●安倍首相「名ばかり外交」の代償(2)

 「湯川さんと後藤さんの救出要請も中東歴訪の目的の一つだった」
  安倍官邸アリバイ工作の先棒を担ぐ読売新聞



 イスラム国による後藤健二氏殺害関連の報道に埋め尽くされた2月2日の各紙朝刊の記事の中で、私が最も注目したのは読売新聞の次の記事だ。

《「2人を助けてほしい」

 安倍首相は中東訪問中の1月18日、ヨルダンのアブドラ国王と会談した際、イスラム国に拘束されていた後藤健二さんと湯川遥菜さんの解放に向けた協力を改めて求め、国王に頭を下げた。

 政府は湯川さんが失踪した昨夏、ヨルダンの首都アンマンに対策本部を設置。ヨルダン政府の情報機関などと緊密な連携体制を敷いていた。ヨルダンに立ち寄り、改めて2人の救出を要請することも、中東歴訪の目的の一つだった。》

 この記事によると、イスラム国に拘束された後藤健二さんと湯川遥菜さんの救出を要請することも安倍首相の中東歴訪の目的の一つで、ヨルダンのアブドラ国王に解放に向けた協力を改めて求めて頭を下げたとある。

 しかし、首相中東歴訪に関する事前の外務省の説明でも菅官房長官の記者会見でも、後藤さんと湯川さんへの言及などまつたくなく、ヨルダン訪問後に外務省が公開したアブドラ国王との会談詳報にも両氏に関する話は見当たらない。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/me_a/me1/jo/page3_001064.html
 ならば、事態の性質を慮つて、政府が中東歴訪の目的の一つである両氏解放問題をマスコミに伏せたといふことになる。たしかに、後藤氏に関しては妻に身代金要求のメールが届いた12月初旬以降、日本政府が仲介者を立ててイスラム国側と交渉を続けて、相手は後藤さんの名前を出したら殺害すると脅してゐたのだから(対イスラム国との交渉の事実を日本政府は未だに公表してゐない)、安倍首相の中東歴訪にあたつて両氏の解放問題を極秘事項にしたと考へられないこともない。

 読売の記事は続けてかう書いてゐる。

《政府内には、邦人拘束事案で不測の事態が起こるのではと懸念する声もあったが、官邸は「行かなければテロに屈したことになるし、今回行かなくても別の機会が狙われるだけだ」(首相周辺)として、中東訪問に踏み切ったという。》

 これが本当なら、邦人拘束事案で不測の事態が起こる懸念もあつたが、安倍首相は「行かなければテロに屈したことになる」と、両氏救出に向けた極秘使命を帯び悲愴な決意を抱いて中東に旅立つたわけだ。

 ところが安倍首相の心中が、テロに屈するとか屈しないとか、そんなレベルの話でなかつたことは、週刊ポスト(2月6日号)が暴露した通りである。

《1月7日にフランスで週刊紙銃撃テロ事件が起きると、外務省内から今回の中東訪問は「タイミングが悪い」という声が上がった。

 ところが、安倍首相の反応が逆だった。官邸関係者がこんな重大証言をした。

「総理は『フランスのテロ事件でイスラム国がクローズアップされている時に、ちょうど中東に行けるのだからオレはツイている』とうれしそうに語っていた。『世界が安倍を頼りにしているということじゃないか』ともいっていた」

 周囲はその言葉を聞いてさすがに異様に感じたという》

 危機意識まるでゼロ。拘束されてゐる二人への顧慮どころか、戦乱渦巻く中東情勢に対する基本認識さへ持ち合はせない無知無能な国家指導者がここにゐる。

 安倍首相の頭がどこか常人の感覚とズレてゐることを官邸側近も気がついてゐる。気がついてゐるけれど誰も何もいへない。これが悲劇の発端である。

 安倍官邸はこれから、湯川氏と後藤氏が拘束されて以降、政府は救出に向けて懸命の活動を続けてきたといふ釈明を始めることだらう。今回の読売の記事は、安倍官邸のアリバイ工作の始まりであり、安倍政権PR機関紙がそのお先棒を担いだと考へると分かりやすい。






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プロフィール

tensei211

Author:tensei211
ちば・てんせい。ジャーナリスト、政治評論家。フェミニズム論、天皇論を中心に執筆活動を展開してゐる。

北海道芦別市生まれ。千葉県在住。

フェミニズム論をまとめた著作として、『男と女の戦争―反フェミニズム入門』(展転社)など。フェミニズム関係の共著に『男女平等バカ』(宝島社)、『夫婦別姓大論破』(羊泉社)などがある。

執筆には、正仮名遣ひ(歴史的仮名遣ひ)を用ゐる。

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