■三笠宮崇仁親王殿下薨去


 「薨去」といふ言葉を忌避するマスコミの病理



三笠宮崇仁親王殿下薨去に関する報道では、正しく「薨去」といふ言葉を使つたのは、ほとんど産経新聞のみといふ有様で、他のマスコミは例によつて「逝去」「ご逝去」で逃げた。

 共同通信などはひどいもので、薨去の第一報の見出しは、
「三笠宮さま、都内の病院で27日朝死去」
といふものだつた。
(その後の詳報では、見出しに「逝去」を使用した)
 
 もつとも、逝去も死去も、一般人に用ゐる言葉であることに変はりはなく、相手を敬つていふ時に使ふのが逝去だ。

 だから、弔電などでは、
 「ご母堂様のご逝去の報に接し、謹んで哀悼の意を表します」
ともつぱら「ご逝去」を使ふ。

 あらゆるマスコミが皇族の訃報に一般人に用ゐる言葉である「逝去」を使ひ続けるのは、いふまでもなく、マスコミには皇室用語はなるべく使はないようにしようといふ暗黙の取り決めが存在するからだ。

 記者たちが薨去といふ言葉を知らないわけではない。

 宮内庁は皇族の訃報には一貫して「薨去」を用ゐてゐるのだから。

 宮内庁のホームページの記事はかうある。

《崇仁親王殿下薨去について

 崇仁親王殿下には、本日午前8時34分、聖路加国際病院において、薨去(こうきょ)されました。》

 大手マスコミではただ一社、正しく「薨去」を使用した産経新聞も、皇族の訃報記事で「薨去」を使用したのは、平成26年の桂宮宜仁親王殿下の訃報記事からだ。それまでは他のマスコミと同じやうに「逝去」「ご逝去」を使つてゐたから、会社として方針転換したと思はれる。

 昭和13年刊の「皇室辞典」(冨山房)によると、
「崩御」は、
「天皇、太皇太后、皇太后、皇后の神去りましたことをいふ」
とあり、
「薨去」は、
「前記のほかの皇族方並に王公族方の場合を申し上げる。また従三位以上の有位者の場合にも用ゐる」
とある。

 これらは大正15年に公布された皇室喪儀令にある規定で、宮内庁は戦後も皇室喪儀令を準用してゐるから、「崩御」も「薨去」も公的に活きてゐる言葉だといふことになる。この事実をどれほどの日本人が知つてゐるだらうか?

 昭和天皇の崩御に際して、「天皇死去」と見出しをつけたのは共産党の赤旗だつた。

 死去よりは逝去の方がマシと多くの人は考へるかもしれないが、私にいはせれば、皇室用語を忌避もしくは敵視する点においては一般紙も赤旗もそんなに変はらないと思ふ。


 言葉を正さなければ、皇室の世俗化現象はとどまることを知らないだらう。





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プロフィール

tensei211

Author:tensei211
ちば・てんせい。ジャーナリスト、政治評論家。フェミニズム論、天皇論を中心に執筆活動を展開してゐる。

北海道芦別市生まれ。千葉県在住。

フェミニズム論をまとめた著作として、『男と女の戦争―反フェミニズム入門』(展転社)など。フェミニズム関係の共著に『男女平等バカ』(宝島社)、『夫婦別姓大論破』(羊泉社)などがある。

執筆には、正仮名遣ひ(歴史的仮名遣ひ)を用ゐる。

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