◆「一票の格差」違憲無効訴訟ゴッコ(二十二)


  国民にウソを垂れ流すペテン師升永英俊(その5)

  ペテン師がアメリカ合衆国憲法を嫌ひな訳



 アメリカの州(state)が国家だなんて荒唐無稽のウソを升永英俊が強弁する理由はただひとつ。アメリカの州(state)イコール国家といふことにしなければ、アメリカでは1人1票が実現してますといふウソがバレてしまふからである。

 ところで、升永英俊はとても面白いことを口走つてゐる。

 《米国連邦地裁は2002年、ペンシルバニア州の選挙区間の最大人口差が19人となったことを違憲と判断し、3週間以内に憲法に沿った選挙区割りの法改正案を提出するよう選挙管理委員会に命じた。それを受けて、同州議会は、裁判所の命令の日から9日後に、最大人口差を1人に縮減する選挙区割り法の法改正を行ったのだ。》

 これはペンシルバニア州における下院選挙区間の人口差の話である。州の選挙管理委員会に区割りの法改正案を提出するよう命じたのはどこかといふと、米連邦地裁。

 エッ、どうしてペンシルバニア州の最高裁ぢやないの? ペンシルバニア州は国家のはづではなかつたつけ? 
 
 この一件をもつてしても、州が主権国家でないことは明白だ。アメリカでは下院選挙区の区割りは原則として各州が州法で決めるが、米連邦最高裁をはじめとする連邦司法当局にはこれを是正させる権限があるのだから。

 さて、升永英俊は鳥取や島根のやうな人口が少ない県には国会議員なんかいらないといふ意見をお持ちの方である。例へば、田原総一朗との対談でもこんな放言をなさる。

《田原 じゃあさらにお聞きしたい。

 一票の格差をなくそうというと方法は二つありますね。つまり鳥取のような県の議員の数を減らすのか、あるいは東京や神奈川の議員の数を増やすのか、ということになる。これはどういうふうにお考えですか。

升永 一人一票にすればいいわけですから、それは減らしても増やしてもどちらでもいいと思います。

 ただ個人的意見を言えば、少なくすればいいと思う。例えば480人の衆議院を・・・。

田原 鳥取や島根のようなところの議員の数を減らすと?

升永 そうですね。でもそれだけじゃなく、衆議院だけで480人という議員の数も多すぎると思いますから、300人でも200人でもいいけど、それくらいまで議員数を少なくするべきだと思います。

田原 200人にしたら、山口、島根、鳥取、岡山、広島あたりを含めた地域でおそらく1~2人になりますね。

升永 それでいいじゃないですか。》

 人口弱小県には国会議員なんか不要といふ明快極まりない主張。

 では、ペテン師さんにお尋ねしようか。

 アメリカにおいて、人口の少ない州の下院議員をゼロにすることはできるのでせうか?

 できるわけないよね。

 ここで、ペテン師さんのお嫌ひなアメリカ合衆国憲法を読んでみませう。

 *************

第1条(立法府)
 第2節(下院)
 (下院議員の定数配分、直接税の配分、人口の算定方法、算定時期、下院議員の定数と人口の割合、経過規定)

 下院議員と直接税は、連邦に加盟する各州の人口に比例して、各州に配分される。各州の人口は自由人(奴隷でない人、インディアンでない人)の総数をとり、この中には一定期間労務に服する者を包み、課税されないインディアンを除外し、これに自由人以外の全ての人数の5分の3を加算したものとする。現実の人口の算定は合衆国議会の最初の開会から3年以内に、その後は10年ごとに、法律で定める方法に従ってこれを行う。下院議員の定数は人口3万人に対して1人の割合を越えてはならない。

  但し、各州は少なくとも1人の下院議員を有しなければならない。(以下略)

  *************
 
 ペテン師さんが絶対触れてほしくないのは、アメリカ合衆国憲法第1条に規定されてゐる、この最後の条文なんだよね。

 《但し、各州は少なくとも1人の下院議員を有しなければならない。》

 このアメリカ合衆国憲法第1条の規定があるから、ワイオミング州のやうな人口56万人の州でも下院議員を1人有してゐる。ワイオミング州は鳥取県(人口58万人)より人口が少ないのだけれども、例へばアメリカで、「人口が少ないワイオミング州など下院議員をゼロにしろ」なんて叫んだらどうなるか。アメリカ合衆国憲法違反の科を受けることを覚悟しなければなかない。

 下院の議席は、10年以内に一度の国勢調査によつて各州に再配分される(これも合衆国憲法に規定されてゐる)が、それでも州の間には最大1.85倍の一票の格差が存在するのだ。

 これが、ペテン師が日本人に一番知られたくないアメリカ下院議員選挙の真実。

 ペテン師のウソのカラクリが見えてきたと思ふ。

 アメリカでは下院議員の各州の定数や再配分方法などはすべてアメリカ合衆国憲法によつて規定されてゐる(上院についても然り)。だから、各州の間に一票の格差があるからケシカランとか、人口の少ない州は議員をゼロにしろなどといふ議論は生じる余地がない。

 以上のことを頭に入れた上で、前に引いた升永英俊の言葉を読んでいただきたい。

《 米国連邦地裁は2002年、ペンシルバニア州の選挙区間の最大人口差が19人となったことを違憲と判断し、3週間以内に憲法に沿った選挙区割りの法改正案を提出するよう選挙管理委員会に命じた。それを受けて、同州議会は、裁判所の命令の日から9日後に、最大人口差を1人に縮減する選挙区割り法の法改正を行ったのだ。

 裁判所の判断から立法までのスピードには驚くべきものがある。ここまで徹底しているからこそ、民主主義の多数決が成り立っているのだ。
 他方、日本の場合、「0増5減」案を反映しても、最大人口と最小人口の差は29万人にも及ぶ。しかし、アメリカにできているのだから、日本にできないはずはない。》

 もう、お分かりですね、ペテン師のウソ。

 アメリカのケースでは、問題はペンシルバニア州の州内格差。一方、日本のケースでは、巧妙に都道府県の間の人口格差の問題にすりかへる。そして、日本では「こーんなに人口格差がある」と叫びたてるといふ寸法。  
 
 彼が「日本=アメリカの州」といふ珍説を発明した理由は明白だらう。

 日本の都道府県の間の人口格差の問題は、アメリカ諸州の州内格差の問題と同じだと言ひくるめるためなのである。

 笑つてやつて下さい。弁護士の肩書きを持つペテン師のワル知恵のレベルの低さを。 

 





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プロフィール

tensei211

Author:tensei211
ちば・てんせい。ジャーナリスト、政治評論家。フェミニズム論、天皇論を中心に執筆活動を展開してゐる。

北海道芦別市生まれ。千葉県在住。

フェミニズム論をまとめた著作として、『男と女の戦争―反フェミニズム入門』(展転社)など。フェミニズム関係の共著に『男女平等バカ』(宝島社)、『夫婦別姓大論破』(羊泉社)などがある。

執筆には、正仮名遣ひ(歴史的仮名遣ひ)を用ゐる。

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