◆天皇と皇后は《対等》ではない―御陵御葬儀改変に思ふ(その三)

 ―天皇の《火葬》を恒久化することは許されない―


 宮内庁は十一月十四日、
 ・「今後のご陵及びご喪儀の在り方についての天皇、皇后両陛下のお気持ち」
 ・「今後の御陵およびご葬儀のあり方」
 といふ二つの文書を発表した。前者は、天皇と皇后の「お気持ち」が詳述された長大な文書である。従つて、後者の「今後の御陵およびご葬儀のあり方」は前者の「お気持ち」に記された天皇と皇后の御意思の体現とみて差し支へないと思ふ。

 ところが、この文書の冒頭に、驚くべき文言を我々は発見する。

 今回の検討は、天皇と皇后の葬儀について、
 《将来にわたって基準となり得るもの》
 とある。

  基準? この「今後の御陵およびご葬儀のあり方」の中心テーマは、説明するまでもなく、《火葬》の採用である。ならば、天皇の《火葬》を将来にわたつての《基準》とする、といふ意味にしか理解できない。
 
 なるほど、《火葬》を採用した場合の「基準」と読めなくもない。しかし、文書の中に火葬方法が詳述されてゐるわけでもなく、さうした意味でないことは本文を読めば明らかになる。

 《火葬導入の考え方》といふ項目が出てくる。
 
《 ○火葬導入の考え方
 (1)皇室において土葬、火葬のどちらも行われてきた歴史があること
 (2)わが国の葬送方法のほとんどが、既に火葬となっていること
 (3)葬送方法について、天皇のご意思を尊重する伝統があること
 (4)火葬の導入によっても、ご身位にふさわしい葬儀が可能であること 
    ―などから、火葬がふさわしいと考えるに至った。》

 《火葬導入の考え方》として、火葬に変更する理由を一方的に並び立てるのみで、天皇の葬送において土葬が主として採用されてきた由来や理由にはまつたく触れるところがない。

 つまり、《火葬導入の考え方》そのものが、将来の《基準》とされると受け取るほかはないのだ。
 
 しかし、《火葬》を将来の《基準》とすることなど、はたして許されることなのだらうか?

 《火葬導入の考え方》の(3)として、《葬送方法について、天皇のご意思を尊重する伝統があること》があげられてゐる。天皇はこの伝統をふまへて、三百五十年間続いてきた土葬を火葬に転換することを決意されたのであらう。

 それなら当然、後代の天皇も土葬か火葬かをお決めになる自由がなければならない。後代の天皇の御意思も尊重されなければならない。しかし、このやうな形で、《火葬》が天皇葬送の《基準》にされれば、後代の天皇は土葬か火葬かを選択する自由が奪はれてしまふ。これは、後代の天皇の御意思に対する侵害以外の何物でもない。

 葬送方法においては、誰も後代の天皇の御意思を拘束することはできない、たとへ今上天皇といへども。



 ********************************


 「今後の御陵およびご葬儀のあり方」の「要旨」は次の通り。

 【1】はじめに

 葬儀の検討は、火葬が望ましいとされる天皇、皇后両陛下のお考えを踏まえて行われた。火葬は皇室の伝統にかなうものであるが、他方で、江戸時代前期からの例である土葬を改めるという面もある。本検討は象徴およびそのご配偶という特別のお立場にある方の葬儀について将来にわたって基準となり得るものであり、慎重な検討が求められた。

 【2】検討に当たっての基本的な考え方

 〇天皇陛下、皇后陛下のそれぞれのご身位にふさわしい陵、葬儀とする。

 〇皇室の伝統と、昭和天皇の「大喪儀(たいそうぎ)」などの先例を基本としつつ、社会や国民意識の変化を踏まえる。

 〇国民生活に影響が及ぶことを極力少なくする。

 【3】検討内容

 〈一〉今後の陵のあり方について

 (1)陵建造の考え方

 〇静安と尊厳が、陵の独立性を維持することにより確保できる。

 〇武蔵陵墓地の将来の利用可能性を高めるよう、適切な規模にする。

 〇風格と高雅な趣を備えた陵とする。

 〇将来、天皇陵および皇后陵で行われる祭祀が、それぞれの陵で厳行できるような形状とする。

 【1】はじめに

 葬儀の検討は、火葬が望ましいとされる天皇、皇后両陛下のお考えを踏まえて行われた。火葬は皇室の伝統にかなうものであるが、他方で、江戸時代前期からの例である土葬を改めるという面もある。本検討は象徴およびそのご配偶という特別のお立場にある方の葬儀について将来にわたって基準となり得るものであり、慎重な検討が求められた。

 【2】検討に当たっての基本的な考え方

 〇天皇陛下、皇后陛下のそれぞれのご身位にふさわしい陵、葬儀とする。

 〇皇室の伝統と、昭和天皇の「大喪儀(たいそうぎ)」などの先例を基本としつつ、社会や国民意識の変化を踏まえる。

 〇国民生活に影響が及ぶことを極力少なくする。

 【3】検討内容

 〈一〉今後の陵のあり方について

 (1)陵建造の考え方

 〇静安と尊厳が、陵の独立性を維持することにより確保できる。

 〇武蔵陵墓地の将来の利用可能性を高めるよう、適切な規模にする。

 〇風格と高雅な趣を備えた陵とする。

 〇将来、天皇陵および皇后陵で行われる祭祀が、それぞれの陵で厳行できるような形状とする。

 〇合葬ではなく、天皇陵と皇后陵が一体的な陵となるよう建造する。

 (2)新たな陵の具体的な内容

 ○建造場所

 大正天皇陵の西側に建造する。

 ○規模

 天皇陵および皇后陵の面積を約3500平方メートルとし、昭和天皇陵と香淳皇后陵の合計面積(4300平方メートル)の8割程度の規模とする。

 ○形状

 両陵は上円下方(じょうえんかほう)の落ち着いたたたずまいとする。

 ○兆域(ちょういき)(特に管理を厳重にすべき敷地部分)

 両陵の兆域は墳丘の配置に合わせ、定める。

 ○両陵の配置

 (1)一つの敷地に作る。

 (2)同一敷地内に寄り添うように配置する。

 (3)陵域全体を一体的に整備する。

 〈二〉今後の葬儀のあり方について

 (1)火葬の導入

 ○火葬導入の考え方

(1)皇室において土葬、火葬のどちらも行われてきた歴史があること

 (2)わが国の葬送方法のほとんどが、既に火葬となっていること

 (3)葬送方法について、天皇のご意思を尊重する伝統があること

 (4)火葬の導入によっても、ご身位にふさわしい葬儀が可能であること

 -などから、火葬がふさわしいと考えるに至った。

 ○火葬施設の確保

 専用の火葬施設は、その都度、武蔵陵墓地内に設置する。

 (2)葬儀全体の組み立て

 ○火葬導入に伴う儀式のあり方

 (1)火葬導入に伴う儀式として、火葬の前に小規模な葬送儀礼が行われる。

 (2)火葬導入に伴い追加、変更となる儀式は皇室祭儀のなさり方に沿う。

 ○「葬場殿の儀」

 葬場については今後

 (1)格式の高い場所であること

 (2)国民生活への影響の少ないものとすること

 (3)暑さ寒さや、集中豪雨や竜巻などにも対応できる安全な場所であること

 (4)樹木の伐採を伴わないなど、環境への配慮が可能な場所であること

 -などの観点を踏まえ、検討を進める。

 ○皇后、皇太后、太皇太后の葬儀

 皇后、皇太后、太皇太后の葬儀については、これまでと同様、「大喪儀」とし、「天皇大喪儀」に準じて執り行われる。

 【4】おわりに

 将来の国民に、この取りまとめに沿った陵および葬儀の姿を通して、平成という時代が、そしてその時代を国民と共に歩まれていらっしゃる両陛下のお心、お姿が正しく伝わっていくことを願っている。



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プロフィール

tensei211

Author:tensei211
ちば・てんせい。ジャーナリスト、政治評論家。フェミニズム論、天皇論を中心に執筆活動を展開してゐる。

北海道芦別市生まれ。千葉県在住。

フェミニズム論をまとめた著作として、『男と女の戦争―反フェミニズム入門』(展転社)など。フェミニズム関係の共著に『男女平等バカ』(宝島社)、『夫婦別姓大論破』(羊泉社)などがある。

執筆には、正仮名遣ひ(歴史的仮名遣ひ)を用ゐる。

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