で、それまで各省庁に分散してゐた外交・安保、危機管理などの情報を一元的に集約・分析するのが仕事だ。

 国家安全保障会議には4大臣会合、9大臣会合、緊急事態大臣会合といふ3種類の大臣会合があり、テロや領海侵犯などの緊急事態には、必要と認める大臣を招集して緊急事態大臣会合を開き、迅速・適切な対処措置を総理に建議する―とまあ、一応さういふ仕組みになつてゐる。

 シャルリー・エブド襲撃テロ事件が発生した際も、国家安全保障局が情報を収集分析して、何らかの情報が官邸首脳部にもたらされたと思はれる。しかし、国家安全保障局がどんな情報を官邸に上げたにせよ、結果的には何の役にもたたなかつた。なぜなら、肝心の安倍首相が、「こんな時期に中東に行けるオレはツイてゐる」と、中東情勢の緊迫化を逆に歓迎してゐたのだから。

 日本版NSCはいつてみれば、日本最高のインテリジェンス機関である。それなのに、今回のイスラム国による日本人人質殺害事件ではさつぱり機能した形跡がない。

 2月5日の参議院予算委員会で、民主党議員が政府に、イスラム国の日本人人質殺害予告があつた1月20日より以前に、国家安全保障会議で中東情勢について議論が行はれたことがあるか、と質問した。

 それに対して、国家安全保障局の内閣審議官が、1月9日に国家安全保障会議が総理官邸で開催された。この会議で、中東情勢についてISIL(イスラム国)が脅威になつてゐるといふ認識のもとに協議が行はれたと答弁した。協議内容について民主党議員が質したが、地域情勢に関する議論の詳細については差し控へさせていただく、と政府側が答弁。民主党議員の再三の追及にも、審議官は同じ答弁を繰り返したため審議はたびたび中断したが、結局、政府側は中東情勢の議論の詳細は差し控へさせていただく、で押し切つてしまつた。

 シャルリー・エブド襲撃テロ事件が起きたのが1月7日。国家安全保障会議が開催された1月9日と言へば、その2日後だ。

 たしかに国家安全保障会議は1月9日に後開催されてゐるが、この会議で協議されたといふイスラム国の脅威なるものが、安倍首相の心中になんの影響も与へなかつらしいことは、翌10日からの連休に、「中東歴訪と通常国会に向けて英気を養ふ」と、箱根のゴルフ場で世耕官房副長官らとゴルフに興じ、母親らと食事をしたりして、山梨の別荘でくつろいでゐたことからもうかがへる。

 安倍首相の中東訪問の予定が決まつたのは、12月14日の衆議院選挙投開票日の直後である。16日に外務省の斎木次官、杉山外務審議官、上村中東局長らが官邸を訪れてゐて、この時1月の中東訪問について安倍首相の了承を得たと思はれる。第三次安倍内閣は12月24日に発足するが、その前から、第三次安倍内閣の最初の外遊として中東歴訪が決まつたといふ報道記事が流れ始める。

 中東訪問を10日後に控へた1月6日、おそらく中東訪問の最終調整だらう、斎木次官、上村中東局長ら外務省幹部が官邸を訪れてゐる。ここに至つて、安倍首相には、総選挙で大勝した余勢をかつて中東に飛び、26億ドルの支援(うち2億ドルが対イスラム国関連)をブチあげる世界の指導者といふイメージが確固たるものになつたはずである。翌日発生したフランスの週刊紙テロ事件を安倍首相が「奇貨」と受けとめたといふのも驚くにあたらない。
 

●安倍首相「名ばかり外交」の代償(2)

 「湯川さんと後藤さんの救出要請も中東歴訪の目的の一つだった」
  安倍官邸アリバイ工作の先棒を担ぐ読売新聞



 イスラム国による後藤健二氏殺害関連の報道に埋め尽くされた2月2日の各紙朝刊の記事の中で、私が最も注目したのは読売新聞の次の記事だ。

《「2人を助けてほしい」

 安倍首相は中東訪問中の1月18日、ヨルダンのアブドラ国王と会談した際、イスラム国に拘束されていた後藤健二さんと湯川遥菜さんの解放に向けた協力を改めて求め、国王に頭を下げた。

 政府は湯川さんが失踪した昨夏、ヨルダンの首都アンマンに対策本部を設置。ヨルダン政府の情報機関などと緊密な連携体制を敷いていた。ヨルダンに立ち寄り、改めて2人の救出を要請することも、中東歴訪の目的の一つだった。》

 この記事によると、イスラム国に拘束された後藤健二さんと湯川遥菜さんの救出を要請することも安倍首相の中東歴訪の目的の一つで、ヨルダンのアブドラ国王に解放に向けた協力を改めて求めて頭を下げたとある。

 しかし、首相中東歴訪に関する事前の外務省の説明でも菅官房長官の記者会見でも、後藤さんと湯川さんへの言及などまつたくなく、ヨルダン訪問後に外務省が公開したアブドラ国王との会談詳報にも両氏に関する話は見当たらない。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/me_a/me1/jo/page3_001064.html
 ならば、事態の性質を慮つて、政府が中東歴訪の目的の一つである両氏解放問題をマスコミに伏せたといふことになる。たしかに、後藤氏に関しては妻に身代金要求のメールが届いた12月初旬以降、日本政府が仲介者を立ててイスラム国側と交渉を続けて、相手は後藤さんの名前を出したら殺害すると脅してゐたのだから(対イスラム国との交渉の事実を日本政府は未だに公表してゐない)、安倍首相の中東歴訪にあたつて両氏の解放問題を極秘事項にしたと考へられないこともない。

 読売の記事は続けてかう書いてゐる。

《政府内には、邦人拘束事案で不測の事態が起こるのではと懸念する声もあったが、官邸は「行かなければテロに屈したことになるし、今回行かなくても別の機会が狙われるだけだ」(首相周辺)として、中東訪問に踏み切ったという。》

 これが本当なら、邦人拘束事案で不測の事態が起こる懸念もあつたが、安倍首相は「行かなければテロに屈したことになる」と、両氏救出に向けた極秘使命を帯び悲愴な決意を抱いて中東に旅立つたわけだ。

 ところが安倍首相の心中が、テロに屈するとか屈しないとか、そんなレベルの話でなかつたことは、週刊ポスト(2月6日号)が暴露した通りである。

《1月7日にフランスで週刊紙銃撃テロ事件が起きると、外務省内から今回の中東訪問は「タイミングが悪い」という声が上がった。

 ところが、安倍首相の反応が逆だった。官邸関係者がこんな重大証言をした。

「総理は『フランスのテロ事件でイスラム国がクローズアップされている時に、ちょうど中東に行けるのだからオレはツイている』とうれしそうに語っていた。『世界が安倍を頼りにしているということじゃないか』ともいっていた」

 周囲はその言葉を聞いてさすがに異様に感じたという》

 危機意識まるでゼロ。拘束されてゐる二人への顧慮どころか、戦乱渦巻く中東情勢に対する基本認識さへ持ち合はせない無知無能な国家指導者がここにゐる。

 安倍首相の頭がどこか常人の感覚とズレてゐることを官邸側近も気がついてゐる。気がついてゐるけれど誰も何もいへない。これが悲劇の発端である。

 安倍官邸はこれから、湯川氏と後藤氏が拘束されて以降、政府は救出に向けて懸命の活動を続けてきたといふ釈明を始めることだらう。今回の読売の記事は、安倍官邸のアリバイ工作の始まりであり、安倍政権PR機関紙がそのお先棒を担いだと考へると分かりやすい。






●安倍首相「名ばかり外交」の代償 (1)

 世界中の笑ひ者になるところだつた「地球儀を俯瞰する外交」シーンの演出



 安倍首相は昨年9月にスリランカとバングラデシュを訪問してゐる。

 スリランカ、バングラデシ訪問の半月ほど前、時事通信は《安倍首相外遊、歴代最多へ=来月の南アジア訪問で達成-50カ国目は中国照準》 といふ見出しで、次のやうな記事を配信した。

《安倍晋三首相は9月6日からスリランカとバングラデシュを訪問する方針だ。これを実現すれば第2次政権下で訪れた外国の数は49カ国に上り、歴代首相が一度の在任期間で訪れた数として最多を更新する。懸案の中国訪問は、11月に北京で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議への出席で実現する見通しで、50カ国目の外遊先として照準を合わせている。

 首相は先の中南米歴訪で、就任後の訪問先を計47カ国に積み上げた。日中首脳会談の開催をにらむ11月の訪中を重視しており、周辺は「中国を50カ国目にするため、訪問国をわざわざ、あと2カ国入れろと指示した」と冗談めかして語った。

 積極的な首脳外交を展開する首相は、米欧ロシアなど主要8カ国(G8)と東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の全てを訪れ、アフリカ、南米、豪州にも足を運んだ。未訪問の大陸は南極大陸だけで、まさに「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を実践している。》


11月には北京でAPEC首脳会議の開催が予定されてゐた。そこで、「中国を50カ国目にするため、訪問国をわざわざ、あと2カ国入れろと指示した」と首相側近が説明したといふのがこの記事の肝。「冗談めかして」と書いてゐるが、中国を50カ国目にするためにあと2カ国入れろと官邸から外務省に指示が飛んだのはおそらく事実だらう。時事通信には、安倍首相とメシを食ふのを自慢にしてゐるオトモダチ記者(解説委員)もゐることだし。

 それにしても、訪問国の数合せのために選ばれたスリランカとバングラデシュこそいい迷惑である。

 この記事よると、安倍首相は「地球儀を俯瞰する外交」を実践してゐるといふ。

 安倍首相の今回の中東訪問では当初、安倍首相の「地球儀を俯瞰する外交」をまさに地でゆく場面がお膳立てされてゐたとされる。

 安倍首相は、ヨルダン川を跨ぐシェイク・フセイン橋を渡つてヨルダンからイスラエルに入り、橋の上から一帯を俯瞰する―安倍首相の中東歴訪ではこんなシーンが準備されてゐたさうな。

 シェイク・フセイン橋は日本のODAによつて建設された橋である。こんな絵になるシーンはない。各国のメディアが映像を世界中に流してくれるだらう。これこそ安倍首相が唱へる「地球儀を俯瞰する外交」の実践だ! と少年官邸団と安倍御用メディアははしやぎまくつてゐた。

 もし安倍首相がシェイク・フセイン橋を渡る儀式が実現して、 安倍首相が「これこそ私が主唱する地球儀を俯瞰する外交の実践です」なんて胸を張つた映像が世界中に流され、その後にイスラム国による湯川・後藤両氏の身代金要求事件が勃発したりしてゐたら、安倍首相は間違ひなく世界中に恥をさらしたはずである。



 (この項続く)

 

 







プロフィール

tensei211

Author:tensei211
ちば・てんせい。ジャーナリスト、政治評論家。フェミニズム論、天皇論を中心に執筆活動を展開してゐる。

北海道芦別市生まれ。千葉県在住。

フェミニズム論をまとめた著作として、『男と女の戦争―反フェミニズム入門』(展転社)など。フェミニズム関係の共著に『男女平等バカ』(宝島社)、『夫婦別姓大論破』(羊泉社)などがある。

執筆には、正仮名遣ひ(歴史的仮名遣ひ)を用ゐる。

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