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■21世紀に讀む三島由紀夫


 天皇弑逆と刺青
 昭和45年の三島由紀夫「年譜」を讀む





 11月25日は、ある世代以上の日本人にとつて特別な意味を持つ日である。私ももちろんその中に含まれる。

 昭和45年11月25日に起きたあの事件を語る人は必ず、事件を知つた時、自分がどこで何をしてゐたかを語る。

 私は東京の中央線の御茶ノ水駅のホームにゐた。大学1年生で、授業を終へて下宿への帰路、駅の階段からホームに降り立つた時、サラリーマンたちが新聞をむさぼるやうに読んでゐた。
 
 一人の男に近づき、新聞の見出しに目を凝らした。「三島由紀夫」「自衛隊乱入」「割腹」「自決」―。

 「乱入」といふ聞きなれない言葉と「割腹」「自決」の因果関係がよくわからず、頭は混乱した。三島由紀夫が死んだらしいことだけは理解できた。

 そのあと、夢遊病者のやうになつて下宿にたどり着いた。
 
 次の日、駅の売店で朝刊をすべて買ひ求め、スクラップブックを作つた。ここから私の三島由紀夫遍歴が始まつた。

 あれから少なからぬ三島由紀夫の評伝や回顧録の類ひに目を通してきたが、三島由紀夫の軌跡を考へる時、私が最近もつぱらひもとくのは「年譜」である。

 「決定版三島由紀夫全集」第42巻に収録されてゐる「年譜」には、日付を追つて文筆その他の活動、私的出来事等が簡潔に記されてゐる。(膨大な作品目録は本巻に別に収録)

 三島由紀夫の評伝の類ひは概して評者の思ひ入れが強すぎて、うつかりすると評者の迷路につき合はされるだけに終はる。冗冗しい評伝などより、「年譜」の簡潔な記述をたどる方が見えてくるものが多い。

 さて今日は、「年譜」の昭和45年のところをもう一度読んでみることにしよう。
 
 昭和45年

《1月14日(水) 前年暮に新居に移った村松剛宅で誕生日を迎える。NHKテレビの「生活の知恵」(午後7時30分~8時)に八千草薫、島田一男らとともに出演。「男らしさ・女らしさ」について。21日も。》

 決起の年。1月あたりはまだこんな呑気なテレビ出演にも応じてゐたのだ。

《1月中旬 「楯の会は宝塚の兵隊である」と発言した防衛庁長官・中曾根康弘から釈明の電話があったことを、山本舜勝に電話で告げる。》 

 中曾根康弘のことはあとにも出てくる。

《1月末 韓国空軍の元少将と山本舜勝を自宅に招く。元少将の辞去後、やりますか、と言う三島に対し、やるなら私を斬ってからにして下さい、と山本は返答する。》

 山本舜勝は旧軍あがりの元陸将補。一時は三島が最も信頼した人物だが、最終的に三島は山本を見限る。「韓国空軍の元少将」が出てくるが、三島は朴正熙政権下の韓国に渡り、韓国軍関係者とも接触があつた。

《2月10日(火)頃 村松剛に電話で、木村俊夫官房副長官を通じて佐藤栄作首相から楯の会を支援する(毎月100万円)という申し出があったことを伝える。》

 佐藤首相は中曾根防衛庁長官とともに、事件の直後、三島を狂人扱ひしたことでよく知られてゐる。

《4月27日(月) 中曾根康弘主催の政治団体・山王経済研究会例会で講演(「現代日本の思想と行動」。》

 三島は中曾根の釈明を容れたらしく、中曾根の政治団体で講演してゐる。

《小高根二郎「蓮田善明とその死」を携えて山本舜勝宅を訪問。私の今日はこの本によって決まりました、と言う。》

 先般、「花さかりの森」を含む三島初期の作品の原稿が、蓮田善明の遺族宅から発見されたといふ報道があつた。

《6月13日(土) ホテルオークラ821号室に、三島、森田必勝、小賀正義、小川正洋が集合。三島は、自衛隊は期待できないから自分たちだけで実行する、その方法として、自衛隊の弾薬庫を占拠してこれを爆破すると脅すか、東部方面総監を拘束するかして自衛隊員を集合させ、自分たちの主張はを訴え、決起する者があれば、ともに国会を占拠して憲法改正を議決させることを提案。討議の結果、総監を拘束する方策を取る。さらに三島は、11月の楯の会2周年記念パレードを総監に観閲してもらい、その際、総監拘束を実行しようと提案。》   

 決起の方法は煮詰まつてきたが、この時点では、国会占拠といふ計画も三島の頭にあつた。

 ちなみに、「年譜」にある楯の会関係の記述の多くは、裁判の検察冒頭陳述に拠つてゐる。

《7月13日(月) 吉兆で保利茂官房長官の招きによる会。村松剛、木村俊夫官房副長官、安岡正篤同席。この頃、三島は保利と数回懇談し、防衛に関する意見を述べた。(「武士道と軍国主義」「正規軍と不正規軍」)。保利が三島に接触したのは自民党内に翌年の東京都知事選に三島を推す動きがあることを踏まえ、三島の考えを内々に確かめるため。》

 三島は政治家になる気は毛頭なかつた。ただ、自民党政治家の中でも保利茂にだけは信を置いてゐた。この時の東京都知事は美濃部亮吉だつた。

《9月15日(火) 三島、森田必勝、小賀正義、小川正洋、古賀浩靖の5名は、千葉県野田市の興風館で行われた忍者大会を見物し、帰途、両国のイノシシ料理店ももんじ屋で会食するなどして同志的結束を固める。》

 忍者大会とはまるで見世物みたいだが、、正式には「戸隠流忍法演武会」といつた。三島は戸隠流忍法を日本民族の誇る忍法武道と高く評価し、自分でも戸隠流忍法を習ひたいといふ希望を持つてゐた。(板坂剛「極説三島由紀夫」)

《9月 銀座の第二浜作に徳岡孝夫を招く。右と左の両方から金を貰った林房雄への批判や自衛隊への失望を語る。(以下略)》

 二十数年に及ぶ交友を続けてきて、「林房雄論」(近代文学評論の傑作といはれる)まで書いた林房雄への怒りは激しかつた、と徳岡は回想してゐる。

《10月7日(水)  「天人五衰」執筆のため後楽園を取材。事実上絶縁状態になっていた村松剛は、伊沢甲子麿に仲介を頼み、四谷の蔦屋で三島と会食。君は頭の中の攘夷をまず行う必要がある、と三島は村松に言う。(村松剛「三島由紀夫の世界」》

 村松剛の「三島由紀夫の世界」によると、この場面でのやりとりは次のやうなものだつた。

 ―ソウルでは、フランス語で講演をしたそうだね。
 ―どうしてそれを知っているの?
 ―ドナルド・キーンから聞いたんだよ。
 ―それよりも、「天人五衰」の最終章を書き上げたそうじゃないか。
 ―え、だれにきいた。
 ―「果たしていない約束」を読んで、驚いたんだよ。あの文章はただごとじゃないです。心配になって、こうした時間をつくってもらった・・・
 ―ふーん。きみにも日本語がわかるのか。フランス語しかわからないのかと思っていた。
 ―なんて失礼な。(伊沢)
 ―そのことばは撤回してほしい。
 ―きみは頭の中の攘夷を、まず行う必要がある。、

 家族ぐるみの付き合ひをしてきた無二の親友(と村松は思つてゐた)から放たれた侮蔑の言葉と,翌月の三島決起は村松をうちのめし、立ち直つて「三島由紀夫の世界」の筆をとるのに17年の歳月を要した。

《10月 磯田光一に、本当は宮中で天皇を殺したい、と言う。(磯田光一・島田雅彦「模造文化の時代」)また、この頃、浅草の刺青師(彫長)に刺青を彫ってくれるよう頼むが、断られる。》

 天皇弑逆と刺青。三島由紀夫のヤクザ映画愛好は有名だが、刺青は三島に似合ふのか似合はないのか。

《11月4日(水) 三島は中山正敏から最後の空手指導を受ける。陸上自衛隊富士学校滝ヶ原駐屯地に体験入隊(リフレッシャーコース)。6日まで。訓練終了後、三島らは御殿場館別館において、他の楯の会会員、自衛官らとひそかに別れを惜しむ。この期間中に、三島は川端康成宛に最後の手紙(万一の時は後のことをよろしく頼むとの文面)を出すが、川端は一読後焼却。》

 三島が後事を託す手紙を書いたのは川端康成のみである。晩年の三島は、川端のノーベル賞への執着を見て半ばこの恩人を軽蔑し、周辺には平気で酷評した(「よく生きてゐるよ」「あの人はもう作家とはいへない」等)とも伝へられるが、書簡の上では川端に対して終生礼節を保つた。

 11月に入つてからの日録は、楯の会の打合せの記事が続くが、その合間にも文学関係の用談、「三島由紀夫展」開催、パーティ出席、そして知人との面談(最期の別れ)等を目まぐるしくこなしてゐる。

 11月25日の日録には、2ページ半が費やされてゐる。

 この中で私が目をとめたのは次の記述だ

《警視庁は、東京牛込署内に「楯の会自衛隊侵入不法監禁割腹自殺事件特別捜査本部」を設置。》

 さうか、捜査本部の名前はこんなに長い名前だつたのか。 

「楯の会自衛隊侵入不法監禁割腹自殺事件特別捜査本部」

 捜査本部の名称を警察の隠語で「戒名」と呼ぶが、この戒名には三島の名前が入つてゐないことに今気がついた。






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■「トランプ大統領」におののく日本(6)


 トランプにあつさりコケにされた安倍首相
 「就任初日のTPP離脱」 を表明したトランプ




 大統領選後、通商政策については沈黙を守つてゐた次期米大統領トランプは21日、ビデオメッセージを発表し、就任初日に「TPPを脱退する」と宣言した。

 ペルーで開催されてゐたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)とTPP首脳会合の閉幕を待つてゐたかのやうなタイミングでのTPP離脱宣言だ。

 トランプがTPP首脳会合の前にTPP離脱宣言を控へたのは、任期中最後の国際会議となるAPECに出席したオバマ大統領へのせめてもの情けと思はれる。

 トランプ次期大統領のTPP脱退宣言によつて、TPPは事実上消滅した。

 トランプは、TPPの再交渉みたいなまだつらこしい交渉をするやうな男ではない。

 彼がこの日表明したやうに、米国の通商交渉は今後、二国間貿易協定に移行してゆくだらう。

 トランプ次期大統領のTPP脱退宣言で、またまた世界中に恥をさらしたのが安倍首相だ。

 「大統領選後のトランプと最初に会談したのが私です」と鼻高々でAPECに乗り込み、各国首脳から「トランプと何を話したのか」と質問攻めにあひ、「もてもて」(毎日新聞)だつた安倍首相。

 TPP参加国の間で、「トランプの説得 安倍首相に高まる期待」なんて絵空事を書いた新聞まであつた。

 安倍首相はペルーからアルゼンチンに移動し、ブエノスアイレスで記者会見。「TPPは米国抜きでは意味がない。米新政権の方針について、現段階で予断をもつてコメントすることは差し控へたい」

 ほとんどこの直後のことだ、トランプがビデオメッセージをYou Tubeで流したのは。

 「信頼できる指導者」と称賛してやまなかつた次期大統領トランプにあつさりコケにされた安倍首相の屈辱。
 
 安倍首相にとつて気の毒だつたのは、APECの直前に行はれたトランプ・安倍会談など、トランプのTPP離脱の決意を翻意させるどころか、トランプの考へ方に毛ほどの影響も与へなかつたことが世界中に知れ渡つてしまつたことだ。

 国民にTPP離脱を公約して大統領選挙に勝利したアメリカの次期大統領が、たつた一回会つただけの外国首脳に説得されて翻意するなんて考へる方がどうかしてゐる。
 
 安倍首相のお子様ランチ外交を真に受けて、「トランプの説得 安倍首相に高まる期待」などと書き飛ばす記者の幇間習性は憐れむに足る。

 彼の国では予備選から足掛け二年に及ぶ激烈な大統領選挙戦が展開されたといふのに、天下泰平に馴れた日本のお子様ランチ総理と彼をヨイショすることしか知らない新聞には、ドナルド・トランプといふ男の本性がいまだに皆目理解できなiいらしい。

 トランプが次期米大統領に就任すること自体の問題より、現実を見ようとしない日本の総理大臣とマスコミの習性の方こそ恐ろしい。



 
■「トランプ大統領」におののく日本(5)


 トランプ大統領の手玉にとられる日本のお坊ちゃん外交
 恭順の意を示した安倍首相に愛想ふりまいたトランプ





 ニューヨークで今月17日に開催されたトランプ・安倍会談なるものは、一種の興行みたいなものだな。

 大相撲の興行に例へれば、横綱同士の対戦なんかぢやなく、まあ横綱と幕尻力士の取り組みみたいなもんか。

 幕尻力士は横綱が初対戦相手に自分を選んでくれたことに感激しつつも、張り手でも食らはせられるのではないかとガチガチに緊張して土俵にあがつた。ところが張り手は飛んでこなくて、形だけでも相撲をとらせてくれた。

  横綱が幕尻を相手に本気で相撲をとる気がないことは、土俵に自分の付け人やらなにやらを一緒に上げたことからも明らかなのだが、幕尻力士は横綱と同じ土俵に上がれたと有頂天、「ボク、横綱と対戦したんだよ」と周囲に触れ回る・・・。

 まあ、それなりに面白い興行ではあつたけど。

 それにしても、トランプつて役者だね。

 日本の首相を金ぴかの自宅に呼びつけておいて、前日まで会談の詳細はマル秘。直前になつて通訳だけのサシの会談と通告しておきながら、会談の席には自分の方だけ長女イバンカと夫のクシュナー、閣僚候補のマイケル・フリンまでも伴つて現れるといふ無手勝流。

 通常の首脳会談なら「約束が違ふ」と、それだけで会談決裂となつてしまふところだが、非公式会談だし、そんなことに文句をいふ相手でないことは先刻承知。

 それでも、日本の総理大臣が大統領選からわずか一週間後にスッ飛んできた事情(ヒラリーへの肩入れ)を見透かした上で、安倍首相を持ち上げることを忘れないのがトランプだ。
 
 トランプは自分に従順な人間には実に優しい。

 安倍首相は日本からスッ飛んできてトランプに恭順の意を示したから、愛想よく接したのだ。
 
 トランプは単なる不動産王ではなく、マスコミの寵児でもあり、ニューヨーク社交界のスターでもあつた。

 ビジネス相手であれ誰であれ、トランプの人への接し方は融通無碍だ。

 人間の心理を熟知してゐて、相手が何を言へば喜ぶかを心得てゐる。

 相手の話にも耳を傾け、この男はどのやうに利用できるかと瞬時に思ひめぐらせる。

 ビジネス相手が弱みを見せると、すかさずそこを突き、高圧的な態度に出る。

 一旦敵と見定めた相手には容赦しない。

 これがトランプ流だ。

 会談後、日本側は安倍首相が会見し、プレスに写真を提供した。

 トランプ側はといへば、トランプ自身の会見はもとより、プレスへのブリーフィングも写真提供も一切なし。

 トランプに愛想を振りまかれた安倍首相がトランプを悪くいふわけはない。安倍首相の口を通じて語られるトランプの印象は、次期大統領の偉大なイメージをますます高めるだらう―こんなトランプ側の戦略は見事に成功した。

 会談の感激さめやらぬ安倍首相は、トランプをほめそやしたからである。

 トランプは、安倍首相が人畜無害で、育ちのいいだけの坊ちやん政治家であることを見抜いてゐる。

 日米関係で、かつて、ロン・ヤス会談といふのがあつた。

 レーガン大統領とは互ひにロン・ヤスと呼び合ふ仲だと世界に吹聴したのが中曽根首相で、レーガン大統領を自分の山荘に招いて囲炉裏を囲み、レーガン大統領との親密性を盛んに誇示したものだ。

 しかし、ロン・ヤスの間柄なんて、実は中曽根が吹聴したやうなものではなかつた。

 レーガンの元側近によると、レーガン大統領は中曽根首相との会談を終え、中曽根が部屋を出てゆくと、「あのジャップめ」と吐き捨てるやうにつぶやいた、とのことだ。

 トランプが安倍首相との会談後、「あのジャップ、単純だね」なんてつぶやいてゐないといふ保証はない。






■「トランプ大統領」におののく日本(4)


 錬金組織「クリントン財団」の宣伝に協力してゐた安倍首相
 お詫びの意を表明するためにトランプとの会談を大慌てで設定




安倍首相のヒラリー・クリントンへの傾斜ぶりを象徴するのは、二年前にニューヨークでヒラリーと行つた対談だらう。

 安倍首相は平成24年9月24日、ニューヨークのホテルで開催された「クリントン・グローバル・イニシアティブ国際会議」に出席、「女児・女性のための平等」なるイベントでヒラリーと対談した。

 ヒラリーとの対談で安倍首相が話したことはといへば

 《女性問題への取組みについてクリントンさんから激励の手紙をもらひ、私は女性問題への意欲をさらに固くしました》

 《私は日本で「女性が輝く社会」を実現する決意です》

 《女性の進出によつて企業は生産性が向上します》

 《世界各国の女性指導者らを招き、今月東京で開催した国際シンポジウム(女性版ダボス会議)は大きな成果をあげました》

 安倍首相がヒラリーに対して、私は日本で女性の社会進出のためにこんなに頑張つてゐます、と自慢げに語り、ヒラリーも「女性問題に関する安倍総理の強いリーダーシップを高く評価します」と安倍首相を持ち上げてみせる。対談といふより、イベントのお飾りのやうな趣向だつた。

 対談の詳細は、外務省ホームページに掲載されてゐるが、
http://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/hr_ha/page22_001574.html
これをみても、安倍首相とヒラリー・クリントンとの絆が日米同盟問題などではなく、フェミニズム問題だつたことがよく理解できる。

  ところで、安倍首相とヒラリーが対談した「クリントン・グローバル・イニシアティブ国際会議」とは一体どのやうな会議なのか?

  「クリントン・グローバル・イニシアティブ国際会議」(CGI)を主催してゐたのは実はあのクリントン財団なのだ。

  クリントン財団(Clinton Foundation)については今さら説明の要もあるまい。

  世界の貧困、環境、紛争、女性、マイノリティの救済問題等に取組むといふチャリティ組織を装ひつつ、世界中に金づるを求める錬金組織、これがクリントン財団の正体。

 財団への献金者には世界中の首脳などを紹介し、その国のビッグプロジェクトを受注できるやう取り計らう。こんな手口で、巨額の献金を集めてきたのがクリントン財団なのだ。

  クリントン財団は近年はヒラリーの大統領選挙に向けた対策本部の様相を呈してゐたが、米大統領中にも新たな疑惑が次々に浮上し、アメリカではクリントン財団はチャリティ詐欺組織といふ評価が定着してゐる。

 「クリントン・グローバル・イニシアティブ国際会議」は、クリントン財団の表の顔であるチャリティを宣伝するために毎年開催してきたイベントで、各国首脳らを招いては、クリントン財団の表の顔の宣伝に利用してきた。

 つまり、安倍首相もクリントン財団の宣伝に一役買はされたといふわけだ。

 トランプは大統領選挙中、「クリントン財団は腐敗の温床だ。私が大統領になつたら私用メールとクリントン財団の不正を暴く特別検察官を任命する」と連日クリントン財団問題に猛攻撃を加へた。

 トランプ陣営が大統領選キャンペーンの一環として作成したビデオ「Clinton Cash」には、クリントン財団の錬金術が生々しく描かれ、民主党支持層にも巨大な衝撃を与へたとされる。
https://www.clintonfoundation.org/clinton-global-initiative/meetings/annual-meetings/2014

 腐敗の温床としの正体が暴露される中、クリントン財団は8月、「クリントン・グローバル・イニシアティブ国際会議」(CGI) を今年限りで取りやめると発表した。

 安倍首相がトランプ次期大統領との会談を急いだのは、ほかでもない、大統領選挙中にヒラリーとだけ会談したことに加へ、CGIに参加してクリントン財団の宣伝に協力までしたことに、一刻も早くお詫びの意を示さなければならないといふ事情があつたのである。

 (この項続く)










■「トランプ大統領」におののく日本(3)

 「女性が輝く社会」をヒラリーに賞賛されて舞ひ上がつたフェミ総理
 ヒラリーからの手紙を得々とフェイスブックに掲載 





 米大統領さなかの9月19日にニューヨークでヒラリー・クリントンと会談した安倍首相は冒頭、こんな風にヒラリーに話しかけた。

 《私の政権が進めている「女性が輝く社会」の取組みを最初に支持して頂き感謝します。経済成長には女性の潜在力の解放が不可欠とのお考へに共感いたします》

 日本の新聞は、安倍・クリントン会談で日米同盟の強化で一致などと書いてゐたが、ヒラリーとの会談で安倍首相がはじめに持ち出したのは「女性が輝く社会」の話題だつたのだ。

 これに対してヒラリーも、安倍首相の進める女性のエンパワーメント政策や女性活躍促進政策を賞賛する言葉を返した。

 安倍首相がヒラリーに、「女性が輝く社会」の取組みを最初に支持して頂き感謝しますと述べたのは、次のやうな経緯があつたからだ。

 安倍首相が「女性が輝く社会」といふ口あたりのいいスローガンを掲げてフェミニズム路線を突つ走り始めた頃、ヒラリー・クリントンから一通の手紙が届いた。

 安倍首相の女性重視政策を支援するといふ内容で、

 「女性による貢献で日本経済が繁栄するといふ将来ビジョンを訴へてくれたことに感謝する」

 「私は首相のパートナーであることを誇りに思ふ。いかなる方法でも支援したい。前進せよ!」と締めくくられてゐた。

 安倍首相はこの手紙によほど感激したらしく、自分のフェイスブックに手紙の写真まで公開してかうつぶやいた。

https://www.facebook.com/photo.php?fbid=428151600641622&set=a.132334373556681.21871.100003403570846&type=1

 《 「Onward!(前進あるのみ!)」
 ヒラリー・クリントンさんからいただいたお手紙は、そんな力強い言葉で締め括られていました。
「女性が輝く社会をつくる」という私の考えを強く支持する、とわざわざお手紙を送ってくれたのです。
女性が輝けば、日本は、世界は、もっと輝く。
「前進あるのみ」です。》

 アメリカの超フェミニストから「Onward」(進め!)と命令されて喜色満面、「はい、進みます!」と命令に服す日本国総理。

  戦後レジームからの脱却どころか、やつぱりこの人、対米属国国家日本を象徴する総理大臣と位置づけるのが正しいやうに思ふ。

(この項続く)








■「トランプ大統領」におののく日本(2)


 大統領選さなかにヒラリーとだけ会談したボケ総理
 世界中に恥をさらしたトランプへの「当てつけ」会談




 アメリカ大統領選挙のさなかに、他国の指導者が民主共和両党候補者の一方とだけ会談するなんて、常識ではありえない。当たり前である。どちらが勝つか分からないからである。

 今回の米大統領選挙で、この常識破りの椿事を演じた頓馬な指導者がゐる。日本の安倍首相である。

 安倍首相は大統領選投票日が二か月後に迫つた9月19日、ニューヨークで民主党大統領候補ヒラリー・クリントンと会談した。

 安倍首相がヒラリーとの会談に臨んだ「思惑」と「意義」については、会談を報じた産経新聞の記事が実に親切に解説してくれてゐる。

http://www.sankei.com/politics/news/160920/plt1609200035-n1.html

 この産経記事によると、

《クリントン氏との個人的な“信頼関係”を見せつけることで、共和党候補のドナルド・トランプ氏への不信感をにじませた》

《安全保障問題で現実的な路線を取るとみられるクリントン氏とあえて会談することで、トランプ氏を牽制(けんせい)する狙いがあったようだ》

 安倍首相は、会談すればクリントンに「肩入れ」したとも受け取られかねないことを承知しつつ、クリントンとの個人的信頼関係を見せつけることで、トランプへの不信感を表明したといふことになる。

 つまり、クリントンとの会談はトランプへの「当てつけ」会談だつたわけだ。「ボクちやんたち、こんなに仲がいいんだよ」

 対立候補トランプへの「当てつけ」と、次期米大統領ヒラリーへのゴマすりと点数稼ぎ。

 適菜収氏流にいへば、お子様ランチレベルの外交感覚といふことにならうか。

 ヒラリーが当選してゐれば、安倍首相は世界でヒラリー・クリントン大統領から最も信頼されてゐる指導者を自称することができるだずだつた。

 世界の指導者のうちでトランプが逆転勝利を収めたことに一番ショックを受けたのは安倍首相をおいてないだらう。

 安倍首相のショックのほどは、トランプが勝利した直後から、官邸が「トランプ側にも会談を打診してゐた」「安倍首相は自分をヒラリーとだけ会ははせた奴は誰だと激怒してゐる」などといふ話をまことしやかに流し始めたことに現れてゐる。

 全部ウソである。

 ヒラリー側から申し入れられた会談に安倍首相は大喜びで飛びついたのだ。トランプへの当てつけ会談だから、トランプは当然無視された。

 先の産経に記事が書いてゐるやうに、外交感覚ゼロの外務省でさへ、安倍首相がヒラリーと会つたこと自体が「大きな驚きだ
」といつて、米大統領選候補者の一方とだけ会談するリスクを危惧してゐたのである。

 あれほどアメリカ国民から嫌われてゐるヒラリー・クリントンなのに、この日本の指導者は「ヒラリー大好き」人間だつた。

 トランプが「あいつを投獄しろ!」と連呼したヒラリーを安倍首相がどれほど崇めてゐたか、証拠はいくらでもある。


 (この項続く)
 
■「トランプ大統領」におののく日本


「トランプだから」勝つたのか?
 トランプ勝利の要因はヒラリーの賞味期限切れとスキャンダル



 


 米大統領選でのトランプ劇的逆転勝利の要因は、米国民の間でこの攻撃的暴言王への期待が高まつたといふより、賞味期限が切れてスキャンダルにまみれたヒラリー・クリントンに米国民が「ノー」を突き付けたといふ方があたつてゐるだらう。

 大統領選挙戦の潮目を変へたのは明らかに、クリントンのメール私用問題でFBIが捜査再開を宣言した時だつた。

 大統領候補討論会でクリントンに好感度で差をつけられ、女性に対する下ネタ発言や映像が相次いで暴露されて、トランプの支持率は急降下。もはや大統領選の決着はついたかと思はれたが、このFBIの捜査再開宣言がトランプの息を吹き返させた。クリントンとトランプの支持率の差はみるみるうちに縮まつた。

 投票日が十数日後に迫つたタイミングでの捜査再開宣言は、米国民に間にそれまでにない動揺をもたらした。「ヒラリーを大統領にしたら、大統領になつてから刑事訴追されるのではないか・・・」

 ウオーターゲート疑惑が発覚した後のニクソンをホワイトハウスに送り込むやうなものだ。

 私用メール問題のほかにクリントン財団の口利き疑惑など数々の不正が浮上してゐたヒラリーへの不信感を一挙に噴出させたのが選挙戦土壇場での捜査再開宣言だつた。

 トランプ勝利の一因は「隠れトランプ支持者」の投票行動だつたのは確かだらうが、たとへ「隠れトランプ支持者」の存在があつたとしても、FBIの捜査再開宣言がなければトランプの勝利は覚束なかつたはずだ。最終的に選挙の帰趨を決したのはクリントンのスキャンダルだつた。ヒラリー・クリントンは自滅したのだ。

 トランプだからヒラリーに勝つたのではない。

 あれだけ汚辱にまみれたヒラリー・クリントンなら、共和党のまともで無難な(つまり魅力には欠けるがトランプのやうな過激さも破天荒さも持ち合はせてゐない)候補者なら誰でも勝てたと思ふ。自身も嫌はれ者のトランプだから、満身創痍のヒラリー相手にあれだけ苦戦したともいへる。

 共和党の無難な候補者だつたら、トランプのやうな熱狂的支持者は生まなくても、ヒラリーよりはマシといふ反ヒラリー票の受け皿になることはより容易だつただらう。

 テレビでヒスパック系と思しき女性が語つてゐた言葉が印象に残る。「女性が大統領になつてもらひたい。でも、あの人以外ならね」

 口を開けば、マイノリティや女性の権利、同性婚の差別解消、そしてファーストレディ、上院議員、国務長官としての自慢話。つまるところ、ヒラリー・クリントンは政治家としての賞味期限が切れてしまつたのだ、オバマ政権8年の間に。

 ヒラリーとビル・クリントンンの間には、ビルが大統領の座を射止めた後、ヒラリーが大統領を目指す。そのために二人は協力しあふといふ契約が交はされてゐた。

 ワシントンで弁護士として売り出したばかりのヒラリーが周囲の反対を押し切つて田舎のアカンソー州に引つ込んだのも、まずビルがアカンソー州知事から大統領を狙ふといふ二人の計画に沿つた行動だつた。

 ビルがアカンソー州知事から大統領時代に無数の女性スキャンダルを引き起こしても(ビルを罵倒はしたが)、ヒラリーに離婚といふ選択肢はなかつた。夫の女性スキャンダルも、最後は自分が大統領を目指すといふヒラリーの構想をブレさせることはなかつた。

 ビルに協力しつつ、ビルを踏み台にして、ビルに続いて自分も大統領に座につくといふヒラリーの夢はあと一歩のところで潰えた。

 ヒラリーの夢を潰えさせたのはトランプだらうか? いや違ふ。オバマだ。

 オバマが8年前に彗星のやうに現れなかつたら、ヒラリーは民主党指名争ひでスンナリ候補者に選ばれ、本戦も制して大統領に就任してゐただらう。

 第一、ヒラリーがオバマ政権下で国務長官に就任してゐなければ、大統領戦の命取りになつたメール私用スキャンダルも発生してゐなかつただらうから。



 


■靖国神社に「賊軍」合祀を迫る輩の胡散臭さ



 それにしてもなんと胡散臭い顔ぶれであることか。

 亀井静香、石原慎太郎、中曽根康弘、村山富市、森喜朗、福田康夫、二階俊博・・・。
 西南戦争で死んだ西郷隆盛や、戊辰戦争で「賊軍」とされた旧幕府軍将兵らの合祀を靖国神社に申し入れた面々、及びその賛同者の顔ぶれである。

 村山富市の罪科は今さら説明の要もあるまい。戦後初の総理大臣靖国公式参拝と称して土足紛ひの作法で昇殿参拝して宮司を激怒させた上、中国の反日攻勢に恐れをなして、翌年からは靖国参拝を中止、靖国参拝する日本の首相は脅すに限るといふ教訓を中国に与へたのが中曽根康弘だつた。

 村山富市と中曽根康弘、この二人が仲良く名前を連ねてゐることだけみても、この申し入れの胡散くささが分からうといふものだ。

 亀井、石原、中曽根らに共通するのは、靖国神社に合祀されてゐるいはゆる「A級戦犯」(昭和殉難者)の分祀を主張してゐることだ。

 靖国神社は戊辰戦争で命を落とした官軍の霊を祭つた「東京招魂社」に由来するなのだから、今になつて「賊軍」の戦没者を祭るといふのは靖国神社の歴史的性格を変容させる暴挙以外の何物でもない。

 「賊軍」合祀を主張する亀井、石原らの真の目的は靖国神社の歴史的性格を曖昧にすることにあるのだらう。そして、靖国神社に簡単に合祀ができたり、分祀ができるやうにする。さうなれば、「A級戦犯」(昭和殉難者)の分祀もスムースにできる、といふ魂胆が見え見えだ。

 この問題を煽りたててきたのは週刊ポストだ。

 週刊ポストは靖国神社の徳川康久宮司のマスコミ発言(「私は賊軍、官軍ではなく、東軍、西軍と言っている」)を誇大に報道して、徳川宮司を明治維新の評価の転覆者にまつりあげ、この報道に悪乗りしたのが亀井静香といふわけだ。

 まつたく罪つくりな宮司である。

 (この項続く)
プロフィール

tensei211

Author:tensei211
ちば・てんせい。ジャーナリスト、政治評論家。フェミニズム論、天皇論を中心に執筆活動を展開してゐる。

北海道芦別市生まれ。千葉県在住。

フェミニズム論をまとめた著作として、『男と女の戦争―反フェミニズム入門』(展転社)など。フェミニズム関係の共著に『男女平等バカ』(宝島社)、『夫婦別姓大論破』(羊泉社)などがある。

執筆には、正仮名遣ひ(歴史的仮名遣ひ)を用ゐる。

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