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■尊王思想の源泉






 ▼内藤湖南著「日本文化史研究」
  戦乱の時代を尊王心拡大の時代ととらへた「応仁の乱に就いて」



 戦後跋扈したマルクス史学者たちは幕末維新の時代を説明するに、「江戸時代の民衆は天皇の存在なぞ全く知らなかつた。天皇絶対主義を植えつけたのは明治新政府である」と唱へるのを常とした。

 これが真つ赤なウソであることは、江戸時代に民衆の間で伊勢神宮の参拝(江戸時代には伊勢参宮を御蔭参と称した)が隆盛を極めたといふ事実ひとつを挙げれば足りる。
 
 宝永二年(1705)の御蔭参の参加人数は三百五十万人、明和八年(1771)は二百万人、天保元年(1830)は五百万人にも及んだのである。

 伊勢神宮は皇室の宗廟である。皇大神宮(内宮)の御祭神は天照大神、御霊代は八咫鏡、豊受大神宮の御祭神は豊受大神である。天照大神は天皇家の守護神、祖先神である。

 江戸時代の民衆は天皇の存在を知らなかつたといふのは、伊勢神宮に押し寄せた民衆たちは伊勢神宮の由来や御祭神さへも知らずに参拝してゐたと言つてゐるに等しいのである。愚民史観である。

 さて、民衆の伊勢神宮の参拝はいつごろから盛んになつたのか。

 それは応仁の乱の時代であるといち早く指摘したのが史家の内藤湖南であつた。

 内藤湖南の「日本文化史研究」に収められてゐる「応仁の乱に就いて」といふ文章(大正十一年の講演録)は、応仁の乱に対する見方を一片させた論考として名高い。

 「応仁の乱といふものは日本の歴史に取つてよほど大切な時代であるといふことは間違のない事」

 「応仁の乱以後百年ばかりの間といふものは日本全体の身代の入れ替りであります」

 「大体今日の日本を知る為に日本の歴史を研究するには、古代の歴史を研究する必要はほとんどありませぬ、応仁の乱以後の歴史知って居つたらそれで沢山です」

 戦乱にあけくれ、皇室衰微といはれた応仁の乱の時代に、それではなぜ伊勢参宮が盛んになつたのか。内藤湖南はその理由を次のやうに説明する

 朝廷が衰微してきて、伊勢の大神宮に差し上げる貢物が少なくなり、応仁の乱の前後に神宮は最も激しい打撃を蒙つた。そこで神宮の維持策として、伊勢神宮へ参詣するための講を各地に組織することが考へられた。御師が一般参拝人の取次をして誰でも参拝せしめる仕掛けがつくられたのである。こによつて伊勢神宮は朝廷の保護を受ける代はりに、日本の一般人民によつて支へられる形になつた。

 それから伊勢で暦を作つた。元来暦は京都の加茂、安倍の家が特権を持つてゐたが、伊勢の町人は土御門家から暦の写本を貰ひ、それを仮名暦にして御師の土産として配つた。これにより暦の頒布が平民的になつたのだといふ。
 
 応仁の乱の時代は、「日本の一番大事な尊王といふ事」に果たしてどういふ影響を及ぼしたかと内藤湖南は自問する。

 皇室が衰微してゐたのは間違ひない。

 「けれどもその一面において、天子の宗廟に対する信仰が朝廷の保護から離れて人民の信仰となつたがために、却て一種の神秘的尊王心を養つたことは非常なものであります」
「一時朝廷が衰へたといふ事は、日本の尊王心の根本には殆ど影響しないのであつて、寧ろ其ために尊王心を一部貴族の占有から離して一般人民の間に普及さしたといふ効能があるのであります」

 内藤湖南はまた、日本書紀の神代の巻が研究され、一つの経典のやうになつてきたのもこの時代であつたといふ。

 南北朝あたりから北畠親房や忌部正通など「日本は神国なり」といふことが言はれ出したが、日本書紀の神代の巻だけの注を書いた一条兼良の「日本紀簒疏」のやうなものが著されたのもこの頃であつた。「日本紀簒疏」は神代の巻を尊い経典にするために書かれたものである。

 つまるところ、応仁の乱の時代は「国民の思想統一の上には非常に効果があつた」「大変価値のある時代であつた」と湖南は云ふのである。、

 内藤湖南は専門が中国史研究で、支那を知らずして国史も知るあたはずといふ考への持ち主であるが、日本の歴史にも該博な知識を有し、卓見に満ちた「日本文化史研究」はいまなほ価値を失つてゐないと評される。




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■天成警語





  ▼老いて死せず、是を賊となす




 池袋の地にて悲惨なる事故を起こせし暴走老人に裁判所禁固五年の刑言ひ渡せり。

 求刑禁固七年なれば判決の五年軽きに失すとの意見少なくなきも宜なるかな。

 裁判官、刑を求刑より軽からしめたることにつき、被告既に社会的制裁を受くることを理由の一つに挙げたり。

 社会的制裁なるもの、俗に云ふいやがらせなるもの含むと解せらる。

 老人の家族、老人が事故を起こせし後、加害者家族救済組織に相談せしと伝へらる。

 かの組織代表によらば、老人の家族、かほどの責めを受くるならば逮捕されし方がいかばかりよかりしかと云へりと。

 被告老人上級裁判所に上訴せば、社会的制裁続くこと明白なり。

 かの救済組織代表の言真実ならば、老人の家族、社会的制裁今よりのちも続くよりは牢獄に入りてもらひたる方がよからんと考ふることもありぬべし。

 これにて裁判終結せば、社会的制裁熄み、家族の名誉も守らるべし。家族に一片の正気有する者ありやなきや。

 論語に、老いて死せず、是を賊となすとの言あり。

 原攘夷して俟つ、子曰く、幼にして孫弟ならず、長じて述ぶることなく、老いて死せず、是を賊となす、杖を以て其脛を叩(う)つ、と。(論語憲問第十四)
 
 孔子今の世にあらば暴走老人の杖を以て其脛を叩たむや。


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tensei211

Author:tensei211
ちば・てんせい。ジャーナリスト・評論家。皇室問題やフェミニズム問題に取り組む。三島由紀夫研究家。國語問題研究家。


フェミニズム論の著作として、『男と女の戦争―反フェミニズム入門』(展転社)など。フェミニズム関係の共著に『男女平等バカ』(宝島社)、『夫婦別姓大論破』(羊泉社)などがある。

皇室関連の著作としては『天皇を喰ひ物にした侍従長』『天皇と宮内庁の「背信」』など。

執筆には正仮名遣ひ(歴史的仮名遣ひ)を使用、当ブログも正仮名遣ひを用ゐる。

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