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■ 宮内庁長官羽毛田信吾の罪状(その三)

◎自己保身のために記者会見を開催、小沢ゴリ押し事件で「天皇の忠臣」演じた宮内庁長官

 羽毛田が「天皇を守る宮内庁長官」といふイメージを国民の間に植えつけるのに成功した最大の事例は、何と言つても平成21年に起きた天皇と中国の習近平国家副主席との会見問題だらう。小沢一郎が介在したことによつて一躍有名になつた事件だが、ここでも羽毛田は自己保身のために記者会見まで開いて巧妙に立ち回り、この事件を逆手にとつて、「天皇の忠臣」としての評価を高めることに成功してしまつたのである。

 小沢ゴリ押し事件をざつと振り返るとこんな具合だ。

 (平成21年)
11月19日、中国側が習副主席の12月中旬頃の訪日を通知し、外務省が宮内庁に会見を要請。
11月20日、中国外相が小沢一郎(民主党幹事長)に国会内で副主席訪日の際の協力を要請。
11月23日、中国、副主席の訪日日程を正式に伝達。
11月26日、外務省、宮内庁に天皇と副主席の会見を打診。
11月27日、宮内庁、一か月ルールにより会見はできないと回答。
11月30日、外務省、鳩山首相と平野官房長官に会見不可能と伝達。日本政府、中国政府に天皇の健康を理由に会見を断る。
12月4日、鳩山首相と小沢が官邸で会談。
12月7日、鳩山首相、平野官房長官に「何とかしてもらひたい」。
     官房長官、羽毛田宮内庁長官に「日中関係の重要性にかんがみ是非お願ひしたい」と電話。羽毛田「ルールを尊重してもらひたい」。
12月8日、小沢、鳩山に「ゴチャゴチャやっとらんで早うせい」と電話。
12月9日、日本政府、陛下の健康を理由に会見に応じるのは難しいと中国政府に連絡。中国側「やむを得ない」。
     小沢、官房長官に「しつかりやれ」と電話。
12月10日、小沢大訪中団、北京へ出発。官房長官、羽毛田に「日中関係は重要。これは総理の指示を受けての要請」と電話。
     胡錦濤国家主席と小沢が人民大会堂で会談。
12月11日、日本政府、天皇が習副主席と12月15日に会見すると発表。羽毛田長官、緊急記者会見。 
12月15日、天皇が習副主席と会見。


 小沢一郎が自分が率ゐる大訪中団の勢力誇示のために天皇を利用したわけで、いはば天皇のハク付け利用だ。過去に天皇を自分のハク付けに利用しようとした政治家は数知れど(例へば中曽根康弘など最もこれを得意とした)、それをかくも露骨に演じた政治家はみあたらない。

 政府部内には、天皇と外国要人との会見は一か月前までに文書で申請するといふ一ヶ月ルールが存在するが、小沢にとつてそんなルールははじめから眼中になく、ロボット総理を動かして習を天皇に会はせようとした。中国側は一ヶ月ルールを知りつつ、副主席の日程が決まらないとズルズル返事を引き延ばす。その挙句の一ヶ月ルール抵触。そんなルーズな対応ぶりをみれば、副主席にとつて天皇との会見が最優先行事でなかつたことは明白だ。天皇に会へればハク付けになる。ダメならしようがない。中国側の真意はそんなところだつた。会見を認めなければ日中関係がどうなるといふ話ではさらさらない。

 ルール無視、ゴリ押し、天皇への非礼、非重要性、非緊急性、どこからみても天皇との会見を認める余地はまつたくない。ところが、こんな無法な要求がまかり通つてしまつたのである。これを認めたヤツは切腹ものだ。誰だ? 官房長官か? 違ふ。平野は小沢の伝達役にすぎない。総理大臣か? 違ふ。鳩山は小沢の伝達役にすぎない。

 それでは認めた犯人は誰なのだ? 宮内庁長官である。羽毛田。

 では羽毛田は責任をとつて切腹したか? しない。辞任したか? しない。では何をしたのか? 緊急記者会見を開催したのである。

 以下が、彼の記者会見における発言である。 

《外国からの賓客については、引見希望日が迫つた形で願ひ出があると、両陛下の日程調整に支障をきたす。ひいては繁忙をきわめる両陛下の生活に想定外のご負担をきたすことになる。常態化すればゆゆしきことであると考へて、一か月以上前に内閣から願ひ出を頂くのをルールとしてやつてきた。特に 天皇陛下が前立腺がんの摘出手術を受けた後の平成16年以降は、ご負担や年齢を考慮して、このルールをより厳格に守つていただきたいと政府内に徹底してきた。このルールは、国の大小や政治的に重要かどうかで取り扱ひに差をつけるといふことなしに実施してきた。陛下の国際親善は政府のやることとは次元 を異にするもので、政治的な重要性、懸案、政治判断を超えたところでなされるべきだ。現在の憲法下にかかはる天皇陛下のお務めのあり方と か、役割とか、基本的なことにかかはることだと考へてゐる。今回、内々に外務省から宮内庁に打診されてきた時は、1カ月を切つてゐたので、ルールに照らし合はせて外務省に「応じかねる」との回答をした。外務省も「さうですか」と了承した。その後、官房長官から「ルールは理解するけれども、日中関係の重要性にかんがみ、内閣としてはぜひお願ひする」と言つてきた。私は「事務的に作つたルールではあるかもしれないけれども、やはり陛下をお守りするために作られたものであり、それは国の大小や、政治的に重要かどうかなどにかかはりなくやつてきたので、ぜひ尊重してやつていただきたい。尊重することが政府のありようではないでせうか」と申し上げた。その後、官房長官から再度「総理の指示を受けての要請だ」と指示があつた。そうなつてくると、宮内庁も内閣の一翼を担う存在であり、宮内庁長官も 内閣の指示に従ふべき立場。こちら側の問題意識を申し上げながら、大変に異例なことではありますけれども、曲げて陛下にお願ひすることにした。私としては、誠に心苦しい気持ち。かういつたことは二度とあつてほしくない、といふのが私の切なる願いだ。(「天皇の政治利用につながりかねない懸念があるといふことか」)大きく言へばさいふことだらう。陛下の国際親善のなさりようといふのは、国の外交とは違ふところにある。これから何かあつた時に、陛下を打開役にといふことになれば、それはまさに今の憲法上の陛下のあり方と大きく狂ふ》

 ペラペラよくしやべつたものである。ここに載せたのも発言要旨にすぎないから、実際はもつとしやべつたはずだ。

 で、この羽毛田発言に対して、「天皇の政治利用」「小沢の横暴」「中国に屈するな」と、羽毛田礼賛の合唱が巻き起こつたのは周知の通り。

 こんな反応をみてニンマリしたことだらう、羽毛田は。

 羽毛田が天皇と副主席の会見が行はれる前に記者会見に及んだ理由は簡単明瞭。自己保身のためである。

 このまま、天皇と副主席の会見が終了してしまへば、あとになにが残るか。「30日前ルールを守れなかつた宮内庁長官」「天皇を守れなかつた宮内庁長官」「ゴリ押しに屈した宮内庁長官」・・・・と、自分の責任問題が噴出するのは目にみえてゐる。

 そこでこの頭の回る官僚は、先手を打つたのである。自分はゴリ押し勢力の哀れな被害者です。みなさん、悪いのは30日前ルールを無視したゴリ押し勢力なのです・・・。

 自分を被害者に仕立てることで、責任問題が起きるのを封じ、おまけに「天皇の忠臣」の役割も演じることができる。なるほどうまいことを考へたものだ。現実はほぼこの奸臣のシナリオ通りに進行したのだから。

 宮内庁長官が本当に30日前ルールを死守するつもりならいくらでもできるのである。

 官邸の方針に対して宮内庁長官がノーと言つた場合、官邸はどうするか?

 総理大臣が宮内庁長官の頭越しに天皇にお願ひすることはできる。ただしそれは制度上可能だといふだけで、実際にそのやうなことをやつた総理大臣は過去にゐない。天皇は公的行事に関してはすべて宮内庁長官の輔弼を通して行動するのが昭和天皇以来の習ひになつてゐるからである。

 従つて、宮内庁長官があくまでノーと言つた場合、総理大臣としては宮内庁長官を罷免するしかない(宮内庁長官は任免について天皇の認証を必要とする認証官ではあるが総理大臣が認証官である国務大臣を罷免できるのと同じ)。しかし、このやうな案件で宮内庁長官を罷免したりしたら、ゴリ押し工作が露見して、天皇との会見など吹き飛んでしまうだらう。

 結局、宮内庁長官がルールを盾に「認められない」と最後まで突つぱねれば官邸もどうすることもできない。ただ、本件においては宮内庁長官にそこまでやる気がなかつたといふことに尽きる。

 羽毛田長官が官房長官から会見を認めるよう要請されたのはわずか二回。しかも電話で。二回目に総理の意向を持ち出され、あつさり受諾。別にあの山口組系風貌の恫喝常習男から「中国の親分と天皇の会見を認めければお命頂戴する」と脅されたわけでもない。

 当ブログの読者の方は、ここまでお読みになつて、「何か似てるな」と思はれたことだらう。さう、前回のコラムに書いた内親王参内問題である。唐突な記者発表、詳細な経過説明、自分の責任回避、天皇への忠義の強調・・・・・何から何までそつくりではないか。

 羽毛田は「天皇の忠臣」を装ふことが国民受けすることを覚えたのである。そして、「天皇の忠臣」を装へば自分の地位は安泰であることも。

         (この項続く)
 


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プロフィール

tensei211

Author:tensei211
ちば・てんせい。ジャーナリスト、政治評論家。フェミニズム論、天皇論を中心に執筆活動を展開してゐる。

北海道芦別市生まれ。千葉県在住。

フェミニズム論をまとめた著作として、『男と女の戦争―反フェミニズム入門』(展転社)など。フェミニズム関係の共著に『男女平等バカ』(宝島社)、『夫婦別姓大論破』(羊泉社)などがある。

執筆には、正仮名遣ひ(歴史的仮名遣ひ)を用ゐる。

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