■「改憲ゴッコ」が始まる!

 今度の参院選は、改憲勢力が議席の3分の2を占めるかどうかが大きな焦点になつてゐるらしい。
 
 世が世なら改憲勢力が国会の3分の2を占めるのは結構なことであると思ふ。
 
 世が世ならといふのは真つ当な勢力が政権を担つてゐたならといふ意味である。
 
 今の安倍政権が真つ当な政権でないことはいふまでもない。保守の皮を被つた超リベラリズム政権。今の自民党はアメリカの民主党にますます近似し、安倍晋三はヒラリー・クリントンにますます近似してゐる。
 
 こんな「改憲勢力」が国会の議席の3分の2を占めるやうになれば、何が起こるか目に見えてゐる。「改憲ゴッコ」である。
 
 安倍政権をとりまく「改憲ゴッコ」屋たちはいふ。
 
 憲法改正は、取り敢ず国民の合意を得やすいところからはじめませう。
 
 そこで持ち出されるのが、緊急事態条項だとか環境権だ。
 
 緊急事態条項だとか環境権だとかのワンポイントで、憲法を改正してゆく。
 
 このやうにして、国民の抵抗の少ない問題でワンポイントで憲法をゆけば、国民の憲法改正アレルギーもやがて解消され、憲法第9条改正に対してもアレルギーが少なくなる―とまあ、アホみたいな未来図を描いてゐるわけだ。
 
 国民に抵抗の少ないワンポイントの憲法改正を続ければ、どのような事態になるか?

 国会のたびごとに憲法改正の議案が持ち出されることになるだらう。
 
 同性婚が認められるやうに憲法を改正しませう。
 
 ヘイトスピーチを禁ずる条項を憲法に追加しませう。
 
 安倍政権は性的少数者の権利擁護には熱心だし、ヘイトスピーチ対策法案も事実上与野党一致みたいなものだから、同性婚容認の憲法改正もヘイトスピーチ禁止の憲法改正もすんなり実現するに違ひない。
 
 ワンポイントの憲法改正が常態化すれば、国会のたびごとに「改憲ゴッコ」が繰り広げられるかもしれない。
 
 国民に抵抗の少ないワンポイントの憲法改正を続ければ、やがて第9条改正への道につながるなんてのは真つ赤な嘘。
 
 逆だ。ワンポイントの憲法改正を続ければ、第9条改正への道はますます遠のく。どころか永遠に不可能になる。
 
 第9条抜きの憲法改正を続けるうちに、第9条問題などどうでもよくなつてしまふだらう。といふより、第9条問題だけは触れないでおきませうねといふ暗黙の合意のうちに繰り広げられるのが「改憲ゴッコ」といふことになる。「護憲勢力」なんていつてゐる連中も、第9条抜きの改憲なら大歓迎なのだ。

 結論。今の安倍政権下で「憲法改正勢力」が議会の3分の2を占めてもロクなことにはならないといふこと。
 
 

 
 
 
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プロフィール

tensei211

Author:tensei211
ちば・てんせい。ジャーナリスト、政治評論家。フェミニズム論、天皇論を中心に執筆活動を展開してゐる。

北海道芦別市生まれ。千葉県在住。

フェミニズム論をまとめた著作として、『男と女の戦争―反フェミニズム入門』(展転社)など。フェミニズム関係の共著に『男女平等バカ』(宝島社)、『夫婦別姓大論破』(羊泉社)などがある。

執筆には、正仮名遣ひ(歴史的仮名遣ひ)を用ゐる。

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