民主党から自民党への政権交代は時間の問題だらうが、民主党から自民党への政権交代は皇位継承問題にどのやうな影響を及ぼすかを考へてみたい。
 
 野田政権のもとで皇室典範を改正するといふ宮中・官中サヨクのタイムスケジュールは狂つたけれど、かれらは今、解散総選挙の時期をにらみながら自民党政権に移行した場合の皇室典範改悪作戦策定に余念がないはずだ。

 折から、皇室典範改正準備室の室長、副室長、参事官らの異動人事が発令された。この人事は定例の中央官庁人事の一環として発令されたものだが、人事の中身をよくみると、たんなる順送り人事と言ひ切れないものがある。たとへば、内閣審議官兼皇室典範改正準備室副室長に就任した由木文彦は旧建設省の出身で、風岡宮内庁長官の後輩にあたり、さらにかれは小泉内閣時代、各省庁から課長クラスを選抜した首相直属の「特命チーム」のメンバーでもあつた。小泉内閣が内閣官房を中心に女系天皇容認に向けた検討作業を始めた当時の、官邸における直属の部下だつた人物なのだ。かうした観点から眺めると、民主党政権下における人事とはいひながら、民主党自民党の枠を越えた、宮中・官中サヨクの思惑が作用した人事とみえないこともない。

 ほとんどの日本人が誤解してゐるけれど、小泉純一郎といふ総理大臣は、こと皇室問題に関しては日共レベルの思考(あへて思想とはいはない)の持ち主で、天皇皇室の伝統などはじめから眼中になく、皇室典範改悪に動いた動機は女性女系天皇を誕生させた宰相といふ「名誉」がほしかつたからにすぎない。

 皇室問題にとどまらず、小泉内閣の下で推進された反日政策は数知れない。 

 次の【A】と【B】の文章を読み比べてみるがいい。

【A】

《いま、戦後50周年の節目に当たり、われわれが銘記すべきことは、来し方を訪ねて歴史の教訓に学び、未来を望んで、人類社会の平和と繁栄への道を誤らないことであります。

 わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。また、この歴史がもたらした内外すべての犠牲者に深い哀悼の念を捧げます。》

【B】

《先の大戦では、三百万余の同胞が、祖国を思い、家族を案じつつ戦場に散り、戦禍に倒れ、あるいは、戦後遠い異郷の地に亡くなられています。

また、我が国は、かつて植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。こうした歴史の事実を謙虚に受け止め、改めて痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明するとともに、先の大戦における内外のすべての犠牲者に謹んで哀悼の意を表します。悲惨な戦争の教訓を風化させず、二度と戦火を交えることなく世界の平和と繁栄に貢献していく決意です。》


 植民地支配と侵略、多大の損害と苦痛、痛切な反省、心からのお詫びの気持ち・・・・・これらのおどろおどろしい言葉は【A】と【B】で完璧に同一で、文章もそつくりである。似てゐるはずである。【B】は【A】の完全なコピーなのだから。

【A】は平成七年八月十五日に発表された終戦50年の村山内閣総理大臣談話である。
【B】は平成十七年八月十五日に発表された終戦60年の小泉内閣総理大臣談話である。

 村山富一が日本を侵略国家と断罪してシナ韓国を歓喜させた内閣総理大臣談話を十年を経て、そつくりコピーして世界に向けて発信したのが小泉純一郎なのだ。

 今ネットには「日本を侵略国家と断罪した村山談話を白紙撤回させませう」などといふ書き込みにあふれてゐる。この連中、どうして「日本を侵略国家と断罪した小泉談話を白紙撤回させませう」と叫ばないのだらうか? そもそも小泉談話など読んだことがあるのだらうか? 日本語が理解できないのだらうか?

 村山は小泉が自分の自虐談話をなぞつてくれたおかげで、総理自虐談話の嚆矢としてむしろ誇つているだらうから、談話を白紙撤回するわけもなく、よしんば村山が白紙撤回したとしても(この男も年だからやがてそのチャンスは永遠に失はれるだらうが)、シナ韓国から「小泉も村山と同じ日本侵略国家談話を発表してゐるではないか」といはれればそれまでのこと。つまり村山談話と小泉談話をセットで白紙撤回させなければ何の意味もないのだ。小泉談話の免罪(意図からにせよ無知からにせよ)は侵略国家談話の固定化にしかつながらない。

 さて、小泉総理の自虐談話の作成作業に関与したのが、当時の内閣総務官柴田雅人である。厚生省出身の柴田は小泉が厚生大臣のとき部下としてつかへ、平成十七年十二月に皇室典範改正準備室の発足と同時に室長に任命されてゐる。皇室典範改正準備室は自虐的小泉談話が出された平成十七年に小泉内閣によつて設置された。女系天皇を実現させるために。翌平成十八年の秋篠宮家親王御誕生で典範改悪計画が頓挫したにもかかはらず、皇室典範改正準備室は廃止されることもなく民主党政権下で活発な活動を続けてゐる。

(ついでに言へば、村山談話の作成に重要な役割を果たしたのが当時の官房副長官古川貞二郎で、小泉内閣初期まで官房副長官をつとめた古川は女系天皇擁立に向けて各省庁を糾合し、有識者会議発足後はそのメンバーとして会議を牛耳つたことは周知のことだらう。小泉談話で小泉に知恵をつけたのもあるひは古川かもしれない)

 私がいひたいのは、皇室破壊路線が敷かれたのは自民党内閣時代だつたといふことだ。現在の民主党政権下における皇室典範改悪に向けた動きも、小泉政権時代に敷かれたレールの上を走つてゐるにすぎない。フェミニズム・サヨクにとつて小泉内閣は最高の時だつた。だから新しい自民党総理次第では、皇室破壊路線が民主党時代より加速する可能性だつて十分ある。

 園部一派ら宮中サヨクは、政権が移行した頃を見計らつて、「尊称保持」といふ名の皇室破壊計画を持ち出してくるに違ひない。今の自民党にはこの女性皇族尊称保持の悪魔的な狙ひを見抜ける政治家はたぶんひとりもゐない。尊称保持を「良識的な」皇室典範改正と勘違ひしかねない政治家に満ちてゐる。園部一派はもしかすると自民党への政権移行をひとつのチャンスとみてゐるかもしれない。

スポンサーサイト
コメント
コメントの投稿
トラックバック URL
トラックバック
プロフィール

tensei211

Author:tensei211
ちば・てんせい。ジャーナリスト、政治評論家。フェミニズム論、天皇論を中心に執筆活動を展開してゐる。

北海道芦別市生まれ。千葉県在住。

フェミニズム論をまとめた著作として、『男と女の戦争―反フェミニズム入門』(展転社)など。フェミニズム関係の共著に『男女平等バカ』(宝島社)、『夫婦別姓大論破』(羊泉社)などがある。

執筆には、正仮名遣ひ(歴史的仮名遣ひ)を用ゐる。

最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ