■夫婦別姓のカラクリ(10)


 民法改正案では違憲が問題になつてゐなかつた!
 最高裁判決が図らずも暴露した事実




 法務省は平成6年に「民法改正要綱試案」を発表したが、この中で、民法733条1項の再婚禁止期間の規定については100日に短縮するといふ案が示された。

 これを受けて法制審議会が平成8年に答申した「民法改正要綱」でも、再婚禁止期間の規定を次のやうに、100日とする案を盛り込んだ。

《女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して百日を経過した後でなければ、再婚をすることができないものとする。 》

 再婚禁止期間を100日とするのは、ほぼ20年前から法務省の既定方針だつたことが分かる。

 それでは今回の最高裁判決は、この民法改正案について、どのやうに述べてゐるか。

《同改正案は、現行の嫡出推定の制度の範囲内で禁止期間の短縮を図るもの等の説明が付され、100日超過部分が違憲であることを前提とした議論がされた結果作成されたものとはうかがわれない。》

 この珍妙極まりない説明!

 簡単にいふと、この時の改正案は、違憲だからといふ理由で100日に短縮したわけぢやない、といふこと。

 改正案では違憲が問題がなつてゐませんでした、と最高裁がしきりに強調するのはなぜか? 

 その理由は判決文の続きを読めば分かる。

 《婚姻及び家族に関する事項については、その具体的な制度の構築が第一次的には国会の合理的な立法裁量に委ねられる事柄であることに照らせば、平成7年判決がされた後も、本件規定のうち100日超過部分については違憲の問題が生ずるとの司法判断がされてこなかった状況の下において、我が国における医療や科学技術の発達及び社会状況の変化等に伴い、平成20年当時において、本件規定のうち100日超過部分が憲法14条1項及び24条2項に違反するものとなっていたことが、国会にとって明白であったということは困難である》

 《以上によれば、上記当時においては本件規定のうち100日超過部分が憲法に違反するものとなってはいたものの、これを国家賠償法1条1項の適用の観点からみた場合には、憲法上保障され又は保護されている権利利益を合理的な理由なく制約するものとして憲法の規定に違反することが明白であるにもかかわらず国会が正当な理由なく長期にわたって改廃等の立法措置を怠っていたと評価することはできない。したがって、本件立法不作為は,国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないというべきである。 》

 過去に違憲性の問題が浮上してゐたとなると、立法の不作為責任を問う国家賠償法請求を無下に退けることは困難だ。この手の訴訟で立法の不作為責任なんか認めたら大変なことになるのは最高裁も承知してゐる。そこで、過去には違憲性の問題は生じてゐませんでしたとしきりに弁明する羽目になる(実際、違憲性の問題は生じてゐなかつた)。

 前にも言つたやうに、最高裁は、違憲の判断は出したい、しかし国家賠償法の請求は絶対に認めない。こんなアクロバテックなことを企てるから、珍妙奇怪な説明で逃げざるをえなくなる。

 それにしても、最高裁の判事たちつて、ホントにアホだね。

 再婚禁止期間の規定が過去に違憲性を問題とされたことはなかつたと強調するあまり、重大かつ明白な事実をはからずも暴露したことに気がつかないお馬鹿さんたち。

 それは、法務省も法制審議会も、再婚禁止期間の規定は純然たる技術的な問題で、違憲問題を持ち出すやうな性質のものではないと正しく認識してゐたといふ事実である。

 20年前に日本の司法と司法行政の中枢にゐた人々が、違憲のイの字もいはなかつた規定に対して、最高裁はなぜ突然、「違憲」と叫び始めたのか? 再婚禁止期間を100日に短縮するといふ結論はまつたく同じなのに。

 (この項続く)
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プロフィール

tensei211

Author:tensei211
ちば・てんせい。ジャーナリスト、政治評論家。フェミニズム論、天皇論を中心に執筆活動を展開してゐる。

北海道芦別市生まれ。千葉県在住。

フェミニズム論をまとめた著作として、『男と女の戦争―反フェミニズム入門』(展転社)など。フェミニズム関係の共著に『男女平等バカ』(宝島社)、『夫婦別姓大論破』(羊泉社)などがある。

執筆には、正仮名遣ひ(歴史的仮名遣ひ)を用ゐる。

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