■「トランプ大統領」におののく日本


「トランプだから」勝つたのか?
 トランプ勝利の要因はヒラリーの賞味期限切れとスキャンダル



 


 米大統領選でのトランプ劇的逆転勝利の要因は、米国民の間でこの攻撃的暴言王への期待が高まつたといふより、賞味期限が切れてスキャンダルにまみれたヒラリー・クリントンに米国民が「ノー」を突き付けたといふ方があたつてゐるだらう。

 大統領選挙戦の潮目を変へたのは明らかに、クリントンのメール私用問題でFBIが捜査再開を宣言した時だつた。

 大統領候補討論会でクリントンに好感度で差をつけられ、女性に対する下ネタ発言や映像が相次いで暴露されて、トランプの支持率は急降下。もはや大統領選の決着はついたかと思はれたが、このFBIの捜査再開宣言がトランプの息を吹き返させた。クリントンとトランプの支持率の差はみるみるうちに縮まつた。

 投票日が十数日後に迫つたタイミングでの捜査再開宣言は、米国民に間にそれまでにない動揺をもたらした。「ヒラリーを大統領にしたら、大統領になつてから刑事訴追されるのではないか・・・」

 ウオーターゲート疑惑が発覚した後のニクソンをホワイトハウスに送り込むやうなものだ。

 私用メール問題のほかにクリントン財団の口利き疑惑など数々の不正が浮上してゐたヒラリーへの不信感を一挙に噴出させたのが選挙戦土壇場での捜査再開宣言だつた。

 トランプ勝利の一因は「隠れトランプ支持者」の投票行動だつたのは確かだらうが、たとへ「隠れトランプ支持者」の存在があつたとしても、FBIの捜査再開宣言がなければトランプの勝利は覚束なかつたはずだ。最終的に選挙の帰趨を決したのはクリントンのスキャンダルだつた。ヒラリー・クリントンは自滅したのだ。

 トランプだからヒラリーに勝つたのではない。

 あれだけ汚辱にまみれたヒラリー・クリントンなら、共和党のまともで無難な(つまり魅力には欠けるがトランプのやうな過激さも破天荒さも持ち合はせてゐない)候補者なら誰でも勝てたと思ふ。自身も嫌はれ者のトランプだから、満身創痍のヒラリー相手にあれだけ苦戦したともいへる。

 共和党の無難な候補者だつたら、トランプのやうな熱狂的支持者は生まなくても、ヒラリーよりはマシといふ反ヒラリー票の受け皿になることはより容易だつただらう。

 テレビでヒスパック系と思しき女性が語つてゐた言葉が印象に残る。「女性が大統領になつてもらひたい。でも、あの人以外ならね」

 口を開けば、マイノリティや女性の権利、同性婚の差別解消、そしてファーストレディ、上院議員、国務長官としての自慢話。つまるところ、ヒラリー・クリントンは政治家としての賞味期限が切れてしまつたのだ、オバマ政権8年の間に。

 ヒラリーとビル・クリントンンの間には、ビルが大統領の座を射止めた後、ヒラリーが大統領を目指す。そのために二人は協力しあふといふ契約が交はされてゐた。

 ワシントンで弁護士として売り出したばかりのヒラリーが周囲の反対を押し切つて田舎のアカンソー州に引つ込んだのも、まずビルがアカンソー州知事から大統領を狙ふといふ二人の計画に沿つた行動だつた。

 ビルがアカンソー州知事から大統領時代に無数の女性スキャンダルを引き起こしても(ビルを罵倒はしたが)、ヒラリーに離婚といふ選択肢はなかつた。夫の女性スキャンダルも、最後は自分が大統領を目指すといふヒラリーの構想をブレさせることはなかつた。

 ビルに協力しつつ、ビルを踏み台にして、ビルに続いて自分も大統領に座につくといふヒラリーの夢はあと一歩のところで潰えた。

 ヒラリーの夢を潰えさせたのはトランプだらうか? いや違ふ。オバマだ。

 オバマが8年前に彗星のやうに現れなかつたら、ヒラリーは民主党指名争ひでスンナリ候補者に選ばれ、本戦も制して大統領に就任してゐただらう。

 第一、ヒラリーがオバマ政権下で国務長官に就任してゐなければ、大統領戦の命取りになつたメール私用スキャンダルも発生してゐなかつただらうから。



 


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プロフィール

tensei211

Author:tensei211
ちば・てんせい。ジャーナリスト、政治評論家。フェミニズム論、天皇論を中心に執筆活動を展開してゐる。

北海道芦別市生まれ。千葉県在住。

フェミニズム論をまとめた著作として、『男と女の戦争―反フェミニズム入門』(展転社)など。フェミニズム関係の共著に『男女平等バカ』(宝島社)、『夫婦別姓大論破』(羊泉社)などがある。

執筆には、正仮名遣ひ(歴史的仮名遣ひ)を用ゐる。

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