■日本人の愚民化進行を証明した自民党馬鹿勝ち



 総選挙での自民党の馬鹿勝ちは、日本人の愚民化が一段と進行したことの証明にすぎない。

 小泉純一郎の郵政選挙で小泉自民党に馬鹿勝ちをもたらしたことがその後の日本に衰運をもたらしたことなど夢にも知らない愚民たちは、再び、アベノミクスにコロッと騙されて、安倍自民党に馬鹿勝ちをプレゼントした。

 今回の選挙は、郵政選挙において愚民たちが罹患した狂熱病とはほど遠いものだつたが、ワンフレーズ作戦がまんまと成功したといふ点では共通してゐる。

 大博打といふ点でも郵政選挙と似てゐる。小泉首相は参議院での郵政法案否決を受けて、衆院を解散するといふ大博打をうつた。これに対して、安倍首相は衆院の任期が2年もあるのに、財務省が主導する安倍包囲網―安倍首相に消費税増税を決めさせた上で安倍政権を安楽死させ麻生か谷垣を次期首相に立てるといふシナリオ―に怯えて、「このままでは財務省に殺される」と、大博打の解散にうつて出た。

 第一次政権の失敗に懲りた安倍首相が、第二次政権で取り入れたのが小泉のワンテーマ・ワンフレーズ手法だ。

 小泉首相が選挙の争点を郵政民営化に賛成か反対かだけに単純化して大勝利を収めたのにならつて、安倍首相は解散選挙のテーマをアベノミクス一本で押し通すことに決めた。

 「郵政民営化賛成か反対かを国民に問ふ」
 「アベノミクスへの判断を国民に問ふ」。

 単純極まりないフレーズをB層向けにひたすら繰り返す小泉流ポピュリズムの手法をそのままマネたのが安倍首相だ。

 金融緩和も財政出動も株価つり上げ策にしかすぎないのに、それをアベノミクスと名付けて、アベノミクスで日本が生まれかはるかのごとき幻想を振りまき、その作戦は成功した。小泉も安倍も新自由主義などといふ高等(高級ではない)経済思想とは無縁の衆生で、無学な政治家にすぎない。小泉純一郎は基本的に政策に関心がなく、政局にしか興味がない男だつた。

 金融緩和も財政出動も株価つり上げ策にしかすぎないのに、それをアベノミクスと名付けて、アベノミクスで日本が生まれかはるかのごとき幻想を振りまき、その作戦はほぼ成功した。

 安倍政権にとつての命綱は株価である。株価が下落すれば安倍政権は終はる。安倍首相にとつて政権維持と株価つり上げは同義語だ。

 小泉が郵政問題のためなら手段を選ばなかつたやうに、安倍首相も株価つり上げのためなら手段を選ばない。

 日銀に大幅金融緩和を強要して、金融緩和効果で株が上がつてゐるうちに解散を断行し、消費税増税を前提に金融緩和に踏み切つた日銀幹部は煮へ湯をのまされた。日銀をだますことくらゐ今の安倍首相にとつては朝飯前で、政権維持と株価維持のためなら利用できるものはなんでも利用する。これが安倍政権の正体だ。
 
 安倍自民党に馬鹿勝ちをもたらした犯人は、第一に、株価さへあげてくれればほかのほかのことなんかどうでもいいぢやないの、といふ日本の愚民層である。

 第二に、安倍首相に改憲を掲げる保守政治家といふイメージを抱き続けてゐる愚民保守層だ。

 第三に、中国と韓国である。習近平と朴槿恵が安倍首相をウルトラ軍国主義者よばはりしてくれるおかげで、愚民保守たちの間に中国韓国に屈しない安倍首相といふイメージをますます強固にした。

 第四に、日本に残存するサヨクジャーナリズム。これも、安倍首相は憲法を改正して日本を戦争のできる国にしようと目論んでゐる保守反動、と旧態以前のレッテルを張り続けることによつて、愚民保守層の対安倍イメージアップに貢献してゐる。左翼連中が批判するほどだから、やつぱり安倍首相は保守なんだと思ひ込んでしまふのが愚民保守層のいつもの思考パターンだからだ。愚民保守層の判断基準は自分の頭の中ではなく、中国や韓国、それから日本のサヨクジャーナリズムの鏡に映つた安倍像にある。

 かくして、株価を上げてくれる総理といふ愚民層向けのイメージと、反日中韓と闘ふ安倍首相といふ両用のイメージが形成され、これが複合効果を発揮して、安倍自民党の馬鹿勝ち現象が生まれてしまつた。

 安倍首相にとつては、愚民保守層に対しては、自分を保守と思はせておくのが得策だから、集団的自衛権程度の飴玉をしやぶらせておく。中韓が反日姿勢を強めれば強めるほど、愚民保守たちは無法無礼な中韓と闘ふ総理といふイメージを勝手に形成してくれる。今、中韓の対日強硬姿勢を一番歓迎してゐるのはおそらく安倍首相だらう。中韓に対して何もしないことが、逆に自分のポイントを上げてくれるのだから有難い話だ。

 与党の圧勝で安倍政権が長期政権になれば憲法改正に一歩近づくと喜んゐる愚民保守たちの顔が見えるやうだ。株屋的思考に浸食された安倍首相の頭からは、憲法改正といふ文字はとつくのむかしに消えてゐる。
 



 

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プロフィール

tensei211

Author:tensei211
ちば・てんせい。ジャーナリスト、政治評論家。フェミニズム論、天皇論を中心に執筆活動を展開してゐる。

北海道芦別市生まれ。千葉県在住。

フェミニズム論をまとめた著作として、『男と女の戦争―反フェミニズム入門』(展転社)など。フェミニズム関係の共著に『男女平等バカ』(宝島社)、『夫婦別姓大論破』(羊泉社)などがある。

執筆には、正仮名遣ひ(歴史的仮名遣ひ)を用ゐる。

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