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■トランプはアメリカのトイレの救世主か?(続)



 ドナルド・トランプは過去に、トランスジェンダーのトイレ選択の自由を禁止したノースカロライナ州法について、ノースカロライナ州の法律は極端で、法律など制定せずそのままにしておけばよかつたと語つたことがある。

 そして、ケイトリン・ジェナーのやうなトランスジェンダーが女子トイレを使用することにもまつたく抵抗はない、とも述べた。

 ケイトリン・ジェナーとは、アメリカの元陸上競技選手で、モントリオールオリンピック十種競技の金メダリスト。性同一性障害を公表し、ブルース・ジェンナーから女性名のケイトリンに改名したトランスジェンダーだ。

 トランプがこの発言をしたのは2016年4月。大統領選予備選挙で共和党候補の指名をほぼ確実にした頃だつたが、その翌日には、ノースカロライナ州法に関する前日の発言をあつさり撤回してゐる。

 ドナルド・トランプといふ男は、一年間に及ぶ大統領予備選挙を終へた時点でも、トランスジェンダー問題に関するなんの定見も持つてゐなかつたことが分かる。
 
 同性婚問題についてもさうだ。

 予備選の最中には、連邦最高裁の同性婚合憲判決は見直す必要があると発言したかと思へば、本戦の終盤では演壇に仰々しくレインボーフラッグを掲げ、LGBTの皆さんの権利を守りますとアピールしたのだ。

 見事なまでの無定見・無節操ぶりで、本人もLGBT問題でコロコロ意見を変へることなど一向に反省する風もない。

 この無定見ぶりは大統領に就任してからも変はらず、トランプ政権は発足早々、オバマ前大統領が2014年に署名した職場での差別からLGBTを守るといふ大統領令を維持するといふ声明を出した。

 ここでLGBTの活動家たちを喜ばせておいて、今度は一転して、トランスジェンダーのトイレ使用問題ではオバマ政権の方針を撤回したわけだ。

 一説によると、トランプ政権がオバマの大統領令を維持するといふ声明を出すに際して、娘のイヴァンカと夫のクシュナーが影響力を行使したとされるが、トランプにとつては、どつちでもよいことだつのだらう。トランプにとつてはLGBTのことなど大した問題ではないのだ。

 ドナルド・トランプはかつては、民主党の側にゐた人間だ。

 トランプは無定見と言つたが、LGBT問題などについての考へはおそらく民主党に近い。

トランプ政権をめぐるアメリカの動きをみてゐると、反リベラリズムとリベラリズムの闘ひみたいだが、トランプの本質は反リベラリズムでもなんでもない。反リベラリズムなどといふ高尚な思想をこの男は持ち合はせてゐない。

 本来LGBTフレンドリーなトランプが、大統領として反LGBT的な政策をとらざるをえないのはなぜか?

 簡単である。トランプが共和党の大統領であるからである。

 トランプが大統領としてLGBTフレンドリーな政策を打ち出したらどうなるか・

 共和党の主流派勢力はただちにトランプを大統領から引きずりおろしにかかるだらう。

 共和党主流派にとつて、トランプが失脚して副大統領のペンスが大統領に昇格するのが一番望ましいことなのだから。



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■トランプはアメリカのトイレの救世主か?


 米トランプ政権は、オバマ前政権が推進してきた、トランスジェンダーの児童・生徒が自認する性のトイレを使用することができる政策を撤回すると発表した。

 オバマ政権とはまつたくロクでもない政権で、同性婚を推し進めたのみならず、トイレの世界に持ち込まうとしたのがトイレのジェンダーフリー化だつた。

 オバマ政権が、連邦政府から補助金を受けてゐるすべての学校に、「本人が認識してゐる自分の性別をその児童・生徒の性別として扱はなければならない」といふ通達とガイドラインを出したのが2016年5月。

 これには前段があつて、ノースカロライナ州のシャーロット市が、心の性に合つたトイレなどを使用できるといふ条例を策定したため、ノースカロライナ州が2016年3月に生まれた時の体の性にあわせるべき、といふ州法を制定した。

 オバマ政権はこのノースカロライナ州法をつぶすためにノースカロライナ州を提訴する一方で、トランスジェンダーが自認するトイレを使用する権利を認める通達を全米の教育機関に通達したのだ。

 当然のことながら、このジェンダーフリー政策は、女装した男子生徒が女子トイレに入つて女子生徒を震え上がらせたりして、学校現場に大混乱を引き起こし、連邦地裁も2016年8月にオバマ政権の通達の一時差し止め命令を出してゐる。

 もし大統領選挙で民主党のヒラリー・クリントンが勝利してゐれば、トイレのジェンダースリー政策は一段と強化され、学校のみならず公共施設のトイレでもジェンダーフリー化が蔓延したのは確実だ。

 アメリカにおいてLGBTの権利擁護運動は、トイレは男女別といふ社会通念を破壊するところまできてしまつてゐる。アメリカの狂気はこのやうな形で発現する。

 トランプ政権は、オバマ政権によるトランスジェンダーのトイレ選択の自由政策を一応撤回した。

 それではトランプは、トイレは男女別といふトイレの秩序を回復した、アメリカトイレの救世主といつていいのかといふと、ことはさう単純ではない。


 (この項続く)


プロフィール

tensei211

Author:tensei211
ちば・てんせい。ジャーナリスト、政治評論家。フェミニズム論、天皇論を中心に執筆活動を展開してゐる。

北海道芦別市生まれ。千葉県在住。

フェミニズム論をまとめた著作として、『男と女の戦争―反フェミニズム入門』(展転社)など。フェミニズム関係の共著に『男女平等バカ』(宝島社)、『夫婦別姓大論破』(羊泉社)などがある。

執筆には、正仮名遣ひ(歴史的仮名遣ひ)を用ゐる。

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