■夫婦別姓のカラクリ(3)

 「フランスでは夫婦別姓は当たり前」といふたはごと
  フランス革命反動期に「勝手に貴族を名乗るな」と氏の変更を禁止
 「氏不変の原則」の産物にすぎないフランスの「夫婦別姓」



 初心者向けのフェミニズムの教科書には決まつてこんな文章が登場する。

 「ヨーロッパやアメリカでは働く女性が増えてきたので、男性と女性の権利を対等にするために夫婦別姓を認める法律が作られてきました」

 その例として真つ先にあげられるのがフランスで、

 「女性の社会進出がめざましく、男女平等が進んでいるフランスでは、夫婦別姓は当たり前のように行われています」

 「日本もフランスにならつて夫婦別姓や事実婚を認めるようになれば、フランスのように人口も増えるようになるでしょう」

 とまあ、幼稚でいい加減なフランス礼賛論を書きちらして、子供たちに日本はいかに夫婦別姓後進国であるかといふ劣等意識を植え付ける仕組みになつてゐる。

 たしかに、フランスにおいて夫婦別姓は行はれてゐる、一部で。しかし、フランスの夫婦別姓は、そもそも女の権利を守るとか男女平等といふ思想とは一切関係がないといふことをどれほどの日本人が知つてゐるのだらう。

 フランスには、出生証書に記載された以外の氏も名も称することはできないといふ「氏不変の原則」が存在する。この氏不変の原則がフランスの姓氏制度の根幹だ。

 この原則が打ち立てられたのは、フランス革命のテルミドール反動期にあたる1794年のことだ。

 どうしてこのやうなものができたかといふと、フランス革命のどさくさ期に、市民は氏を自由に変更できるといふ決定が下された。ところが庶民の中に貴族を名乗るものが現れてきたで、テルミドールの反動期に「氏不変の原則」を定めた法が制定されたのだ。これが沿革。
 
 フランスでは革命前、結婚すると妻は夫の氏を名乗るのが通例とされてきた。しかし、氏不変の原則を貫徹すれば、夫婦は当然のことながら別氏になつてしまふ。そこでフランスが編み出したのが、nom d'usage 「使用の氏」といふ制度だ。

 結婚した夫婦は配偶者の氏を使用する権利を有する。これが nom d'usage である。

 これに対して、出生証書に記載された氏を nom de famille (家族の氏)といふ。
 
 つまり、フランス人は nom de famille と nom d'usage といふ二重の氏を持つ。フランス社会で一般的に使はれてゐるのは、nom d'usage の方だ。

 実際には反動期以降、ほとんどの妻は夫の氏を名乗つたとされるが、それはすべて  nom d'usage の制度による。

 結婚して妻が夫の氏を使用する権利を行使しなければ、自動的に夫婦は別氏になる。それだけの話だ。フランスにおける夫婦別氏とは、フランス革命反動期の大混乱の中から生まれた鬼子の残滓のごときもので、女性の権利向上や社会進出とはなんの関係もない。

 くれぐれもフェミニストたちのプロパガンダに騙されないやうに。
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プロフィール

tensei211

Author:tensei211
ちば・てんせい。ジャーナリスト、政治評論家。フェミニズム論、天皇論を中心に執筆活動を展開してゐる。

北海道芦別市生まれ。千葉県在住。

フェミニズム論をまとめた著作として、『男と女の戦争―反フェミニズム入門』(展転社)など。フェミニズム関係の共著に『男女平等バカ』(宝島社)、『夫婦別姓大論破』(羊泉社)などがある。

執筆には、正仮名遣ひ(歴史的仮名遣ひ)を用ゐる。

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