◆「フェミ本の正しい読み方」(1)
 

  「家族なんて邪魔」―《おひとりさま》イデオロギーの正体

   ―上野千鶴子著『おひとりさまの老後』の正しい読み方―



 上野千鶴子著『おひとりさまの老後』がベストセラーになつたおかげで、「おひとりさま」といふ用語には先駆者があるにもかかはらず、上野千鶴子センセイはすつかり「おひとりさま」道の大家になつた感があります。

 『おひとりさまの老後』は75万部も売れたさうですが、読者の中には初めて上野センセイの本を読んだ人も少なくないやうで、「著者は恐いフェミニストだと思つてゐたが、読んでみたらさうでもなかつた」といつた感想が散見できます。

 一寸、目次を読んでみませう。

「ようこそシングルライフへ」
「どこでどう暮らすか」
「だれと付き合うか」
「おカネ「はそうするか」
「どんな介護を受けるか」
「どんなふうに「終わる」か」

 なるほど、これだけみると、おびただしく出版されてゐる老後本となんの変哲もない。読者が多くの老後本と同じやうな感覚で読むのも無理はありません。

 でも、『おひとりさまの老後』は普通の老後本とは決定的に違ふんですよね。

 この本で、著者が伝へたいことは、老後を生きるあれやこれやの知恵なんかではない。

 著者が言ひたいことはたつたひとつ、

 それは、
 「家族なんて邪魔」
 といふことです。

 老後に「家族なんて邪魔」。もつといへば、老後だけではなく、人生に「家族なんて邪魔」といふことです。

 著者によれば、高齢者の女性は死別、離別、非婚で、65歳以上の女性の55%は配偶者がゐなくて、80歳以上の女性だと83%に配偶者がゐないさうです。

 ここから、 
《結婚してもしなくても、みんな最後はひとりになる》
 といふ結論が導き出されるのです。

 自分(上野)のやうな、「ずーっとシングル」も「シングルアゲイン」(離婚や死別でふたたびシングルになること)も、なつてしまへば結果は同じ。

《なあーんだ、しばらく待てば、みんな同じじゃないの》

 著者は、結婚して家族を持つてゐた女性たちが、離婚や死別で「おひとりさま」になつて、シングル仲間が増えるのが嬉しくてたまらないらしいのです。

 そして、まだシングルにならない女性には、子供なんかに頼つちやダメ、としきりに「おひとりさま」への誘導を試みるのです。

 《いまの世の中、、子どもは老後の頼りになるだろうか?》

 《高齢化をめぐる変化でいちじるしいものに、子どもとの同居率の低下がある。》

 《どちらか片方に先立たれたら、子ども世帯と中途同居をはじめる。・・・中途同居のひとは、最初から同居していた場合や、ひとり暮らしのひとよりも、幸福度が低いことがわかっている。》

《老後は子や孫に囲まれて暮らすのが幸せという老後観は、急速になくなりつつある。》

《「おかあさん、わたしたちのところへ来ていっしょに住んだら」という子どもからの申し出を、究極の愛情表現とカン違いしている人たちは多い。・・・「いっしょに住んだら」という誘いは、どちら側にとっても、“悪魔のささやき”なのだ。》

《中途同居したあげく、介護の負担に耐えかねた子どもから、結局どこかのケア付き施設に入居することを迫られるくらいなら、住みなれたわが家で最後までひとり暮らしを選びたい。》

 とまあ、このやうに、子供と同居する暗黒面を強調して盛んに不安を煽るわけですね。

 まるで、お節介婆さんです。

 子供と同居するかどうかなんて人生の重大事には、誰だつて他人からあれこれ口出しされたくないものです。

 ところが、このお節介婆さんときたら、結婚したこともなく子供もなくて、内心子供のゐる家族がうらやましくてならないから、子供のゐる家族をみると壊してやりたくなつてしまふのです。


 (この項続く)
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プロフィール

tensei211

Author:tensei211
ちば・てんせい。ジャーナリスト、政治評論家。フェミニズム論、天皇論を中心に執筆活動を展開してゐる。

北海道芦別市生まれ。千葉県在住。

フェミニズム論をまとめた著作として、『男と女の戦争―反フェミニズム入門』(展転社)など。フェミニズム関係の共著に『男女平等バカ』(宝島社)、『夫婦別姓大論破』(羊泉社)などがある。

執筆には、正仮名遣ひ(歴史的仮名遣ひ)を用ゐる。

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