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■グローバル教育の推進で邪魔になつた「日本の歴史と伝統の尊重」


 引き続き自民党の衆院選公約の教育問題について話をしたい。

 自民党の公約は6月に公表された「日本再興戦略改訂版」の焼き直しだと指摘したけれど、私のみるところ、自民党公約の3分の2は日本再興戦略改訂版の路線と軌を一にする。

 日本再興戦略改訂版では、「グローバル化に対応する人材力の強化」として、教育政策を重要課題と位置づけ、4ページにわたつて言及してゐる。

 教育政策の中で、英語教育等に関するくだりを紹介しよう。まず、昨年策定された「日本再興戦略」の掲げた施策に関して、達成度評価の記述。

《(グローバル化等に対応する人材を育成)

・大学の国際競争力の強化のため、世界と競う大学への重点支援を行う「スーパーグローバル大学創成支援」事業を創設した。また、初等中等教育段階からの英語教育の強化のため、小学校英語の早期化等を行う拠点への支援や教員の英語指導力向上のための取組を開始した。さらに、グローバル化に対応した素養・能力を育成するため、一部日本語による国際バカロレアの教育プログラム(日本語DP)の開発に着手するとともに、その対象科目の拡大を図った。一部大学においては国際バカロレアを活用した入試の導入や拡充について発表されるなど、その活用が進められつつある。加えて、国際的に活躍できるグローバル・リーダーの育成を図ることを目的とした「スーパーグローバルハイスクール」を創設し、本年1月には、現行の教育課程の基準によらない特色ある教育課程の編成を可能とするための特例措置を講じた。》

 次に、今後推進すべき施策に関する記述。

《 グローバル化等に対応する人材力の育成強化

小学校における英語教育実施学年の早期化等に向けた学習指導要領の改訂を2016年度に行うことを目指し、指導体制の強化、外部人材の活用促進など、初等中等教育段階における英語教育の在り方について検討を行い、本年秋を目途に取りまとめる。学校現場等における外国人活用の抜本強化を図り、実践的な英語教育を実現させる。あわせて、在外教育施設における質の高い教育の実現及び海外から帰国した子供の受入れ環境の整備を進める。また、今年度から開始する「スーパーグローバル大学創成支援」等において、人事・教務システムの徹底した国際化等により国際競争力を強化する大学を支援し、取組状況を公表する。あわせて、日本の大学と外国の大学とのジョイント・ディグリーを実現するため、これらの大学が共同で教育プログラムを構築するための所要の制度改正を本年中に行う。加えて、日本人留学生の倍増に向け、ギャップイヤー等を活用し、希望する学生が国内外で多様な長期体験活動を経験できる環境整備を推進する。》

 これを読んでみれば、今回の自民党公約が掲げた英語教育等に関する次の記述は、「日本再興戦略改訂版」のエッセンスそのものだ。

《小学校英語教育の早期化》
《小中高を通じた英語教育の強化、「スーパーグローバルハイスクール」や「スーパーグローバル大学」の整備、国際バカロレア認定校の大幅増を進めます。》

 今衆院選と2年前の衆院選の自民党公約の教育政策を読み比べてみると、とても興味深いことに気がつく。それは2年前の自民党公約には、小学生英語の早期化どころか、そもそも英語教育への言及がまつたく存在しなかつたといふ事実だ。

 英語教育等への言及がなく、教育政策の骨格をなしていたのは、従来からの自民党の党是ともいふべき次のやうな主張だつた。

《教育基本法が改正され、新しい学習指導要領が定められましたが、いまだに自虐史観や偏向した記述の教科書が多くあります。子供たちが日本の伝統文化に誇りを持てる内容の教科書で学べるよう、教科書検定基準を抜本的に改善し、あわせて近隣諸国条項も見直します。》

 再び問ひたい。自民党の教育公約から「日本の歴史と伝統の尊重」が消えてしまつたのはなぜか?

 その答へは、「日本再興戦略改訂版」を読んだ人ならいやでも分かる。ここには、「日本の歴史と伝統の尊重」など入る余地はまつたくないといふことが。

 「日本再興戦略」の底に流れるのは、日本に残る経済・法律・社会制度・慣行をたたきつぶさうといふ、アメリカが日本に毎年突き付けてきた「年次改革要望書」の執念のごときものだ。

 今でも日本は十分グローバル化してゐて、グローバル化現象と「日本の歴史と伝統を尊重」する態度とは本来矛盾しない。現に自民党も結党以来その路線でやつてきた。
 
 ところが、「日本再興戦略改訂版」を作成した産業競争力会議のメンバーたちは、「日本の歴史と伝統を尊重」する精神など微塵も持ち合はせてゐない。その無国籍者たちの手になる「日本再興戦略改訂版」をそのまま拝借して作成されたのが自民党の選挙公約だから、公約から「日本の歴史と伝統を尊重」が消えたのは至極当然の成り行きといふことになる。

 おそらく安倍首相にとつて、小泉流構造改革のはるか先をゆく「内なるグローバル化」路線を貫徹するためには、「日本の歴史と伝統の尊重」など不要になつた、といふより邪魔になつた、と言つた方が近いかもしれない。






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プロフィール

tensei211

Author:tensei211
ちば・てんせい。ジャーナリスト、政治評論家。フェミニズム論、天皇論を中心に執筆活動を展開してゐる。

北海道芦別市生まれ。千葉県在住。

フェミニズム論をまとめた著作として、『男と女の戦争―反フェミニズム入門』(展転社)など。フェミニズム関係の共著に『男女平等バカ』(宝島社)、『夫婦別姓大論破』(羊泉社)などがある。

執筆には、正仮名遣ひ(歴史的仮名遣ひ)を用ゐる。

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