■小保方晴子さんへの手紙(第二信)


  ― 理研幹部の困惑と小保方さんの困惑 ―



 冠省

 前便に引き続き、「STAP細胞」論文問題についての管見を申し述べたく存じます。

 理化学研究所が三月十四日に開催した中間報告の記者会見を私はニコニコ生放送の生中継で見てをりました。

 野依良治理事長はじめ幹部の方々の受け答へと表情から受けた私の印象は、「困惑」といふ言葉に尽きます。

 怒りをにじませた困惑、茫然自失状態の困惑、事態が一向に把握できないことへの困惑、つまるところ、「なんで、こんなことやつてくれちやつたの」といふ小保方晴子・研究ユニットリーダーその人に対する困惑であります。

 記者たちはつい二か月前に馬鹿騒ぎを演じた自分たちの罪科を忘れたかのやうに、「なぜ?」「どうして?」とお気楽な質問を浴びせかけてをりましたが、理研幹部の人たちは「それを知りたいのはこつちの方だ」と言ひたかつたでせう。 

 ネット上で論文の不正箇所が暴かれるたびに、「誰が?」「なぜ?」「どうして?」と理研の人たちも叫んでゐたはずです。その中には論文の共著者の方たちも含まれるかもしれません。理研関係者の困惑と狼狽は察するに余りあります。(これはあくまで小保方さんに対する理研幹部の「困惑」について言つたまでで、理研自体の「罪状」問題はいづれ改めて申し上げます。)

 しかし、不正疑惑が発覚して以来、関係者の中で一番困惑してゐるのは、おそらく小保方さん、貴女ではなかつたでせうか。私にはさう思はれてなりません。

 「正直にありのままを答へなさい」

 「包み隠さず自分のやつたことを話しなさい」

 理研首脳部からこのやうに問ひ詰められて、あなたは困惑したはずです。

 これが例へば、殺人事件の被疑者なら、捜査官から「お前が殺(や)つたんだらう」と尋問されて、「ハイ、殺りました」と答へることがもできる。しかし、貴女には「ハイ、やりました」と答へることができなかつた。それは、貴女が別にウソを言つてゐるわけではなかつた。ただ貴女には、「ハイ、やりました」と御自分が「自白」すべき「罪状」が思ひあたらなかつただけのことです。

 たしかに、これはよくないこととは知りつつ、あるひはこれはマズイのではないかと思ひつつ、手を染めてしまつたいくつかの事案はあつた。そして、そのことについて貴女は自覚してをられました。

 「でも、あれがそんなに悪いことだつたのかしら?」
 「そんなに責められなければいけないことだつたのかしら?」
 「どうして私が?」  
 「どうして?」
 「どうして?」
 
  ・・・・・
 
 最近私は村松秀著『論文捏造』(中公新書ラクレ)といふ本を読みました。アメリカのベル研究所を舞台にした世界的な物理学者による科学論文捏造事件を追跡したルポですが、この文献から私は今回の「STAP細胞」論文疑惑を考察するにあたつて多くの示唆を与へられました。
 
 この本のことは、また後便で申し上げたく思ひます。

 巷間小保方さんの御動静について色々伝へられてをりますが、くれぐれも御身御大切に願ひ上げます。

 
                           怱々


      平成二十六年三月十六日

                     千葉展正

 小保方晴子様

                           
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プロフィール

tensei211

Author:tensei211
ちば・てんせい。ジャーナリスト、政治評論家。フェミニズム論、天皇論を中心に執筆活動を展開してゐる。

北海道芦別市生まれ。千葉県在住。

フェミニズム論をまとめた著作として、『男と女の戦争―反フェミニズム入門』(展転社)など。フェミニズム関係の共著に『男女平等バカ』(宝島社)、『夫婦別姓大論破』(羊泉社)などがある。

執筆には、正仮名遣ひ(歴史的仮名遣ひ)を用ゐる。

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