■小保方晴子さんへの手紙(第十三信)

 小保方さんにとつてプラス100の価値があつた笹井会見




 冠省

 笹井さんの記者会見についての愚見の続きです。

 まず、記者会見余話から。 

 記者会見で集中砲火を浴びた笹井さんにとつて、ラッキーだつたことがひとつだけあるかもしれません。それは韓国で旅客船転覆といふ大惨事が起きたこと。ために、15日夜のテレビニュースは旅客船事故がトップニュース、笹井さんの会見は二番手に格下げになつてしまひました。

 今日(16日)の朝のワイドショーなんかも、頭はやっぱり旅客船事故。新聞の朝刊も、一面トップはほとんどが旅客船事故でした。全国紙で笹井会見を一面トップで扱つたのは産経新聞のみ。リケジョが好きなこの新聞は、STAP論文に肩入れしすぎて、軌道修正の必要性に迫られ、笹井会見をその好機とみてゐたのでせう。紙面づくりにもアリバイ努力のあとがありありです。

 今の笹井さんにとつて、STAP論文問題がマスコミに騒がれること自体が苦痛で、況してや自分の記者会見においておや。韓国で起きた旅客船転覆事故が笹井さんにとつてラッキーだつたなんて言へば、あの興奮しやすい国民を逆上させかねませんが、もちろん笹井さん御自身が事故を歓迎したなんて言つてゐるわけではありません。私の客観的分析です。

 それでは、笹井さん会見に関する分析を少し。

 笹井さんは、自分の役割が限定されてゐることを強調するあまり、結構とんでもないことを仰しやつてゐる。

 例へば、自分は最後の2か月間参加しただけ、といふご説明。

 この方、たつた2か月アドバイザーとして仕事をしただけで、論文のコレスポンディングオーサーの地位を獲得し、研究貢献三羽烏(小保方さん、若山さん、笹井さん)として記者発表の雛壇に並び、あわよくばノーベル賞共同受賞者の栄に浴するつもりだつたのせうか?

 笹井さんの会見で、一番傷ついたのは若山教授ではないでせうか。

 若山研究室の段階で多くのデータが実験ごとの図表にまとまつてゐた。自分は若山さんがチェックしたといふ前提で見てゐた。研究室の主宰者は管理責任が生じる―といふ発言。不正を見抜けなかつた直接責任は若山さん、自分は間接責任。言ひ方を変へると、小保方さんに騙されたのは、若山さんといふことになる。

 小保方さんとの「不適切な関係」を追及された時、持ち出したのがバカンティ教授です。STAP研究に関する情報を秘匿したのはバカンティ教授の意向が強く、その許可なしに情報を広げることが難しかつた、特に研究の根幹に関はる問題については、と。

 記者から、「でも、研究の根幹ともいへる酸処理は理研に来てからではないか」と突つ込まれると、笹井さんは、小保方さんの雇用はバカンティ教授の直接雇用で、バカンティ教授はラストオーサーとして情報管理した、などと逃げてゐる。小保方さんの身分は、理研とハーバードの間で非常に複雑とも語つてゐます。
(バカンティ教授―小保方ラインのことは、私も分からない部分が多くて、小保方さんにしてもその内実はあまり触れられたくないのでは)

 笹井さんの会見は失敗だつたといふ人がゐます。なるほど、笹井さんにとつては失敗といふ見方もできるかもしれない(自分に対する評価を上げることを記者会見の成功といふなら、笹井さんには退職表明でもする以外にその手だてはなかつたでせうが)

 では、笹井さんの会見は、小保方さんにとつて、プラスだつたのか、マイナスだつたのか?

 小保方さんがどうお考へか知りませんが、私はプラスだつたと思ひます。プラスどころではない、マイナス100からプラス100くらゐに転じたのではないか。

 STAP論文不正問題が、論文2か所の捏造・改竄を認定し、あなたが処分されたところで幕引きされてゐたら、どうなつたか?

 小保方さんがES細胞かなんかを使つてSTAP細胞を捏造したんだ、STAP細胞はやつぱりなかつたんだ、と誰しも受けとめ、世界中の研究者たちもさう考へたはずです。韓国のES細胞論文捏造事件の黄兎錫みたいに(この男こそ私が言ふところの「世紀の大詐欺師」です)。これは小保方さんにとつて耐え難いことだつた。

 しかし、笹井さんは会見で、
「STAP現象を前提にしないと容易に説明できないデータがある」
「STAP現象は、ES細胞の混入では説明できないことが非常に多い」
「反証仮説として説得力が高いものは見いだしてゐない」
「STAPは存在しないと思ふなら共著者になつてゐない」
「STAP現象は検証するに値する有望な現象」
「再現に成功した第三者は研究所内でも少なくとも発表前に1人、発表後にも1人ゐる」
等々、と証言してくれたわけです。

 笹井さんは、ES細胞との再生医学の世界的権威の一人です。その方から、STAP現象(笹井さんはSTAP現象とSTAP細胞は同義と言ひながら現象と細胞といふ言葉を慎重に使ひ分けてをられますが)についてこれだけの証言が引き出された。再現に成功した第三者が存在するといふあなたの発言も裏付けられた。

 小保方さんがひとりでSTAP細胞を捏造したんだ、で終はつてしまつたのとは途轍もない違ひです。少なくとも、小保方さんがひとりでSTAP細胞を捏造したといふ疑惑は、笹井会見によつて払拭されたと言へます。

 STAP細胞の存在を疑ふ人たちは、満足な実験ノートもない、データも残つてないではないかといふ。その批判は、小保方さんにもあてはまるが、笹井さんにもあてはまる。

 実験ノートもない、データもないといふ状況で、笹井さんもSTAP細胞の存在を信じてゐるといふなら、ES細胞・再生医学の世界的権威もあなたと同じレベルでSTAP細胞の存在を信じてゐることになる。それはそれで結構ではないですか。世界的権威とあなたは同じレベルにあるといふことなのですから。

 ではまた。
                      怱々


 平成二十六年四月十七日
                      千葉展正
   
小保方晴子様
                       
                        
 






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プロフィール

tensei211

Author:tensei211
ちば・てんせい。ジャーナリスト、政治評論家。フェミニズム論、天皇論を中心に執筆活動を展開してゐる。

北海道芦別市生まれ。千葉県在住。

フェミニズム論をまとめた著作として、『男と女の戦争―反フェミニズム入門』(展転社)など。フェミニズム関係の共著に『男女平等バカ』(宝島社)、『夫婦別姓大論破』(羊泉社)などがある。

執筆には、正仮名遣ひ(歴史的仮名遣ひ)を用ゐる。

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